共同謀議
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公明党は対象となる犯罪の遂行を2人以上で具体的・現実的に計画することが必要で「居酒屋で上司を殴ってやろうと言っただけで犯罪になる」などの批判は的外れであり、「組織的犯罪集団」「計画」「準備行為」の3つを構成要件としており、重大犯罪を実行するための団体による計画の合意と計画した犯罪の準備行為の実施を構成要件にしたと主張している[32]

その他の意見


公共政策調査会研究センター長の板橋功はテロ組織はアルカイダの麻薬売買や「イスラム国」(IS)の石油密売などで得た利益を資金源にしてテロ活動や犯罪を行っていることから、パレルモ条約の加盟に必要な共謀罪や参加罪を新設することには賛成だと述べている。警察・司法の制度や共謀罪の構成要件がそれと全く違っていることから「治安維持法の再来」という批判は不適当と述べている一方、「乱用」の危険性があるというならば成立させるために更なる歯止めをかけても良いと述べている[33]

重大な犯罪の定義

国際組織犯罪防止条約および法案における重大な犯罪の定義の既存の刑法をはじめとする刑罰制度との整合性についても、他の論点と関連した論点となっている。

国際組織犯罪防止条約の審議過程において、重大犯罪の定義は最も難航した項目の一つである。当初は各国でそれぞれの刑罰制度にあわせてその内容を定義できることとなっていた上、日本政府は長期4年以上の自由刑を重大犯罪の定義とすることに強く反対していた。これは、日本の刑罰法規では法定刑が幅広く、微罪も重大犯罪も同一の犯罪とした上で判例で量刑の相場が決まっていく、という状況があるためである。
反対派の意見


重大犯罪の定義については独自の定義を行った上で条約については留保や解釈宣言をするべきであるとする(条約の留保の可能性については次の論点に譲る)。重大犯罪の定義としては、民主党修正案にあるように法定刑の長期の部分を引き上げるほか、1999年組織犯罪処罰法別表を修正せずそのまま適用する、という案が存在する。論理的には、共謀罪を修正することなく、共謀罪の対象犯罪について個別に検討して長期4年未満と長期4年以上の2つの犯罪に構成要件などから分割していくという形で適用範囲を重大な犯罪に限定する方法もありうることになるが、現時点ではそのような検討の存在は知られていない。

賛成派の意見


共謀の対象となる犯罪はあくまで重大な犯罪に限定されていると主張する。共謀罪は、組織的な殺人等(本法3条)やその予備(本法6条)の処罰を加重する要件と同じ組織性の要件を採用しており、この要件は、暴力団等の組織的な犯罪集団の構成員にのみ適用されている。「共謀」とは、特定の犯罪を実行しようという具体的かつ現実的な合意をすることをいい、居酒屋で個人的に意気投合した程度では特定の犯罪が実行される危険性のある合意に当たらず共謀とはいえない。したがって、一般の国民の日常生活上の行為が共謀罪の要件に該当することは考えられないという。

条約の留保

民主党修正案に固有の論点として、国際組織犯罪防止条約の留保は可能か、というものがある。国際組織犯罪防止条約それ自体は、ごく一部に留保を禁じている条項があるが、そのほかはウィーン条約法条約に基づいた留保が可能である。
反対派の意見


条約の留保は国会の承認後も政府による批准書の寄託までは可能であるとする。また、重大犯罪の定義として条約とは別の定義をしても、「長期四年以上」を「長期五年を越え」に変更する程度は、そもそも重大犯罪の定義は国連加盟国の間でも審議過程で対立があった部分だから、条約の趣旨・目的に反するものではない、とする。また、団体の要件として越境性を加える修正についても、条約と一体である「公的記録のための解釈的注」が、問題の条文は越境性を国内法化において要求しないという意味であって、条約の適用範囲を変更するものではないとしていることから、必要となる留保は条約の趣旨・目的に反するものではない、ないし国内法において越境性を要求しても条約の留保は必要ない、とする。

なお、越境性を要件とする修正については、国際NGOやその他の国際キャンペーン、そこまででなくても越境的連帯に基づいた国際的な交流をもつ多くのNGO・各種共同行動参加組織・サイバーグループ等にとっては救済となっておらず、むしろ妥協的なものであるとして廃案を求める立場からの批判も存在する。

