アジア・アフリカなどの旧植民地国家では、実際の母語話者は極めて少数であるにもかかわらず、旧宗主国の言語(英語、フランス語、スペイン語及びポルトガル語)が現在も公用語とされている事が多い。これは主に以下のような理由による。
その地域に多数の言語が存在し、意思疎通が困難である
文字言語がなく、文書で記述することができない
政治・経済・教育など近代的諸制度を運営していく上で、それら制度の用語が充実した旧宗主国の言語を使用せざるをえない
独立運動や国家運営を指導するインテリ層が、旧宗主国の言語で高等教育を受けている
旧宗主国に加え、旧宗主国の言語を使う諸外国とのつながりが今でも強く、イギリス連邦やフランコフォニー国際機関、またポルトガル語諸国共同体などを通じた国際連携の観点から旧宗主国の言語が必須
このような国では、旧宗主国の言語を公用語として使用する場合と、最も使用する者の数が多い部族の言語を公用語としている場合がある。被植民側の言語には文字がない事も多く、アルファベットの発音をあててアルファベット表記することが多い。
ケニアではスワヒリ語と英語、フィリピンではタガログ語を基本とするフィリピン語と英語が公用語になっており、これらはそれぞれ義務教育によって全国で教育されている。また、これらの国には非常に多くの地方言語が存在することから、地方の言語、多数部族言語の公用語、旧宗主国言語の公用語と合わせると、多くの少数民族は3つの言語を使用することになる。ただし公用語化されない地方の言語には文字がないことが多く、公用語の普及と共にそのほとんどが消滅していく傾向にある。詳細は「危機に瀕する言語」を参照
欧州連合の公用語詳細は「欧州連合の言語」を参照
欧州連合では、1958年4月15日に採択された欧州経済共同体理事会規則 No.1 の第1条において欧州連合の公用語を定めている。この規則は幾度も改正されており、2013年7月1日以降、欧州連合の公用語となっているのはブルガリア語、クロアチア語、チェコ語、デンマーク語、オランダ語、英語、エストニア語、フィンランド語、フランス語、ドイツ語、ギリシア語、ハンガリー語、アイルランド語、イタリア語、ラトビア語、リトアニア語、マルタ語、ポーランド語、ポルトガル語、ルーマニア語、スロバキア語、スロベニア語、スペイン語、スウェーデン語の計24の言語である。原則として各加盟国の公用語を欧州連合の公用語としているが、ルクセンブルクの公用語の1つであるルクセンブルク語と、キプロスの公用語の1つであるトルコ語は含まれていない。すべての欧州連合の公式文書はこの24の公用語に翻訳されている。ただし、アイルランド語については、特例に基づき、一部のみ提供されている。具体的にはEU官報で主要立法、および国際条約の一部のみである[1]。なおイギリスがEUを離脱しても、英語はアイルランドとマルタの公用語の一つであるためEU公用語にとどまる[2]。また加盟国が増えると公用語も増えることがある。欧州連合は加盟国の拡大を目指しているものの、それに伴う公用語の増大により相互翻訳作業は級数的に増大し、微妙な翻訳表現の違いも問題化している。 複数の公用語を定める場合には、どちらか一方の言語のみを使用する者に不利益を与えてはならないため、役所を始め、通訳、翻訳および併記の必要性が生じ、また、複数言語に精通した役人を置くなど多大なコストがかかる。 公用語に指定された言語には決まった表記法が存在し会話言語のような方言的誤謬がない。そのためその域内は標準となる言語で統一され情報が末端まで正確に伝わることになる。このことは情報伝達の手段としては大変有効であるが、一方で公用語に指定されない少数話者の言語が人為的に消滅することとなる。
公用語の役割と重要性
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 日本には日本語の話者の他に、ポルトガル語、スペイン語、英語、中国語、朝鮮語などの話者もいる。
出典^ “Official Journal
^ “About the EU > EU languages