2017年現在でいう意味での、「個人による八百長疑惑」が取りざたされるようになったきっかけは大鵬と柏戸の一戦の疑惑が取りざたされたころからである。[32]
シカゴ大学の経済学者スティーヴン・レヴィットは、著書『ヤバい経済学』で、大相撲の過去の取組結果を元に調査を行った結果を次のように報告している[33]。レヴィットが、1989年1月から2000年1月までの、本場所の上位力士281人による32,000番の取組から、千秋楽の時点で7勝7敗の力士と8勝6敗の力士の過去の対戦成績を抽出したところ、7勝7敗の力士の8勝6敗の力士に対する勝率は48.7%であったが、これが千秋楽の対戦になると79.6%に上昇していた。
さらに、その両者が次の場所で勝ち越しに関係がない対戦をした場合、前回7勝7敗の力士の勝率は40%に下がり、その次の試合では勝率約50%と、平均値に戻った。また、日本のマスコミが八百長疑惑について報じた直後の千秋楽では、7勝7敗の力士の8勝6敗の力士に対する勝率は50%前後に戻るという結果を得た。
こうした結果を元に、レヴィットは「勝ち越しが掛かっている場合に星のやり取りが行われ、次の場所で借りを返している」「八百長疑惑が報じられた直後は、力士たちは八百長を控えている」と述べ、「八百長がないとはとてもいえない」と結論している[34]。
2011年の大相撲八百長問題では、疑惑が浮上した力士は主に十両力士だった。