また、アメリカ合衆国も一部の州で州に関する越境性のない共謀を条約の条件で犯罪としていないことから批准にあたって留保していることが新たに判明している。アメリカのような主要国でさえ留保している条約を留保できないはずがない。

賛成派の意見


政府は、条約の批准について留保を付さない形のものについて国会承認を得たので日本政府としての留保は不可能であるとし、あるいは民主党修正案が必要とする留保は条約の趣旨と目的に反している、とする。

政府案あるいは与党修正案を支持する立場からは、これまで条約を締結した120を超える国の中で、民主党が言うような留保をした国はなく(なお、一時民主党が指摘していたウクライナの問題があるが、外務省の調べによると、ウクライナは留保をしているのではなく、条約より広い共謀罪があるとのことである。)、民主党の案によると5年以下の懲役の犯罪で犯罪組織の典型犯罪までもが抜け落ちていくため、世界の中で我が国だけがこのような留保をつけておいて国際社会に顔向けができるのだろうか、という批判が存在する。

アメリカ合衆国における留保は実質的にはささいな問題であり、実際にはほとんどの部分で共謀罪が有効であるため、無視するべきである。

共謀段階で自首した犯人に必要的減刑・免除を与えるべきか?
反対派の意見


市民団体・人権擁護組織・労働組合・NGOなどの中からは、同様の法理を含む過去の治安法制や顕示行為等の規定をもつ海外の共謀罪の適用経緯や、自首による必要的減刑・免除になる規定の存在から判断して、与野党修正案のような文言上の修正をたとえ加えても、通信傍受・盗聴など捜査段階での中立性は確保されずに「密告社会」化が起こってしまうこと、また将来的に「組織犯罪」の名の下に社会運動や抗議行動に対する共謀罪の「濫用」が起こるリスクがあることなどから、共謀罪は認められないとする意見も出されている。

戦前の日本は処罰の早期化による治安強化の考えを拡大解釈し、『
治安維持法』という悪法を作り出したことで汚点を残した経歴がある。

賛成派の意見


犯罪は共謀→予備→実行行為の3段階に分類しうるが。実行行為の段階で自首すると必要的減刑・免除となる。

例えば、殺人を共謀し、ピストルを購入し(殺人予備段階)、ピストルで被害者に重傷を負わせても(殺人実行行為段階)、反省して被害者を病院に搬送し被害者を救命すれば必要的減刑・免除される。

ところが、反対派の主張どおり共謀罪の必要的減刑・免除を廃止すると。共謀の段階で自首しても実行犯を前提とした刑法総論の規定が適用されない結果、必要的減刑・免除をえられなくなる。

例えば殺人を共謀したが、怖くなって自首しても必要的減刑・免除は得られない。

反対説は共謀段階での自首に必要的減刑・免除を与えず。犯罪実行着手後の自首については必要的減刑・免除与えるわけだが、これはより犯罪結果発生の危険が大きい実行犯の自首・中止犯のみを優遇しており不合理である。

また、実行行為段階の「自首」や「中止犯」は必要的減刑・免除になっているが。すでに密告社会になっているのだろうか。

「治安維持法」は、条文上において国体に反対する思想、あるいは共産主義に基づく結社の自由を明文で否定しているが、共謀罪法案は犯罪実行を主とした目的とする団体が重大な犯罪実行を共謀し、一部の共謀者が予備行為に出た場合を問題としている。条文の趣旨も適用対象も制定された時代背景もまったく異なる。

そもそも条約批准に共謀罪は必要なのか

日本政府の説明によれば、国際組織犯罪防止条約は締約国に対し、重大な犯罪(長期4年以上の罪)の共謀(共謀罪)又は組織的な犯罪集団の活動への参加(参加罪)の少なくとも一方を犯罪とすることを明確に義務付けているとしたうえで[34]、条約締結のための法整備を行うにあたり、参加罪ではなく、もう一方の選択肢である共謀罪を設けることが適当であると考えたと説明している[35]

したがって、共謀罪はそもそも国際組織犯罪防止条約を批准するために立法化されるという前提だったが、第164回国会の会期末近くになって、新たな論点として、そもそも批准目的の共謀罪は不要ではないかという新たな論点が浮上している。


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