共同謀議
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日本政府は、捜査情報の共有などをする「国際組織犯罪防止条約」の締結のためには(1)重大な犯罪への合意罪(共謀罪)・(2)組織的な犯罪集団への参加罪のどちらかの法整備が必要となるとしている[注釈 4]。経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国のうち30カ国は条約締約の前提となる共謀罪や参加罪などを国際条約の成立以前から持っていた。OECD加盟国で国際条約の成立前から共謀罪を持っているオーストリアカナダニュージーランドは条約締結の際に参加罪も新設した。OECDの中で共謀罪も参加罪も無かったノルウェー、OECD外で同様に両方無かったブルガリアは共謀罪の方を新設した[152]
ノルウェー

ノルウェーは2003年に条約加入前に国会(ストーティング)において「経済テロ」対策のためとして、共謀罪を新設して国際組織犯罪防止条約を締結した[153]。2003年に条約への加盟のために新設した法律では複数犯での計画段階のみが構成要件だった。しかし、2011年の単独犯に77人が殺害された連続テロ事件を受けて、計画段階の単独行動の犯人でも取り締まれるようにする改正案が2012年7月に提出、同年11月まで審議され、2013年6月に国会で改正法案が可決された。2013年の改正も同様に反対する抗議活動が国民からほとんど起きなかったため、反対者はスカンジナヴィア諸国の国民は政府をあまりにも信頼しすぎていると述べている[154]。ノルウェー国家公安警察の広報担当者は、ノルウェーでは警察捜査の前に裁判所、後に委員会という第三者機関による審査があり、たとえば警察が盗聴を行う場合、まず事前に許可を得て盗聴の実行後、国会によって構成されたEOS委員会という監視機関によって運用が正しかったかどうか審査されるため、警察が単独では無差別に誰にでも行えないようになっており、テロ対策法に対し大きな批判が起こらなかった理由には、このような捜査方法が関係しているかもしれないと述べた。さらに、このような他機関による外部監視は他の欧州の国でも採用されていると説明している。一方、改正前の2010年にも首都オスロにある大使館の爆破計画をしていた男性が事前に逮捕されている[155]。一方で、ノルウェー情報保護局(Datatilsynet)局長のビョーン・エイリック・トン(Bjorn Erik Thon)氏は、ノルウェーの共謀罪のリスクに関して、冷却効果と呼ばれる、大多数と異なる政治的意見や性的嗜好をもっている時などに、監視されることを人々が恐れてコミュニケーションを避けるようになる現象が起きる可能性もあることを懸念すべきだと述べた[156]
イギリス

日本の法務省によれば成立要件は下記のとおりである。

1977年刑事法第1条及び第3条

ある者が、他の者と犯罪行為を遂行することにつき合意したとき
[157]

イギリスは古くからコモンローにおいて共謀罪を犯罪の構成要件にしてきた。1977年には更に刑法として共謀罪を詐欺的行為、又は公共道徳の腐敗もしくは社会風俗の破壊の共謀も対象とする明確な制定している。刑法で共謀罪を構成要件としている国なので、国で犯罪行為とされていることは共謀の段階で法律上は取り締まれる[158]。2002年にはデビッド・ベッカムの妻であるヴィクトリア・ベッカムと二人の息子[159]を誘拐し、500万ポンド(1ポンドを約139円として約7億500万円[160])の身代金をデビット・ベッカムに要求する計画をしていた犯人らをallegations of conspiracy to kidnap and theftとして誘拐と窃盗の共謀の罪で逮捕することでイギリス警察は事件を未然に防いでいる[161]

米独仏では下記の成立要件であると日本の法務省は主張している。
アメリカ

連邦法 (federal law) 第18編第371条

二人以上の者が、何らかの犯罪を犯すこと等を共謀し、そのうちの一人以上の者が、共謀の目的を果たすために何らかの行為を行ったとき
[157]


ドイツ

刑法第129条:犯罪団体の結成の罪

犯罪行為の遂行を目的・活動とする団体を設立した者、このような団体に構成員として関与した者、その構成員・支援者を募り又はこれを支援した者
[157]


フランス

刑法第450- 1 条: 凶徒の結社罪

重罪等の準備のために結成された集団、又はなされた謀議に参加したとき
[157]


脚注
注釈^ 2000年(平成12年)11月に国際連合総会で採択された国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(国際組織犯罪防止条約、パレルモ条約)が、重大な犯罪の共謀、資金洗浄(マネー・ロンダリング)、司法妨害などを犯罪とすることを締約国に義務づけたため、同条約の義務を履行しこれを締結するための法整備の一環であると政府は説明している[7]
^ 人権理事会決議28/16では特別報告者に対し,(a)関連情報の収集、動向の調査、勧告を行う権限 (b)国や国連機関、民間機関等に情報の提供を求める権限 (g)違反行為と思われるものについて、世界人権宣言12条及び自由権規約17条に基づき、人権理事会及び人権高等弁務官事務所に報告する権限 などの権限を与えている[44][45]
^ 組織的な犯罪集団への参加が罪になる。
^ #そもそも条約批准に共謀罪は必要なのかも参照のこと。

出典^ “「共謀罪」か「テロ等準備罪」か 報道各社、割れる表記”. 朝日新聞社 (2017年4月2日). 2017年5月14日閲覧。
^ a b 閣法 第193回国会 64 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案 衆議院
^ a b 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案 衆議院


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