公営住宅
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当初の公営住宅の入居者は低所得者層ではなく、家賃支払能力のある所得階層を対象としており[13]、公営住宅にはセーフティーネットとしての機能は持たされていなかった[13]

その後、1955年(昭和30年)に日本住宅公団(現:都市再生機構)が設立。高度経済成長によって増加したサラリーマン世帯を主とする勤労者階層に対する住宅供給は公団住宅が担うこととなり、公営住宅は世帯主が低所得者または身体障害者で夫婦を主体とする社会福祉の一環[12]として位置づけられるようになっていった。

平成初期の1990年代半ば以降は、住宅関連に対する政府による公的支援は大幅に削減された。住宅政策・都市計画を専門とする平山洋介によれば、これにより「住宅と住宅ローンの大半」が市場に委ねられることとなった[14]2005年(平成17年)には公営住宅の戸数が減少に転じた[14]

2003年に公営施設(都道府県市区町村営)の業務を民間に委託する「公設民営」改革の一環による、指定管理者制度が法律化されたことにより、主に都道府県営か、政令指定都市中核市特別区営の公営住宅を中心に、指定管理者による民間委託が実施されている事例も増えている[15]。 2024年には所得基準(税などを除いて1カ月の所得が月15万8000円以下)を5年以上超えた非低所得者らが本来定められている退去処分や警告も受けず、公営住宅に住み続けていた問題が発覚した[16][17][18]
名称

殆どの名称が「?住宅」または「?団地」という名称だが、東京都営住宅や広島市営住宅は「?アパート」[* 1]名古屋市営住宅は「?荘」という名称である。
問題点

また、阪神・淡路大震災東日本大震災以後の大規模震災発生後、築40年以上経過したものに関しては、建て替え、ないしは耐震補強工事を進めつつ、バリアフリー推進の流れから、エレベータースロープの設置が進められているが、エレベーターに関しては、建築基準法により基準として高さ31m以上の建物、並びに「サービス付き高齢者向け住宅」についても3階建て以上の建物はエレベーターの設置が必須[19]とされ、それ以下は原則的にその設置義務がないことなどから、エレベーター自体が設置されていない住宅も多いため、近年は従来からの住宅に外付けする形で、国土交通省を中心として提案を募集した4人程度が乗れる低コストの小型タイプのエレベーターを1階層につき2部屋(実際は中間階に設置するため、2階層・4部屋)を1つで共有する階段室型、または片廊下増設型[20]のどちらかで設置する計画が進んでいる。

階段室型の場合は、階段がそのまま残るため、車いす用スロープの設置工事(概ねは脱着式[21])をしない限り、車いすでの直接移動が困難ではあるが、既存の階段の踊り場の壁を撤去し、工事期間中も既存の住居で住み続けながら外付け工事をすることができる[20]。一方片廊下増設型の場合はバリアフリーの点では優れているが、一時的に住居を閉鎖し、他の部屋・住居への仮住まいをしなければならないなどのデメリットも多い[20]

またコストパフォーマンスという点では、設置費用・メンテナンス費用・数十年後の改修に伴う撤去費用などを総合的に踏まえて考えた際、長崎県が5階建て・1棟につき30室・20年間使用[* 2]を想定して試算したところ、階段室型が約4800万円であるのに対し、片廊下増設型になると、工事費に加え、対象住居の仮住まい費用などが掛かるなどの問題点もあり、約7600万円とかかってしまうため、前者が低コストでの工事がしやすい[20]が、自治体の財政負担が大きく、入居者に対する共益費の負担が増加することなどもあり、山形県などのように設置予定めどがついていない例もあり、特に歩行が困難な高齢者や身体障がい者を抱える家庭では、階段の移動負担が少ない低層階への引っ越しを促す例もある[22]

公営住宅の家賃滞納も多く、全国の公営住宅における1か月以上の家賃滞納は2015年度末時点約21万世帯にものぼる[23]。家賃滞納者の滞納事情や生活状況の把握や、福祉的な支援を必要とする家賃滞納者に対する住宅部局と福祉部局との連携した対応が不十分であることが指摘されている[23]
ギャラリー.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}画像提供依頼:名古屋市営中あじま荘以外の画像の画像提供をお願いします。(2024年3月)

名古屋市営南あじま荘(2013年)

名古屋市営南あじま荘(2019年)

名古屋市営中あじま荘(2013年)

名古屋市営中あじま荘(2020年)

名古屋市営西あじま荘(2020年)

名古屋市営西あじま荘の広場と遊具(2019年)

応募方法

[24]
家族向けは配偶者を対象とする家族である18歳以上の世帯主が対象で、1世帯につき1件であり、住民税を約定日までに納付していることに加え、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}自治会の加入と団地内清掃、草刈り、ごみ当番などの自治会の活動に参加することが公営住宅法や自治体の住宅条例で義務付けられている[要出典]。

応募のさいに、資格審査に必要とされる収入証明書の提出を求めるが、審査基準に満たない場合は無効となる。なおこれまで審査時にはほかの書類(未納や国税徴収法滞納処分を受けたことがない旨の証明する住民税納税証明書、所得証明書、住民票、印鑑証明書、戸籍謄本)の提出を求めていたが、一部の自治体では「マイナンバー制度導入基本方針」による、市民の事務手続きの負担軽減を図るため、それらの提出が不要になったものもある。

応募のさいに、連帯保証人も未納や国税徴収法滞納処分を受けたことがない旨の証明する住民税納税証明書、所得証明書、印鑑証明書、住民票は提出不要であるが、資格審査時に連帯保証人の所得証明書、印鑑証明書、住民票の提出が必要となる。

配偶者の別居目的での応募は無効とする。

入居時の家賃は募集住宅一覧の掲載家賃額に基づく。

入居後は居住者が共同使用する部分に関しては、家賃とは別に共益費を負担してもらう。

浴室の設置されていない住居(浴槽・給湯器など)は、入居者の自己負担で設置するが、一部の自治体ではそれらが設置されていない場合でも所有自治体の費用負担により浴室を設置する場所もある。

持家を保有している者の応募は無効となるが、資格審査日までに持家を売却する予定がある場合には応募できる場合がある。

通常は資格審査合格後の入居申込後に補修や空き部屋のあっせんを行うため、数ヶ月程度であるが、部屋の補修や空き状況によっては1年以上かかることもある。

抽選は公平性を高めるため一般公開による厳正な抽選で行われるが、2020年以降は新型コロナウイルスの感染防止策として、抽選会は無観客(パソコンやスマートフォンを利用した動画ライブ配信サービスなどで一般公開)実施される。抽選結果は、書面で通知され、応募後に無効と判明した場合はその理由を書面にて通知される。

当選者は資格審査後に担当職員が当選者の居住地を直接来訪し、当選者の虚偽申告(18歳未満の児童がいるひとり親世帯枠で応募した者は、交際相手の生活用品、出入り、交際相手からの金銭的支援などがないかどうか)確認をするための実態調査が実施され、同居する児童は18歳になったら、住居から退去しなければならない。

当選者は資格審査時に応募者、18歳未満の児童も含む同居者全員、連帯保証人が暴力団員、暴力団構成員、密接交際者 (暴力団を離脱してから5年が経過しない者も含む)であるか否かの確認、過去の犯罪歴と前科を調査するため、都道府県警本部または、所轄の警察署に照会される。


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