共有結合
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これら6つの電子は3つの非局在化π分子軌道を占有(分子軌道理論)、または線型結合した2つの共鳴構造における共役π結合を形成(原子価結合理論)し、仮想的な1,3,5-シクロヘキサトリエンよりも高い安定性を示す正六角形を作る。

複素環式芳香族ならびに置換ベンゼンの場合は、環の異なる部位間での電気陰性度の差が芳香環結合の化学的挙動を支配する。
超原子価詳細は「超原子価」を参照

四フッ化キセノン六フッ化硫黄といった特定の分子は、オクテット則に従う厳密な共有結合によって可能な数よりも高い配位数を有する。これは分子軌道理論における三中心四電子結合(3c-4e)モデルならびに原子価結合理論におけるイオン性-共有結合性共鳴によって説明される。
電子不足詳細は「電子不足」を参照

三中心四電子結合(3c-4e)では、3つの原子が2つの電子を結合で共有する。この種の結合はジボランといった電子不足化合物で起こる。こういった結合のそれぞれは、ホウ素原子を互いに結び付ける電子対を含む。この結合はプロトン(水素原子核)が結合の中央に位置し、両側のホウ素原子と電子を共有したバナナ型をしている。特定のクラスター化合物では、いわゆる四中心二電子結合も仮定されている。
量子力学的描写

量子力学の発展後、化学結合の量子力学的描写を与える2つの基本理論、原子価結合 (VB) 理論と分子軌道 (MO) 理論が提唱された。より最近の量子力学的描写[12]は、電子密度の状態への原子の寄与の観点で与えられる(密度汎関数理論)。
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詳細は「原子価結合法」を参照

1927年、原子価結合理論が定式化された。原子価結合理論は、それぞれの原子軌道中の2つの価電子が2つの核を結び付けるように機能し、系のエネルギーを低下させる時に共有結合が形成される、と主張する。この理論を基に、化学者ライナス・ポーリングは1931年に化学の歴史上最も重要な論文の一つであると見なされている『On the Nature of the Chemical Bond』を発表した。ルイスの研究、ハイトラーとロンドンの原子価結合理論、自身の以前の研究を詳述したこの論文において、ポーリングは共有電子結合について6つの規則を提示した。そのうち最初の3つは既に一般的に知られていたものである。

1. 電子対結合は、2つ原子のそれぞれの上の不対電子の相互作用によって形成される。

2. 電子のスピンは逆向きでなければならない。

3. 対を作ると、2つの電子はさらなる結合に関与できない。

ポーリングの後半の3つの規則は新しいものであった。

4. 結合についての電子交換項はそれぞれの原子からの1つの波動関数のみを含む。

5. 最も低いエネルギー準位にある利用可能な電子が最も強い結合を形成する。

6. 原子中の2つの軌道のうち、もう一つの原子からの軌道と最も重なることができる軌道が最も強い結合を形成し、この結合は集中した軌道の方向へ広がる傾向にある。

この論文に基づいた、ポーリングの1939年の教科書『On the Nature of the Chemical Bond』は現代化学の「バイブル」とも呼ばれるものとなった。この本は実験化学者が化学への量子論の影響を理解するための助けとなった。しかしながら、1959年の改訂版は分子軌道理論によってより良く理解できるように見える問題に適切に対処することに失敗した。分子軌道理論が大型デジタルコンピュータプログラムに実装され有用性を増した1960年代、1970年代に原子価結合理論の影響力は低下した。1980年代以降、原子価結合理論をコンピュータプログラムへと実装するより困難な問題が大部分解決され、原子価結合理論が復活を果たした。
分子軌道理論詳細は「分子軌道法」を参照

分子軌道フリードリッヒ・フント[13][14]ロバート・S・マリケン[15][16]によって1927年および1928年に初めて発表された[17][18]。分子軌道に対する原子軌道の線形結合(LCAO)近似は1929年にジョン・レナード=ジョーンズによって発表された[19]。原子軌道の線形結合(LCAO)は分子の構成原子間の結合の上に形成される分子軌道を推定するために使うことができる。原子軌道と同様に、電子の挙動を記述するシュレーディンガー方程式は分子軌道についても構築することができる。原子軌道の線形結合、あるいは原子波動関数の和および差は、分子のシュレーディンガー方程式の独立粒子近似に対応するハートリー=フォック方程式への近似解を与える。

原子軌道が相互作用する時、得られる分子軌道は、結合性、反結合性非結合性の3種類のどれかである。
結合性MO


原子軌道間の結合性相互作用は構成的(同相)な相互作用である。

結合性MOはそれらを生成するために混合される原子軌道よりもエネルギー的に低い。

反結合性MO


原子軌道間の反結合性相互作用は破壊的(異相)な相互作用であり、2つの相互作用している原子間に反結合性軌道の波動関数がゼロになる節面を持つ。

反結合性MOはそれらを生成するために混合される原子軌道よりもエネルギー的に高い。

非結合性MO


非結合性MOは適合対称性の欠如のために原子軌道間の相互作用が起こらないことの結果である。

非結合性MOは分子内の原子の1つの原子軌道と同じエネルギーを持つ。

比較

2つの理論は、分子の電子配置を作り上げる順序が異なっている[20]。原子価結合理論では、原子の混成軌道が最初に埋められ、結合性電子対と孤立電子対の完全原子価配置が作られる。もしいくつかのそういった配置が存在するならば、これらの配置の重み付けされた重ね合わせが次に適用される。対照的に、分子軌道理論では、原子軌道の重み付けされた重ね合わせが最初に実行され、次に得られた分子軌道を増成原理によって電子で埋めていく。

どちらの理論も利点と用途を持つ。原子価結合理論は局在化した結合の分子波動関数を構築するため、結合エネルギーの計算と反応機構の理解のためにより適している。特に、原子価結合理論は等核二原子分子の個別の原子への解離を正しく予測するのに対して、単純な分子軌道理論は原子とイオンの混合状態への解離を予測する。分子の対称性に従う非局在化軌道を持つ分子軌道理論は、イオン化エネルギーの計算やスペクトルの吸収バンドの理解により適している。分子軌道は直交しているため、直交していない原子価結合軌道と比較してコンピュータによる計算の実現可能性と速度を大いに高める。

両方の理論によって生成された波動関数は一致せず、また実験による安定化エネルギーとはどちらも一致しないが、配置間相互作用によって補正することができる[20]。これは、原子価結合共有結合性関数と全ての可能なイオン性配置を記述する関数とを混合することによって、あるいは分子軌道基底状態関数と非占有軌道を使った全ての可能な励起状態を記述する関数とを混合することによって行われる。単純な分子軌道手法はイオン性構造に重きを置き過ぎているのに対して、単純な原子価結合手法は軽んじ過ぎている。これは、分子軌道法が電子相関を無視しているのに対して、原子価結合法は過大評価していると説明することもできる[20]

現在これら2つの手法は相補的であると見なされており、それぞれが化学結合の問題を理解する上での独自の手掛かりとなっている。量子化学における現代の計算は大抵は原子価結合の手法ではなく分子軌道の手法から始まる(しかし最終的には分子軌道法から大きくそれる)。これは後者の手法がそれ自体優れているためではなく、単に分子軌道法の方が数値計算に適用しやすいためである。しかしながら、現在ではより良い原子価結合プログラムも利用できるようになっている。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 等極結合(とうきょくけつごう、(: homopolar bond)ともいう。


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