公正取引委員会
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ギグワーカーやクラウドワーカーといったデジタル社会の進展に伴う新しい働き方の出現に代表されるように、フリーランスという働き方が普及した一方で、彼らが取引先との関係で様々なトラブルを経験していることを受け、取引先とフリーランスの業務委託契約に関して最低限の規律を設けることを目的として[13]内閣は「フリーランス・事業者間取引適正化法案」を国会に提出し、2023年(令和5年)4月に可決・成立した[14][15]

この法律は、フリーランスに業務委託を発注した事業者に対して取引条件の明示を義務付け、報酬の減額や成果物の受領拒否等を禁止するという下請法類似[16]の規制を設けるものであり、違反した発注事業者には公正取引委員会が助言、指導、報告徴求・立入検査、勧告、公表、命令をすることができる[13]。公取委は本法律が施行されるまでに、運用のための政令規則、ガイドラインを策定する予定[17]である。
アドボカシー活動

競争政策におけるアドボカシー(競争唱導)活動とは、個別の独占禁止法違反被疑事件に対する法執行(エンフォースメント)とは別に、成長の期待される経済分野や政府規制分野について実態調査等を行い、反競争的な取引慣行の自主的な改善や所管省庁による規制の見直しを提言する取組みを指す[18][19]。近年、公正取引委員会では、キャッシュレス決済市場[20]携帯電話市場[21][22]デジタルプラットフォームにおけるオンラインモールアプリストア市場[23]デジタル広告市場[24]等に関する実態調査などを積極的に行なっており、それぞれの調査報告書を通じて取引慣行の見直しを提言している。中には、銀行間手数料の値下げ[25][26]や携帯電話端末の販売契約制度の改善[27][28][29]など、公取委の調査をきっかけとして実際に是正が進んだ取引慣行も存在し、公取委の行う競争政策上、重要な位置を占めつつある。特に、競争法上のグレーゾーンが多数存在するデジタル分野におけるアドボカシー活動は、市場との対話を通じてソフトローを形成できる取組みとして一定の評価がされている[30]

なお、公正取引委員会には、個別具体的な違反行為の取締りとは関係なく行使できる、罰則担保による強制調査権限[注釈 3][31]が与えられており、主に経済実態調査の過程において用いられている[32]。近年この権限が使われた実態調査の例として、液化天然ガスの取引実態に関する調査[32]クラウドサービス分野の取引実態に関する調査[33]が挙げられる。

2022年(令和4年)6月、公正取引委員会は、アドボカシーの実効性の強化やアドボカシーと法執行の連携の促進を目的として、これらを一層精力的に行うとともに、公取委の機能・体制の強化を図っていくことを表明した[34]
委員長および委員

2023年4月13日現在、委員会の構成は以下のとおり。

氏名任命年月日前職等学歴等
委員長
古谷一之2020年9月12日内閣官房副長官補東京大学法学部
委員三村晶子2016年2月22日横浜家庭裁判所[35]東京大学法学部
青木玲子2016年11月21日一橋大学名誉教授東京大学理学部数学科

スタンフォード大学大学院経済学博士 (Ph.D.)
?田安志2022年7月1日さいたま地方検察庁検事正中央大学法学部
泉水文雄2023年4月13日神戸大学大学院教授[36]京都大学法学部

京都大学法学修士[37]

京都大学大学院法学研究科博士後期課程退学[38]

沿革

1947年(昭和22年)

7月1日、公正取引委員会発足。委員の定数は7人で
衆議院の同意を得て内閣総理大臣が任命。委員長は委員の中から内閣総理大臣が選任する(参議院同意不要)。

7月14日、公正取引委員会委員を任命。

7月18日、公正取引委員会事務局官制[39]が制定され、事務局は総務部、商事部、調査部、審査部の4部体制。

7月31日、委員定数7人を、委員長1人、委員6人に分割し、委員長を認証官とする。任命に際し衆議院の同意を要する点はそのまま[40]


1948年(昭和23年)7月29日、商事部から証券部を分離して5部体制[41]

1949年(昭和24年)6月1日、国家行政組織法の施行に伴う法令改正により公正取引委員会事務局官制を廃止[42]、事務局の組織について独占禁止法第35条の2に規定[43]。この改正で証券部を商事部に統合し再度4部体制となる。

1952年(昭和27年)8月1日、公正取引委員会委員の定数を6人から4人に削減[注釈 4]。任命に際し必要となる立法府の同意が「衆議院の同意」から「両議院の同意(衆院優越なし)」に改められる[44]
事務局に事務局長を置く[44]。審判手続の一部を行う職員を審判官という専任職として5人を置き、事務局長に直属させる[44]。組織構成は官房、経済部、審査部の1官房2部の体制[44]

1964年(昭和39年)4月1日、経済部から取引部を分離して、1官房3部の体制[45]

1996年(平成8年)6月14日、委員長および委員の定年を65歳から70歳に変更。事務局を事務総局に、事務局長を事務総長に改め、機構を部制から局制に改める[46]
経済部と取引部を統合して経済取引局とし、経済取引局に取引部を置き、審査部を審査局に拡充し、審査局に特別審査部を設置する。これにより、1官房2局2部の体制となる。

2001年(平成13年)1月6日、中央省庁再編により、総理府外局から総務省外局に移行。

2003年(平成15年)4月9日、電気通信事業・放送事業・郵政事業の監督行政を所管する総務省の外局となっていることの問題に対応すべく、総務省外局から内閣府外局に移行[47]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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