六歌仙
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? 『古今和歌集』真名序[1]

仮名序と真名序は柿本人麿と山部赤人を「うたのひじり」(歌聖)または「和歌の仙」とし、その後の歌人たちやその歌がたいしたものではないとの評価をしており、「六歌仙」もそれら歌人たちの中に含まれることから、人麿と赤人に比べてあまり良い評価はしていない。ただし「六歌仙」以外の歌人は名を上げて批評するにも値しないとしているので(仮名序「このほかの人々」および真名序「此の外、氏姓流れ聞こゆる者」以下の記述)、相対的に「六歌仙」をそれらよりも高く評価していることになる。

しかし、仮名序と真名序がどういった基準でもってこの六人を取り上げたのかは明らかではない。「六歌仙」と同時代に活躍した歌人の小野篁在原行平は真名序に「野宰相」、「在納言」として取り上げられているものの、仮名序にはこの両名のことは全く触れられていない。また『古今和歌集』には遍照は17首、業平は30首、小町は18首の歌を収めているが、康秀は4首、黒主は3首、喜撰法師に至っては、「わがいほは みやこのたつみ しかぞすむ よをうぢやまと ひとはいふなり」の1首しか採られておらず、しかもその評には「よめるうた、おほくきこえねば、かれこれをかよはして、よくしらず」とあることも考え合わせると、「六歌仙」は必ずしも作歌の多さや知名度で選ばれたものとはいえない。これについて『古今集正義序注追考』(熊谷直好著)は、「六歌仙」とは当時歌人として巷間に知られ伝わっていた人々であり、仮名序はこの六人の名をそのまま取り上げただけに過ぎず、仮名序の作者とされる貫之が新たに選んだわけではないだろうと述べている。目崎徳衛は喜撰、康秀、黒主について、喜撰は遁世者として和歌をたしなむ者、康秀は「中央の下級官人」、黒主は「地方豪族」の代表・象徴として取り上げられたのではないかとする。

ほかには推理小説作家の高田崇史はその著書『QED 六歌仙の暗号』の中で、六歌仙はいずれも文徳天皇の後継者争いにおいて、紀氏の血を引く最有力候補だった惟喬親王を支持していた者たちで、六歌仙と親王の七人はやがて「七福神」として祀られるようになったのではないかと推察している。

なお「六歌仙」の名称は、現在のところ鎌倉時代初期にまでさかのぼることが確認されている[2]
後世への影響

後代「六歌仙」に倣い、6人を以って和歌の名人とすることが行なわれた。『袋草紙』には藤原範永平棟仲源頼実、源兼長、藤原経衡、源頼家の六人を「六人党」と称したと伝えている。「新六歌仙」というものもあり、これは藤原俊成九条良経慈円藤原定家藤原家隆西行の六人のことである。

また女1人に男5人の集団も俗に「六歌仙」という。最も有名なのは二代目松林伯圓講談河竹黙阿弥作の『天衣紛上野初花』によっても知られる『天保六花撰』である。「六歌仙」は浮世絵の画題にもなっているが、これも「見立て」として江戸時代当時の風俗で6人の人物を描くといったものがある。

「六歌仙」は人形浄瑠璃歌舞伎にも世界のひとつとして取り上げられている。以下その例をあげる。

『七小町』 - 人形浄瑠璃。享保12年(1727年)、大坂竹本座初演。竹田出雲作。

積恋雪関扉』 - 歌舞伎。天明4年(1784年)11月、江戸桐座初演。顔見世狂言『重重人重小町桜』(じゅうにひとえこまちざくら)の二番目大切(最後の幕)に出された常磐津節による所作事。

六歌仙容彩』 - 歌舞伎。天保2年(1831年)3月、江戸中村座初演。大薩摩節、長唄清元節による所作事。
「風流六歌仙」(六歌仙容彩) 嘉永5年(1852年)1月、大坂中の芝居五粽亭広貞画。
脚注^ 以上引用は仮名序と真名序いずれも、『日本古典文学大系』8の『古今和歌集』より。ただし仮名序の「古注」と呼ばれる六歌仙の歌の部分は省き、真名序は読みやすさを考え適宜改行した。
^ 『角川古語大辞典』(第五巻)、「ろくかせん」(六歌仙)の項。

参考文献

佐伯梅友校注 『古今和歌集』〈『日本古典文学大系』8〉 岩波書店、1958年

久曽神昇 『三十六人集』〈『塙選書』4〉 塙書房、1960年 ※第二項 六歌仙(22頁)

佐佐木信綱編 『日本歌学大系』(第九巻) 風間書房、1965年 ※『古今集正義序注追考』所収

目崎徳衛 「国風文化の源流―六歌仙と宇多天皇」 久保田淳ほか編『新装版図説日本の古典4 古今集・新古今集』 集英社、1988年

関連項目

古今和歌集仮名序

三十六歌仙

日本の中古文学史

積恋雪関扉

六歌仙容彩


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