再販売価格維持
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再販制度の主旨

再販制度は占領終了直後の1953年の独禁法改正で導入された。当時、指定再販商品制度の導入を求めて化粧品業界が熱心に働きかけたことがわかっている[5][注 2]

指定再販の趣旨は当時の国会審議によると、商品ブランドのイメージ低下をもたらすおとり廉売や乱売を事前に規制することにあった。しかし、現在は、

おとり廉売や乱売は独禁法により事後規制が可能であること

メーカーが成長してブランドが確立されていること

再販制度の弊害が目立つこと

などの理由から認められておらず、指定再販制度は1997年の指定全廃以来死文化している。

再販制度の趣旨は、制定当時の資料が少なく明確ではない。当時の国会審議は化粧品・医薬品の指定再販の導入が主な論点で著作物にほとんど言及がなく、関係業界が陳情した形跡もない。後に研究者らが推測した。
商行為追認説
戦前から著作物の定価販売が消費者になじみ深かったからとする説。戦前の定価販売はカルテルによって実施されていたので、独禁法の趣旨に反して積極的に法定するほどの理由としては弱い。
弊害希薄説
定価販売下でも出版社は多数存在し新規参入も活発だったから弊害は少ないとする説。近年では取次の寡占が進んで弊害が現れているとされており、説得力を持たない。
文化的配慮説
著作物の多様性を維持し、文化の保護を図るためとする説。
西独模倣説
当時の西ドイツドイツ連邦共和国)の競争制限禁止法の草案では商標品と出版物が再販制度の対象となっていたため、それを模倣したとする説。適用範囲に「出版物」ではなく、より定義の広い「著作物」として音楽ソフトを含めた理由が分からない。
化粧品主導説
化粧品に指定再販を導入するにあたり説得力に欠けるため、著作物も含めてカモフラージュしたとする説。

これらの説のうち、関係業界は文化的配慮説の線で主張する場合が多い。

有力な生産者または販売業者が、小売業者の価格競争を制限し、安定した利潤を確保するために実施する事例が多い。
各論

政府は競争政策上の観点から再販制度の見直しを進めており、知的財産推進計画では非再販商品の流通拡大や主に出版物を対象とした時限再販の積極採用を謳う項目が2004年度から存在する。
書籍・雑誌

書籍や雑誌については、販売業務委託契約と、売れ残りの買取り保証付の販売契約が行われている。書籍で再販制度による委託販売制度といった場合は、売れ残りの買取り保証付の販売契約による販売形態をさす。書店は、売れ残りの買取り条件に組み込まれている再販売価格維持契約により、書籍・雑誌を定価で販売しなければならないが、売れ残りの買取り保証により、一定期間が過ぎても商品が売れ残った場合、商品を出版取次に返品することができる。

書店は、返品が保証されることにより、在庫抱え込みリスクが軽減されることで、需要の多くない専門書等でも店頭に並べることができ、世界でも類をみない小部数で多様な書籍が刊行されている。

小学館・講談社等の出版物については責任販売制とともに、再販制度が適用されていない出版物も一部存在する。その他の出版物については基本的に定価で販売されているが、再販制度の弾力的運用を図るため、

期間を区切って非再販本フェアを開催

雑誌の時限再販

雑誌の定期購読者割引

等を行っている事業者もある。

ポイントカードを採用している書店もある。かつて書店組合では「ポイントカードは実質的な値引きであり再販契約違反だ」として反対していたものの、公取委は値引きであるものの消費者利益に資するとして容認している。

電子書籍では、書店側に在庫が発生しないため、売れ残りの買取り保証を前提とした再販売価格維持ができなくなっている。日本出版者協議会は、紙の出版物との価格バランスと収益確保のために、電子書籍にも再販売価格維持契約の適用を求めているが、公正取引委員会は独占禁止法上の原則から違法としている。そのため、電子書籍では出版社側がつけた価格で販売を行うために、出版社が直接販売を行ったり、販売業務委託契約により販売の主体を出版社または出版取次業者とすることで、書店に販売業務を委託して販売したりする販売形態になっていることが多い。
新聞

新聞は再販制度と合わせ新聞特殊指定により差別定価や定価割引が原則として禁止されていることから、全国一律価格で販売されている。

売店等で販売する場合、原価率8割(販売者の手数料収入は2割)と決められている。ただし取扱いが多い場合販売者に対し販売報奨金を出すことがある。売れ残った場合は返品できる。
音楽ソフト

2006年現在、音楽ソフトでは時限再販(6ヶ月)や部分再販が採用されている。ただ音楽ソフトは売上が一部の商品に集中し、かつ殆どの場合は発売直後に売上が集中する商品特性があるため、時限再販や部分再販の影響はほとんど無いと考えられている。

次世代の音楽メディア規格であるSuper Audio CDDVD-Audioや、インターネットでの音楽配信については、再販制度の適用外である。このためレコード会社は、これら次世代規格への移行に消極的で、コピーコントロールCD音楽CD規格の延命を図っていた。またCDにDVD-Videoをセットにして再販商品として定価で販売していた事があったが、これは公正取引委員会により違法と指摘され、現在は初版限定版などの特殊なものを除き、再販商品としては販売していない。

2006年に日本国政府・知的財産戦略本部のコンテンツ専門調査会は、

日本以外の国家では既に廃止されていること

CDアルバムの価格(1枚3,000円前後)が、欧米諸国の平均価格(1枚1800 - 2200円)に比して、著しく高額である[注 3]こと

2004年に施行された音楽レコードの還流防止措置(いわゆるレコード輸入権制度)との「二重保護」状態に対する批判が強まっていること[注 4]

旧来型のビジネスモデルに固執し、インターネットを通じた音楽配信への進出に、消極的なレコード会社の姿勢を改めさせること

などを背景に、音楽ソフトの再販制度廃止を公正取引委員会に勧告する方針を出した。

音楽業界はこれに反対し、4月に実施されたパブリックコメントで再販制度維持を訴える大量の組織票を投下した。公取委は、新聞特殊指定廃止を優先課題に掲げ「現時点で音楽ソフトだけ再販を廃止することは困難」と消極的な姿勢を取ったことから、6月に決定された知的財産推進計画で「現状を検証し、代替手段の採用を含めた検討を実施する」と、大幅に後退した表現で項目が追加された。
沿革

1919年 - 大手出版取次の主導で雑誌定価販売制が成立する。これ以降雑誌の返品が増える。

1931年 - 返品対策のため、雑誌に時限再販(1年)を導入する。

1947年 - 独禁法が制定され、再販行為が禁止される。

1953年 - 独禁法が改正され、再販制度が導入される。

1978年 - 公取委の橋口収委員長が、再販制度見直しの検討を始めると発言する[注 5]


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