運賃プール精算制は、1983年に西日本鉄道・阪急バスの共同運行により運行を開始した夜行高速バス「ムーンライト号」で採用されたのが最初とされている。多くの事業者が関わるものでは、1984年(昭和59年)運行開始の中央高速バス伊那・飯田線の6社プール精算などが挙げられる。
また、類似内容の高速バス路線の運行について、共倒れを防ぐため異なる路線の間でもこの方法が採られるケースもあり、運行開始当初の「ルブラン号」「ルミナス号」「マスカット号」(いずれも東京 - 岡山・倉敷間を結ぶ路線)では、3路線6社でのプール精算となっていた。
なお、異なる会社の共同運行ではないが、JRバス関東では、複数の支店が運行に関わる場合に、支店間で同様の方法による精算を行っている。JRバス関東では支店ごとの独立採算制を重視しており、それぞれの支店が担当する高速バスの収入は、担当支店の収入となるからである。
例えば「かしま号」の場合、まず運行会社のJRバス関東・関東鉄道・京成バスで配分された後、JRバス関東の収入については東京支店・東関東支店・土浦支店で運行便数に応じて再配分される。
運賃プール精算制の場合は、路線ごとの収入を明確にするため、回数券などは当該路線専用の共通回数券が用意されることが多い。
車両に関しても、共同運行路線を担当する車両は、極力その日一日は当該共同運行路線専用で使用する例が多く、間合い運用等で共同運行路線の担当車両が一般路線の運行に入る場合、管轄する営業所等において運賃箱をそれぞれ一般路線と共同運行とで分け、運賃精算に支障が無いよう便宜を図る場合がある。 運賃プール精算制は、「事業者間で運賃・運行回数等について制限することになり、原則として独占禁止法上問題になる[2]」というのが公正取引委員会の見解であるが、「事業者が単独で参入しにくい場合において、新規路線を開設するために行われる共同経営に関する協定[2]」「新規路線を開設するために行われる共同経営に関する協定を既に行っている事業者が、単独では当該協定に係る路線を維持することが困難な場合に行われている当該協定[2]」については、路線分割・市場分割を行う協定を除き、原則として独占禁止法上問題とはならない[2]とされている。 高速バスの場合、予約定員制か座席指定制となることから、極力座席配置などの仕様は統一するケースが多く、特に夜行高速バスではその傾向が強い。 「ムーンライト号」では車両のカラーリングも含めて全く同一の車両を使用していた他、「ノクターン号」では各社ともに1号車用と2号車用のカラーリングが用意されたり、運行開始当初の「らくちん号」のように、4社が車種まで揃えたケースが挙げられる。しかし、高速バスブームなどで共同運行の組み合わせが増えるに従い、それぞれの標準的な仕様が異なってくるケースも増加した。基本的には座席定員のみ合わせているケースが多く、1 - 2席程度の違いであれば、予備席として吸収させてしまうケースもある。 近年はコスト削減の観点から、同一事業者の車両については仕様統一される傾向にあるが、共同運行の事業者によって車種や車両仕様、車内設備が大きく変わってしまうこともある。京阪京都交通と京都京阪バスの「立命館大学 (BKC) 線」では前者は高速仕様車で、後者はワンロマ車で運行するため、車両のドア数と車内設備が大きく異なる実例もある。
運賃プール精算制と独占禁止法の関係
高速バスにおける共同運行
共同運行路線の例
相互乗り入れ
高速バス
高速バス関連
中央高速バス - 伊那・飯田線6社、諏訪岡谷線5社と、事業者数の多い共同運行路線が複数存在する。
ジェイアールバス関東 - 高速バスを多数運行していることから、共同運行事業者は41社に及ぶ。
ムーンライト号 (高速バス) - 日本で初めて運賃プール精算制を導入した路線。
サンライト号 - 路線開設当初は共同運行事業者が7社に及んだ。
ツィンクル号(西東京バス・近鉄バス)- 共同運行ではあるが、運賃計算は着札精算制を導入。これにより車両仕様を各社で変えることが可能となり、近鉄は2階建てバスの三菱ふそう・エアロキングを導入していた[3]。
ひた号(西日本鉄道・日田バス)- 西鉄運行便も日田バスに運行委託されているが、収入は区別されている。
路線バス
北海道内路線
札幌市厚別区・札幌市清田区・北広島市における、北海道中央バス・ジェイ・アール北海道バスの一部路線共通定期券の発行(一部路線のみ)、停留所の統一、ダイヤの調整が行われている。ジェイ・アール北海道バスのみ札幌駅直通系統が存在するなど、各社ごとに変則的な系統を設けている路線もある。時刻表を一本化し系統番号も統一されている路線(新111・循環 新111など)と、時刻表が各社ごとに書かれ(ダイヤの調整はされている)系統番号も統一されていない路線(白28・新15など)がある。