第二次世界大戦後のアジア・アフリカ諸国の独立においては、植民地時代に保護国や間接統治として君主制が残っていた国家や一部の英連邦王国を除き、ほとんどの国が共和政国家として独立を果たした。君主制の残存していた国家でも、エジプト王国やイラク王国、イエメン王国、リビア王国、そしてイラン帝国のように革命の勃発によって君主制が廃止されることは多い[41]のに引き換え、新たに君主制を導入する国がほとんどないため、20世紀中盤以降は君主制国家より共和政国家のほうが国家数が多くなっている。君主制国家において大きな政体変動が少なくなった21世紀に入って以降もこの流れはわずかながら続いており、2008年にはネパールが君主制を廃止して共和政国家となった[42]。またイギリス連邦内君主国でも、2021年11月29日にはバルバドスが共和制へと移行した[43]。
現時点で君主制を維持している国家においても、いくつかの国家では共和制を求める運動が起こっている。イギリス連邦内君主国においてはたびたび共和制移行の動きが出ており、なかでもオーストラリアでは特に君主制廃止の動きが強く、1999年には共和制移行を求めた1999年オーストラリア国民投票が行われたものの、反対票が55%にのぼったため否決された[44]。またジャマイカ、グレナダ、ベリーズなどでも共和制移行の動きがあるとされている[45]。2022年9月のエリザベス2世の死去に伴って共和制を求める意見はさらに強まり[46]、アンティグア・バーブーダでは君主制廃止のための国民投票が検討され[47]、バハマでも同様の動きがあるほか、オーストラリアの共和制論議も再燃しており[48]、ニュージーランドでもジャシンダ・アーダーン首相が将来の共和制導入に肯定的な反応を示している[49]。「君主制廃止」も参照 共和政国家の体制は、完全な権威主義体制と名目的にでも民主主義体制を取るものとに二分される。共和制独裁政治の体制は、文民が支配する文民独裁と軍部が支配権を握る軍事政権の2つに分かれ、文民独裁はさらに、独裁者個人が大きな権限を握る個人支配体制と、ひとつの支配政党が全権を握る一党独裁制に区分される[50]。 民主共和制国家の体制は、執政府の長官と議会との関係によって、大統領制・半大統領制・議院内閣制の3つに区分される。大統領制は有権者が直接執行府の長官である大統領を選出し、議会が大統領を罷免することは特殊な場合を除きできない。これに対し議院内閣制では、執行府の長官たる首相は民主的に選出された議会から選出され、同様に議会が首相を罷免することも可能である。半大統領制の場合、大統領は有権者から直接選出され、首相は議会から選出される。半大統領制では議会が大統領を罷免することはできないが、大統領が首相を罷免することは可能な国家と不可能な国家の2種類が存在する[51]。 大統領は常に権限を持っているわけではなく、ドイツのように大統領の権限が儀礼的なものにとどまる国家も存在する[52]。また執政府の長官の名称が大統領であっても国民から直接選出されるとは限らず、南アフリカのように議会から選出される議院内閣制の大統領も存在する[53]。 近代以降の共和制の分類には建国の理念などにより以下があるが、自称である国号とは異なる場合も多く、その定義や範囲は曖昧である。 国家が標榜する思想や宗教による共和国の分類では、社会主義国は社会主義を標榜する共和国であり、多くの国は「社会主義共和国」や「人民共和国」を名乗り、プロレタリア独裁の立場から共産党による指導を定めた。 また1977年から2011年までのリビアは「大衆による共和国」を意味するジャマーヒリーヤを名乗り、イラン革命以後のイランは宗教指導者による指導を重視しイスラム共和国を名乗っている。 共和制の中に、特に民主主義を国の基本的な原則として重視する制度は民主共和制と言い、この制度を採用する国は民主共和国と言う。(ドイツ民主共和国など例外あり) 共和制は君主が存在しない政体だが、君主の定義や範囲は曖昧で時代や地域によっても異なる。このため公式には共和制でも世襲による君主的存在を元首とする場合や、逆に公式には君主制でも君主が儀礼的な権限しか持たない場合もあり、その境界や用語は曖昧である。共和制と君主の関係や用語が議論となる主な例には以下がある。
ヨーロッパ諸国の政体変遷
1815年のヨーロッパ諸国の政体[注釈 2]
.mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{} 君主国 (55) 共和国 (9)1914年のヨーロッパ諸国の政体[注釈 3]
君主国 (22) 共和国 (4)1930年のヨーロッパ諸国の政体[注釈 4]
君主国 (20) 共和国 (15)1950年のヨーロッパ諸国の政体[注釈 5]
君主国 (13) 共和国 (21)2015年のヨーロッパ諸国の政体[注釈 6]
君主国 (12) 共和国 (35)
体制共和制国家は以下の色に分類されている。 大統領が議会から分離された大きな権限を持つ(大統領制) 大統領と議会が権限を持つ(半大統領制) 大統領が議会に依存した権限を持つ(議院内閣制) 儀礼的な大統領を持つ、または大統領を持たない(議院内閣制など) 憲法に規定された一党制(社会主義国など) 政府の憲法規定が停止されている国 (例:軍事政権) 上記のシステムのいずれにも適合しない国 (例: 暫定政府) 赤・薄紫・紫は君主制国家
種類
(一般的な共和制) - 自由主義、民主主義などを標榜する共和制。18世紀、アメリカ独立革命やフランス革命などにより誕生。後述の社会主義共和国等と対比させて自由主義(ブルジョワ、資本主義)国などと呼ばれる場合もある。
社会主義共和制 - 社会主義を標榜する共和制。通常は憲法等の基本法により一党制(党の指導性)を明記した共和国。1917年にロシア革命により帝政打倒したロシア・ソビエト連邦社会主義共和国が誕生した。
イスラム共和制 - イスラム国家における共和制。1979年にイラン革命により王政打倒したイラン・イスラム共和国などで採用された。
連邦共和制 - 連邦を主体とした共和制。
議論
君主との関係「君主」および「君主国」も参照
帝政ローマのローマ皇帝は、政体は共和制で皇帝はプリンキパトゥス(元首)であった。