公共図書館
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欧米における図書館の発展は開国後の日本にもいち早く伝えられ明治の初年には各地で新聞縦覧所集書院などの名称をもつ施設が設立されて新聞などの情報メディアを公衆に公開する試みが行われた。

明治期中期以降には公衆を利用の対象とする図書館は「通俗図書館」などの名称をもって呼ばれ、その設立は主に都道府県や市町村よりも地域の教師などの教育関係者や教育に関心をもつ有力者によって構成された「教育会」と呼ばれる半官半民の団体やあるいは個人の篤志家が設置母体となって推進された。明治後期以降は図書館に関する法規や制度が整備され、大正期から昭和初期にかけては公立図書館の設立が進む。だが1899年制定の図書館令では「図書閲覧料」、1933年の全面改正以後は「閲覧料」及び「附帯施設利用料」の名目で公立図書館が利用者から使用料を取ることが認められており政府は無料公開などの公衆が図書やメディアに自由に接触させる措置には思想統制・国民教化の観点から否定的な姿勢に終始した。それでも一部の公私立図書館では図書館の無料公開に向けた活動が徐々に行われるようになっていった。

しかし順調に発展を続けてきた日本の図書館は太平洋戦争による財政難、被災などにより大きな打撃を受け数多くの図書館が閉鎖や縮小を余儀なくされた。戦後の復興期には自動車による移動図書館(ブックモービル)が各地の公立図書館によって運用され、図書館が身近に存在しない地域にサービスを広げるきっかけになった。また戦前の図書館が国民の思想善導、教育といった統制的な性格を強く持っていったことが反省され一般公衆に等しくサービスを行う公共図書館の概念が1950年制定の図書館法を通じて導入された。

1963年に日本図書館協会は『中小都市における公共図書館の運営』(略称:中小レポート)を出版する。中小公共図書館は公共図書館の中でも中核をなす存在であり、故に住民に直接的に関るべき中小図書館の運営基準について新たな活路を見出そうという目的で作成された。中小レポート以前の図書館は閲覧主体であり、教育の場としての図書館であったため一般市民には疎遠であった。その現状を憂い、貸出し中心の図書館への転換を推進しようと提起されたものである。このレポートは日本の公共図書館に大きな転機をうながしたと言われている[誰によって?]。

1960年代以降、高度経済成長を経て公立図書館の新設が相次いだ。また各地の公立図書館では公民館小学校などに併設した分館の設置が進められ、より住民に身近な地域の図書館が目指された。この結果公共図書館は量的に充実し現在ではすべての都道府県、多くの市町村に公共図書館が設置されるに至っている。サービスについてみると戦後の図書館は貸出サービスの拡大が顕著であり、多くの人々を読書に親しませる拠点としての役割を果たすようになった。

しかし21世紀初頭現在、日本の図書館の設置率は他の先進諸国に比べるとまだ低くサービス内容も改善が必要とされている。G7諸国のうち人口10万人に対する図書館の数はドイツが14.78館と最も多く、日本は2.21館と最少である。また日本は市の97.9%に図書館があるが町は48.3%、村はわずか17.6%と圧倒的に都市部に集中している[10]。また都市部でも無料で利用できる公共の建物が数少ないため図書館が混雑しており、閉館時間が早く(17時)、閉館日が多い。2003年9月2日施行の指定管理者制度によって民間企業やNPOが運営やコンサルトを行い返却処理を短時間に縮める、開館日を増やし開館時間を延長して利便性を上げる、閉館後に起業者のための講座を行う、市の職員を減らし民間人を採用して人件費を下げる一方で司書の数を増やす、PFI公式で民間に建設も委託するといった新しい手段で運営される公共図書館も現れている[11]
脚注[脚注の使い方]^ 日本図書館協会. “ ⇒日本の図書館統計 公共図書館集計(2020年)” (PDF). 2021年10月27日閲覧。
^ 日本図書館協会. “ ⇒ユネスコ公共図書館宣言 1994年”. 2021年10月27日閲覧。
^ a b クリスティー・クーンツ,バーバラ・グビン 編,山本順一監訳 竹内ひとみほか訳. “IFLA公共図書館サービスガイドライン 第2版-理想の公共図書館サービスのために” (PDF). 2021年10月27日閲覧。
^ 和田正子「公民館図書室について―東京都国立市公民館を事例として―」『明治大学図書館情報学研究会紀要』第5巻、2014年3月、17-23頁。 .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}NAID 120005448073
^ a b 久繁哲之介「まちづくりに、図書館が果たす役割を、シェアリング・エコノミーから考える?図書館で、まちを創る「NPO情報ステーション」を事例に(1)?」『Urban study』第63巻、民間都市開発推進機構都市研究センター、2016年12月、83-107頁。 NAID 40021039418
^ 松下尚明「公民館図書室の発見―社会教育行政の現場から―」『地域生活と生涯学習―中野哲二教授退任記念論文集―』、鉱脈社、1992年9月25日、159-178頁。 全国書誌番号:93041846
^ 黒澤温子. “図書館未設置町村における公民館図書館”. 2017年2月27日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2017年2月27日閲覧。
^ “都立中央図書館利用案内”. 東京都立図書館. 2021年10月12日閲覧。


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