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17世紀初頭、今日用いられる現代的な冪記法の最初の形は、ルネ・デカルトが著書 La Geometrie の一巻において導入した[5]

アイザック・ニュートンなど一部の数学者は冪指数は 2 乗よりも大きな冪に対してだけ用い、平方は反復積として書き表した。例えば、多項式を ax + bxx + cx3 + d のように書いた。
用語

15世紀にニコラ・ショケ(英語版)は冪記法の一種を用い、それは後の16世紀にハインリヒ・シュライベル(英語版)およびミハエル・スティーフェル(英語版)が用いている。

16世紀にロバート・レコードは、square(二次), cube(三次), zenzizenzic(四次), sursolid(五次), zenzicube(六次), second sursolid(七次), zenzizenzizenzic(八次(英語版))の語を用いた[6]。4 乗については biquadrate(複二次)の語も用いられた。

歴史的には involution が冪の同義語として用いられていた[7]が現在では稀であり、別の意味(対合)で用いられているので混同すべきではない。
冪指数

冪の肩に書かれる数のことを冪指数と呼ぶ[8]が、冪指数を意味する用語として、英語ではしばしば exponent と index が同義語として用いられる。この用語選定は18世紀、19世紀を通じて極めて曖昧で個人の嗜好に委ねられていた[9]。しかし、ガウスは、その著書 Disquisitiones Arithmeticae において通常の冪指数と数論的な指数を峻別する必要性から exponens は通常の冪指数、index は数論的な指数を表すものとして明確に区別し使い分けて解説に使用しており、この使い分けはディリクレ、デデキント、ヒルベルトを通じて数論の世界での標準となった[9]

もとをたどれば、1544年にミハエル・スティーフェルがラテン語: "exponens" を造語し[10][11]、対して1586年にラザルス・シェーナーが数学者ペトルス・ラムスの書籍への補注としてラテン語: "index" を(スティーフェルが exponens と呼んだものと同じものを指す意味で)用いた[12]のがそれぞれの語源と考えられる。exponent と index はこれらの英語翻訳であり、例えば index はサミュエル・ジーク(英語版)が1696年に導入した[2]

exponent と index の微妙な使い分けと併用の時代はここから始まり、その併用のされ方は国と時代だけでなく個人によっても異なった。イギリスは当初 index が優勢であり、これは聖バーソロミューの大虐殺で殉死したラムスの著作がプロテスタント諸国で非常に人気を集めたからだとの指摘がある[13]
日本語「冪」ウィクショナリーに関連の辞書項目があります。冪

『冪』の字義は「覆う、覆うもの」であって、『』と同音同義である。江戸時代和算家は「冪」の略字として「巾」を用いていた[14]

第二次世界大戦後の漢字制限政策のもと、これらの字は常用漢字当用漢字に含まれず、1950年代以降の学習参考書などの出版物では仮名書きで「べき乗」または「累乗」への書き換えが進められ、結果として初等数学の教科書ではもっぱら「累乗」が用いられた。

冪集合」、「冪級数」などの高等学校以下で扱われない多くの概念に対しては、「冪」の部分が置き換えられることはなく、例えば「べき乗集合」や「累乗集合」などといった表現はあまり生じていない。
定義
自然数乗冪

実数(または積 × {\displaystyle \times } の定義された、より一般には半群)において、元 x と自然数 n に対してxn を x n = x × ⋯ × x ⏟ n   個 {\displaystyle x^{n}=\underbrace {x\times \cdots \times x} _{n\ {\text{個}}}}

で定義する(厳密には再帰的に定義する)。上付きの n が書けない場合には、 x^n という表記を用いることが多い。

この操作を「x の n 乗を取る」などといい、特に n を固定して x を入力とする関数(特に実数 x の函数)と見るときは、冪関数という。x の 2乗、3乗は特に、それぞれ x の平方 (へいほう、 : square)、立方 (りっぽう、 : cube) と呼ばれ、2乗を特に自乗という場合もある。

冪 xn において、x を底(てい、: base、 基数)と呼び、n を冪数、冪指数または単に指数(しすう、 : exponent) と呼ぶ[注釈 1]。必ずしも冪指数とは限らない添字 n をその基準となる文字 x の右肩に乗せる添字記法を指数表記・冪記法などとよぶ場合もある。

厳密には、x の n 乗冪は
x1 = x,

xn+1 = xn × x   (n ? 1)

によって再帰的に定義される。
負の整数乗冪

帰納的定義を見れば下のように拡張するのが自然である。

有理数の範囲で2の冪を例に取ると:

24 = 16

23 = 8

22 = 4

21 = 2

20 = 1

2−1 = 1/2

2−2 = 1/4

2−3 = 1/8

2−4 = 1/16

ただし、底が 0 の場合は「0 で割れない」などの理由から定義しないか、または 00 については 1 と定義するのが一般的である。詳細は「0の0乗」を参照
有理数乗冪詳細は「冪根」を参照

自然数 m に対し、x の m 乗根すなわち m 乗して x になるような数 y がただ一つあるならば、その y を x1/m とし、自然数または整数 n に対しxn/m = (x1/m)n

と定めることによって、x を底とする冪乗の指数を有理数の範囲まで拡張することができる。このとき、指数法則と呼ばれる下の関係式が成り立つ。


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