加えて、当初は大人に向けて書かれた古典的な作品が今日では子ども向けと考えられるようになっている例も多い。マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒険』も本来は大人向けに書かれたものであったが[5]、今日ではアメリカ合衆国の小学校のカリキュラムの一環として広く読まれている。 児童文学はさまざまな観点から分類されうる。 文学ジャンルとは、文芸作品のカテゴリである。ジャンルは技法、口調、内容、長さなどによって決定される。ナンシー・アンダーソンは児童文学を6つの大きなカテゴリと、いくつかの重要なサブジャンルに分類している[6]―― これらは最も広い意味での「児童文学」もしくは「児童書」であり、児童文学という分野を限定的に考える場合には、実用的な教本や文章によらない絵本、さらには固有の創作者を持たない昔話や神話、娯楽を主体としたフィクションなどは除外されることもある。 児童文学そのものも大人の文学と対になる年齢によるカテゴリであるが、0歳から18歳まででは子どもの理解力や興味もさまざまであるため発達段階に応じて形態や内容も違ってくる。 こうした分類の基準は、児童文学そのものを定義する基準と同様に、曖昧で問題を含むものである。明確な違いの1つに幼い子ども向けの本はイラストレーションが添えられることが多いということが挙げられるが、絵を作品の不可分な一部として持つ絵本であってもこうしたジャンルや年齢層に収まらないものがある。ピーター・シスの『チベット――赤い箱を通して』は大人の読者に向けた絵本の1例である。 子どもや若年者の成長への感化を念頭に置いた、教育的な意図、配慮がその根底にあるものが多く[9]、子どもの興味や発育に応じた平易な言葉で書かれる。しかし難しい内容を扱わないという訳ではなく、難しい内容でも子どもに必要と考え、わかりやすい例や言葉で表現する作家もいる。平易な表現で根源的なことを語っている場合があり、子どもに受け入れられる児童文学作品には大人の鑑賞にも堪えられる秀逸なものも多い。たとえば灰谷健次郎著の『兎の眼』やあさのあつこ著の『バッテリー』など一般の文庫本となって大人読者に広く流布する作品がある。児童文学は大人向けに書かれた「文学」の価値観が持ち込まれているという指摘がある[1]。
児童文学の種類
ジャンルによる分類
絵本。アルファベット文字や数字を教える教本、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}パターンブック[訳語疑問点]、文字のない本などを含む。
伝承文学。これには10の特徴がある[7]――(1) 作者不明、(2) 紋切り型の出だしと終わり(「むかしむかしあるところに……」)、(3) 漠然とした設定、(4) ステレオタイプの人物、(5) 擬人観、(6) 原因と結果、(7) 主人公のハッピーエンド、(8) 魔法が普通に受け入れられている、(9) 単純で直接的なプロットを持つ簡潔な話、(10) 行動と言葉のパターンの反復。伝承文学の大部分は民話からなっており、昔の人々の伝説、習慣、迷信、信仰などを伝えている。この大ジャンルはさらにサブジャンルに分けることができる――神話、寓話、バラッド、フォークミュージック、伝説、童話[8]。
フィクション。ファンタジーと現実的なフィクション(現代的・歴史的の双方を含む)からなる。
ノンフィクション
伝記。自伝を含む。
詩と韻文
年齢層と発達段階
絵本は0-5歳程度の、まだ文字を(充分には)読めない「読者以前」の子どもたちにも向いている。
5-7歳頃の、読み書きを覚えたばかりの子どもに向けた本は、簡単な童話や昔話などを主題とし、子どもに読書力をつけるよう工夫されていることが多い。
7-12歳頃の子どもは発達に応じて、もう少し長い、章立てのある本(チャプターブック)も読めるようになり、児童文学の中核となっている。
ヤングアダルト小説(ジュブナイル)は概ね13歳以降のティーンエイジャー(ヤングアダルト)を読者に想定している。
内容ライマン・フランク・ボーム『オズの魔法使い』(1900)。W・W・デンズロー