1990年までは税制優遇を受けることのできる公益住宅企業が存在し、社会住宅の主たる担い手となっていたが、住宅の公益に関する法律が廃止されて、公益住宅企業の税制上の優遇策は廃止された[34]。
2002年1月には、50年間にわたり住宅建設促進の基本法であった第2次住宅建設法が廃止され、代わって社会的居住空間促進法が制定された。新法では、住宅市場を活用し、自力では住宅の手当できない世帯(低所得者、多子世帯、高齢者等)に目的を特定して住宅政策を実施することとなった[34]。
第一次世界大戦後、国は労働者用のアパートの建築に取り組み、ナチスの時代になるとさらにこれに拍車がかけられた[40]。第二次世界大戦後、「国は社会の広い層に住む場所を提供すべし。」と法律で定めたことがきっかけになり、国が公営住宅を建てた[40]。これが低所得層の大きな支えになっていたが、「ただでもらった公営住宅を管理するよりも、目先の利益に目が眩んで、低所得層の住居を投資家に売却してしまった。民間企業のノウハウを利用した方が効率のいい運営ができる。」と州政府はこれを正当化し、1988年公営住宅を州の管轄に移行した[40]。国は社会福祉住宅を16の州に払い下げたが、投資家が興味を示すのは利益のみで買い取った社会福祉住宅は大規模に改築されて、上層中間層から裕福層へのアパートと変わってしまった[40]。
社会福祉住宅の代わりに、子供がいる家族や個人が収入不足のために適切な住居に住むことができない場合、州が補助金を出す制度としてWohngeld(家賃補助金)が実施された[40]。ドイツで就職して税金を納めていれば、需給資格が生まれる[40]。しかし、郊外から都市部にドイツ人が流れ込みを始めると住宅不足が生じ、家賃が上昇して、これまでは家賃補助金がなくても生活できた人が、補助金を申請するようになった[40]。都市部で払えるアパートを借りること自体が困難になり、家賃補助金も何の役にも立たなくなった[40]。
市民の不満の高まり、州選挙での敗北が原因となって、地方自治体は2016年頃から公営住宅の建築に力を入れている[40]。しかし新しく建設される公営住宅よりも、公営住宅のステータスを失う住宅の方が多く、この状況が好転するのは早くても2020年頃になると予測される[40]。 フランスには適正家賃住宅という社会住宅がある[3]。HLM(適正家賃住宅)組織が社会住宅の9割を管理しており、残りは国などから出資を受けた経済混合会社(SEM)が管理している[2]。HLM組織はフランス国内に900以上あり、HLM公社・建設整備公社、HLM株式会社、HLM建設協同組合がある[2]。APL(個別住宅援助)やALF(家族住宅手当)の受給者要件を満たさない者に対するALS(社会住宅手当)もあり、適正家賃住宅の居住者に対して所得、世帯構成、住宅の評価額、地域、家賃等に応じて支給される[3]。 オイルショック以降、移民、低所得者などの社会的弱者が集中するようになり、住宅の劣化に加え、失業、バンダリズム、軽犯罪などの社会問題を抱えてきた。1977年以降、政府は、都市の困窮防止政策として、住宅団地の改修や建替え等の物理的対策を中心に、雇用・教育対策などの社会的対策についても取り組んできたが、根本的な解決には至らず、社会問題が深刻化し顕在化していくなか、一定の社会階層が限られた地区に集中することが、社会問題の要因の1つであるとの認識が一般化される[41]。 1991年7月13日の都市基本法は、ソーシャルミックスの概念を初めて取り上げ、都市圏内で均衡ある社会住宅の配置を目的に、社会住宅の少ない市町村にその建設を促す取組みを定めた[41]。2000年12月13日の都市の連帯と再生に関する法律は、それを強化するために、一定の都市圏に位置する一定規模以上の市町村に全住宅戸数のうち20%を社会住宅とすることを義務付けた[41]。このように、社会住宅の供給と同時にソーシャル・ミックスを達成することが、フランスの都市住宅政策の課題として求められていた。 2003年にボルロー法が制定され、主要目的の1つとして、困窮地区の居住と住環境を持続的に再生することが掲げられた[41]。その手段として、市街地改良全国プログラム(Programme National de Renovation Urbaine=PNRU)が制定され、その実施主体として全国市街地改良機構(Agence Nationale pour la renovation urbaine=ANRU)の創設が規定された[41]。これにより、2004年から、パリ都市圏を中心にフランス全国でPNRUが実施されている[41]。 日本で公営住宅への住民の需要が高い理由は、市場原理や設置地域野の相場を無視した「家賃の安さ」であるため、それに付随する諸問題が起きている。所得だけでなく金融資産も把握する改正、低所得者向けの家賃補助支給制度へ移行し、公営住宅自体は削減するべきと指摘されている[42]。 人口減少社会の中で日本の人口は減少しているために民間アパートの空室率も上昇傾向が続き、日本全体で住宅が余っている[42] 。2018年時点でも800万戸もの空き家が問題になっているのに、税金などの公的資金で「安い家賃で住宅」を供給し、一部の人だけが利益を享受できるような仕組みには疑念が呈されている[43]。
フランス共和国
家賃相場無視や入居者情報把握不足による諸問題・改正案
民業圧迫・公営住宅の過剰供給問題
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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