共同謀議
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「立法ガイド」[16]パラグラフ51及び52が条約第5条第1項(a)について説明している内容は次のとおりと解すべきである(「立法ガイド」の外務省仮訳を誤訳であるとする立場)[38]

旧来の「共謀罪(conspiracy)」や「参加罪(criminal association)」の法的概念(legal concept)のない国であっても、それらの法的概念をそのまま導入することまでは要求していない(パラグラフ51)。

少なくとも次のいずれかについて犯罪化を導入しさえすればよい(パラグラフ52)。

「経済的その他物質的利益を得ることを目的として他の1名以上の者と重大な犯罪を犯すことを合意する行為(Agreeing with one or more persons to commit a serious crime for a finantial or other material benefit)」〔条約第5条第1項(a)(i)〕

「組織的犯罪集団の犯罪活動(Criminal activities of the organized criminal group)等に加わる行為(takes an active part in)」〔条約第5条第1項(a)(ii)〕



賛成派の意見


外務省は、仮訳が正しく、これは共謀罪と参加罪の片方のみ不要とする内容であるとする。

そもそも、条約にどう規定されているかがまず重要であるが、条約上、共謀罪と参加罪の双方又は一方を犯罪とする義務があることに疑いはない。立法ガイドがこれを覆すわけがなく、立法ガイドも、少なくともどちらかを選択する義務があることを当然の前提とし、片方を選択すればもう片方は選択しなくてもよいという意味で書かれたものである。このことは、立法ガイドを作成した国連の「UNODC」からも確認されている(外務省のホームページより:念のため、「立法ガイド」を作成した国連薬物犯罪事務所(UNODC)に対してご指摘のパラグラフの趣旨につき確認したところ、UNODCから、同パラグラフは共謀罪及び参加罪の双方とも必要でないことを意味するものではないとの回答を得ている)[39]

2017年の第193回国会で提出された改正案に関する見解
国連人権理事会特別報告者

国連特別報告者は、国連人権理事会により任命された個人の独立専門家で、特定の国における人権状況やテーマ別の人権状況について調査、監視、公表を行う。

ケナタッチ国連特別報告者は2017年5月18日付けで日本政府宛に書簡を送付し、その中で次のように述べている[40][41][42][43]

人権理事会の決議28/16に基づき[注釈 2]、自身の権限の範囲において書簡を送付した。

報道によれば「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」「人権に有害な影響を及ぼす危険性がある」等の懸念が示されている。

特にプライバシー関連の保護と救済に関する5点の懸念事項がある。

提案されている法改正及びその潜在的な日本におけるプライバシーの権利への影響に関する情報の正確性について早まった判断をするつもりはないが、自由権規約が保障するプライバシーの権利に関して国家が負う義務について指摘したい。

人権理事会から与えられた権限のもと、これらの主張の正確性に関する追加情報・見解の提示及び法案の審議状況等に関する情報提供を要請する。

法案の立法過程が相当進んでおり即時の公衆の注意が必要であるため、書簡は一般に公開され、プレス発表を準備している。

これに対し日本政府は、「特別報告者は国連の立場を反映するものではない。(日本)政府が直接説明する機会はなく、公開書簡の形で一方的に発出された。内容は明らかに不適切だ」「国連で採択された(国際組織犯罪防止)条約締結のために必要な国内法整備だ」と述べ、国連に抗議した[46][47]

ケナタッチ氏は日本の報道機関の取材に対し、日本政府から受け取った約一ページ余りの反論文書について、中身のあるものではなく本質的な反論になっておらず、「プライバシーや他の欠陥など、私が多々挙げた懸念に一つも言及がなかった」としたうえで、プライバシーが侵害される恐れに配慮した措置を整える必要性があるとあらためて主張し、送付した書簡や日本政府からの回答を含め、すべて人権理事会に報告すると発言した[48][49]

この反論に官房長官は「国連事務所を通していない。報道機関を通じての発表で、手続きは極めて不公正だ」「何か背景があって出されたのではないかと思わざるを得ない」と批判した[50][51]

外務省によれば、国連特別報告者について国連のアントニオ・グテーレス国際連合事務総長は、会談した安倍首相に対し、「国連とは別の個人の資格で活動しており[52]、その主張は必ずしも国連の総意[53]を反映するものではない」との見解を示したとしている[54][55][56]。一方、国連のプレスリリースでは国連特別報告者について、「事務総長は安倍首相に、特別報告者は人権理事会に直接報告を行う独立した専門家であると述べた」とのみ伝え[57]、これに関連して国連の報道官は「特別報告者の意見は個人の意見だ。しかし、彼らは国連人権理事会の組織の一部でもある」とコメントしている[58]。これらの発表について食い違っているとの指摘が上がったが[59][60]、菅官房長官は「事実については日本側の発表した通りです」と述べ、外務省の担当者も取材に対し、プレスリリースの内容が同一であることの方が少ない、外交上のやりとりであり要所をまとめている、双方の案文を見せ合う事もなく一致させる性質のものでもないと語った[60]

日本政府は「書簡は国際連合の見解ではなく、また我が国政府から説明を受けることなく作成され、内容には誤解に基づくと考えられる点も多い」とする答弁書を閣議決定した[61]。安倍首相は「一方的なものではあるが、国際社会において正確に説明するために公開書簡の照会事項は追ってしっかりと説明する」と国会答弁の中で述べた[62]

ケナタッチ氏は2017年6月9日、日本弁護士連合会のシンポジウムにスカイプを通じて参加し、日本政府による、日本だけを対象にした懸念との批判について、「プライバシー権に関する国連特別報告者の役職は2015年7月にでき、私が初めての担当だった。今後、フランスや英国、ドイツ、米国に対しても、日本同様に観察していく」と述べた。また「政府が直接説明する機会を得られることもなく、公開書簡の形で一方的に発出された」との抗議については、「通常は政府に非公開の書簡を送って回答を待つなどのプロセスを経るが、今回の改正案については、既に国会で議論が始まった当時から(法案成立までの)タイムテーブルが明確に決まっており、通常のプロセスを経るには時間がないと判断した」と述べた[63][64][65]


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