内通者
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2008年、リヒテンシュタインの複数の銀行[注釈 1]欧米の多数の資産家の脱税資金が存在することが報じられた[12]。事件の端緒を開いたのは、LGTのIT部門に勤めていたハインリヒ・キーバー(ドイツ語版)[注釈 2]なるインフォーマントであり、彼が口座の電磁記録をドイツ連邦情報局(BND)に渡したことから事件が発覚。この情報に基づいて同年2月14日、当時のドイツ郵便CEOクラウス・ツムヴィンケルが100万ユーロもの脱税の疑いで逮捕[13]。さらにキーバー及びBNDから情報提供を受けたアメリカ合衆国[14]、イギリス、オーストラリア、カナダ、フランスの税財務当局が該当する資産家の取り調べを行った[15][16]。その他アイルランド、フィンランド、イタリア、オランダ、ノルウェー、ギリシャ、スウェーデン、チェコ、スペインの財務当局も関心を示した。デンマーク政府はこのデータが窃盗によるものであるため(日本の司法原則では排除法則に該当する違法な証拠であるといえる)当初は情報の受諾を固辞したがその後態度を翻した[15][16]。インド政府のみ、インド人資産家の口座が確認されているにもかかわらずドイツ政府の情報提供の申し出を拒絶している[17]。キーバーはドイツ政府より情報提供の見返りとして460万ユーロを受け取っている。だがその金の一部には定率10%で税金が課せられた[18]。事の詳細は記事"2008年のリヒテンシュタインにおける脱税スキャンダル(英語版、ドイツ語版)"を参照。
労働運動・社会運動

昔から現在に至るまで、企業や場合によってはその企業の代わりに興信所労働組合労働運動を監視またはコントロールするために労働スパイ(英語版)[注釈 3]と呼ばれる内通者を雇うことが多かった[19]。これらおのおのの情報提供者は本職の者か、または、従業員の中から選抜することもある。嬉々として共犯者となる者もいれば、騙されて同僚の労働組合組織化の内情を自白するものもいる[20]。企業上層部は雇った情報提供者を政治的及び社会主義的傾向を持つ運動内部に頻繁に潜り込ませ、組織の弱体化、不安定化そして完全な破壊を目論む[21]
政治

ローマ帝国の著述家でコンスタンティヌス大帝の補佐を務めたラクタンティウスは、古代ローマにおける一つの事例を出して述べている。その例とは、マクシミヌス・ダイアとガレリア・ウァレリア(英語版)(ディオクレティアヌスの娘でガレリウスの妻、共同皇帝)の婚約を破棄するよう口添えしたと(ダイアが)疑う女を訴追する逸話である。[...] Neither indeed was there any accuser, until a certain Jew, one charged with other offences, was induced, through hope of pardon, to give false evidence against the innocent. The equitable and vigilant magistrate conducted him out of the city under a guard, lest the populace should have stoned him. [...] The Jew was ordered to the torture till he should speak as he had been instructed, [...] The innocent were condemned to die. [...] Nor was the promise of pardon made good to the feigned adulterer, for he was fixed to a gibbet, and then he disclosed the whole secret contrivance; and with his last breath he protested to all the beholders that the women died innocent.[22][23]

試訳:

(法廷が開かれたのち、)別の罪に問われていたあるユダヤ人が自らの赦しを乞うが故に、この無実の女達とって不利な偽の証言をするよう唆されるまで、告発者など正に誰もいなかったのである。公正かつ抜かりない判事は民衆が彼に石を投げつけないよう護衛を付けて都市の外へ連行する命令を下した。(中略)このユダヤ人を、差し詰め自身が指図を受けたかを自ら話すまで、拷問に掛けるよう命じた、(中略)この無辜の女達に死刑が宣告された。(中略、女の処刑後)そしてまた、恩赦の約束は、偽りの姦夫には守られることもなかった。というのも、彼は絞首台に括り付けられた後、秘密の企みを洗いざらい暴露し、彼が命絶えるその時、全ての群集に向かって、女達は罪を着せられ死んだのだと抗議したからであった[22][23]

犯罪における密告の企ては、しばしば政治的な動機を持った知能攻撃の隠れ蓑として利用されている[24]
刑事施設内の情報提供者詳細は「司法取引」を参照

刑事訴訟上の被告人は「事実審前勾留」("pretrial detention", 未決勾留)下にある間、往々にして自己の刑の軽減やその他の利益誘導と引き換えに、自身が耳にしたと主張する「伝聞」("hearsay")すなわち「(仮にそうすることで)自身にとって不利益になる供述や自白(英語版)」("Statements or admissions(英語版) against (penal) interest)[25]を法廷に上申する場合があり、このような「監獄内の情報提供者」(Jailhouse informants)がある種の公判において大きな焦点となっている[26]。監獄内の情報提供者を利用した事件例としては、スタンリー・ウィリアムズ、キャメロン・トッド・ウィリンガム(英語版)、ジェラルド・スタノ(英語版)、トーマス・シルヴァースタイン(英語版)、マーシャル・「エディ」・コンウェイ(英語版)各容疑者の事件及び「イータン・パッツ(英語版)失踪事件」(「イータン・パッツ誘拐事件」)の被疑者と関係する事件が挙げられる。
専門用語とスラング

情報提供者、インフォーマント(もしくはエージェント、スパイ)を意味するスラングの例として以下が挙げられる。

cheese eater[27] — 「チーズ食み」、ネズミのこと。

fink — ピンカートンが雇う私服捜査員(plain-clothes detective, 密偵)やスト破り(ストライキブレーカー)、レイバー・スパイを指す用語である[28]。回し者、フィンク。

grass[29]またはsupergrass(スーパーグラス)(英語版)[30]バッタ(grasshopper)の韻を踏んだ俗語(英語版)[注釈 4]。意味としては警察官、刑事の俗語である「デカ」(copper. cop, 「コップ」)または「密告者」(shopper)を指す[31]。付け加えると、フレッド・フィッシャー(英語版)・ドーリス・フィッシャー(英語版)親子の人気曲「ウィスパーリング・グラス(英語版)」や演劇「スネーク・イン・ザ・グラス(英語版)」の題名とも関連がある[32]

narc — 麻薬取締局員やそのスペシャリストを指す[33]

nark — これはロマ語で「」を意味するnakもしくはフランス語で狡猾、ペテン、犯罪のいずれかまたは三つ同時に満たす人物を表す形容詞narquois(ナルクァ)に由来するとされる[34][35]

nose[31]

plant — 「罠」。

pursuivant — パーシヴァント(古語)[36]

rat[27][37] — 密告行為(informing)は俗に"ratting"と呼ばれる。

snitch[38]

snout[39]

spotter[40]

squealer[38]

stool pigeon — スツール・ピジョン。「止まり木の鳩」という意味でデコイのこと[41]。同義語にstoolie。


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