英国の地方自治体によって建てられた低所得者向けのカウンシル・フラット(カウンシル・ハウス、カウンシル・エステート)は、割安な家賃で、低所得者、失業者、シングルマザー、生活保護対象者などが優先的に入居できる仕組みである[35]。もともとカウンシル・フラットは、1875年の公衆衛生法で定められた地方都市のスラム解体政策の一部であり、当初の目的は労働者階級の暮らしを向上させ、同時にスラムをなくすことで近隣の土地の価値を上げることだった[35]。その後、第二次世界大戦による住居の破壊、急激なインフレーション、兵士の復員による新婚世帯の増加などが原因で、深刻な住宅不足が起きる。これを受けた政府は1946年、住宅法を制定し公営住宅の建設を積極的に推進し、1951年までに英国全土で約90万戸のカウンシル・フラットが建設された[35]。やがて1960年代に入ると、再び都市部のスラム解体政策に重点が置かれるほか、核家族化に伴う若年層・高齢者用住宅の建設も開始し、住居の大量供給のためカウンシル・フラットの高層化も進んだ[35]。
マーガレット・サッチャー首相率いる保守党政権が1980年の住宅法によって導入したのが、Right to Buyという制度で公営住宅の住人が現在居住する物件を市価より安い値段(約33?50%)で購入できる権利を与えるもので、この制度によって英国の持ち家率は飛躍的に上昇し、現在も改定されながら続いている[35]。これにより、公営住宅が次々と私有化・民営化され、順番待ちをする入居希望者は、膨大な数にのぼった[35]。その後1980年代にかけて建設され、それ以降カウンシル・フラットの建設は大幅に減少しているといわれている[35]。
新たな公営住宅建設には政府からの資金援助が望めず、借入金にも厳しい制限があることから、自治体は従来とは異なる方法で公営住宅建設の費用を捻出する必要があった[35]。そこで、地方自治体は所管の住宅建設会社を設立し、民間の土地開発業者のように個人向け住宅を建設・販売し、その収入を公営住宅建設費に充てるというスタイルを編み出した[35]。英国の地方自治体の3分の1以上が独自の住宅建設会社を設立し、1980年の住宅法によって力を奪われていた地方自治体は、約40年ぶりに公営住宅を建設し始めた[35]。 アメリカでは地方住宅庁(local housing authority)が公営住宅を供給・管理している[2]。家賃負担は応能家賃制度となっている。 アメリカでも公営住宅に代わって非営利民間組織であるCDC(community development corporation)が供給する社会住宅の数が伸びている[2]。アメリカには2000以上のCDCがあるが、組織の分類が困難なほど多様で、賃貸住宅が一般的だが、持ち家を中心に供給している組織もあり、商業開発や啓蒙活動等も行っている組織もある[2]。 低所得者への住宅政策は1937年から始まり、不良住宅の解消と住宅費補助を二大目標として、自治体が建設する公営住宅の所要資金の元利を40年にわたって償還するというものであった[36]。公営住宅は、必ずしも対象を貧困層に限定してはいなかったが、民間住宅業者を圧迫しないという条件があって第2次世界大戦後家賃は市場家賃の80%に抑制され、スラム地区改良や都市再開発に伴う住宅取り壊しを補完するものとされたため、対象者は低所得者、人種的マイノリティに偏った[36]。 1968年から、入居者の家賃負担を世帯収入の25%に限定するとした改正は、入居者の貧困世帯化を反映するものであると同時に、促進するものであった[36]。公営住宅は貧困世帯とマイノリテイのゲットー化をもたらすイメージが、公営住宅団地の造成を困難にした[36]。既存の公営住宅団地のなかには、ゴーストタウン化するものもあった[36]。 1993年のアメリカの公営住宅132万戸とされていたが、既に新規供給は停止されており、取り壊しや払い下げにより公営住宅は減少している[2]。 2018年7月31日に住宅都市開発省(HUD)は、公営住宅敷地内と建物から25フィート以内の喫煙を禁止した[37]。この喫煙禁止は、政府住宅機関の医療費や修繕費を一年間に153ミリオンドル
アメリカ