児童労働は、産業革命の勃発初期から、経済的困難の中で重要な役割を担った。貧困層の児童は、労働によって家計を支えることを期待されていた[9]。19世紀のイギリスでは、死亡や育児放棄などの理由で貧困家庭の3分の1に生計維持者がおらず、児童は幼い頃から労働に従事することを余儀なくされた。1788年のイングランドとスコットランドでは、143の紡績工場で働く労働者の3分の2が児童とされていた[11]。また、娼婦として働く児童も多かった[12]。作家チャールズ・ディケンズは、12歳のとき家族とともに債務者監獄に収監され、靴墨工場で働いた[13]。 2015年9月の国連サミットで、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)が、加盟国の全会一致で採択された。持続可能でよりよい世界を目指すために、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に17の目標と169のターゲットが記載されている。 児童労働撤廃は、持続可能な開発目標(SDGs)
21世紀
SDG 8.7
「強制労働の廃絶、現代の奴隷制度および人身取引の廃止、子ども兵士の採用と使用を含む最悪な形態の児童労働を禁止および撤廃のために、即時かつ効果的な措置をとり、2025年までにあらゆる形態の児童労働を終わらせる」
グローバル指標 8.7.1
児童労働者(5?17歳)の割合と数(性別、年齢別)
国際条約
就業が認められるための最低年齢に関する条約 (ILO第138号条約)(1973年)「en:Minimum Age Convention, 1973」も参照
就業が認められている最低年齢が示されている。ILOは1919年の設立以来、工業、農業、漁業、鉱山など、産業部門別に就業最低年齢を定めてきたが、1973年にこの条約ができたことによって、すべての産業が対象に含まれた。
第2条 就労最低年齢の明示
3 ……最低年齢は、義務教育が終了する年齢を下回ってはならず、また、いかなる場合にも15歳を下回ってはならない。
ただし、開発途上国の場合は、批准当初は14歳とすることも認められている。また、軽易な労働については、一定の条件の下に13歳以上15歳未満の者の就業が認められている(開発途上国の場合は12歳以上14歳未満)。 <2020年にILOの全加盟国が批准> 児童労働の中で最も搾取的な労働を「最悪の形態」と定めている。義務教育を終えていても、子どもをその労働から無条件で直ちに保護しなければならないとしている。 「最悪の形態」の児童労働は、次の4つのカテゴリーに分けて定義されている。 (a)児童の売買及び取引、負債による奴隷及び農奴、強制労働(武力紛争において使用するための児童の強制的な徴集を含む)等のあらゆる形態の奴隷制度又はこれに類する慣行 (b)売春、ポルノの製造又はわいせつな演技のために児童を使用し、あっせんし、又は提供すること (c)不正な活動、特に関連する国際条約に定義された薬物の生産及び取引のために児童を使用し、あっせんし、又は提供すること (d)児童の健康、安全若しくは道徳を害するおそれのある性質を有する業務又はそのようなおそれのある状況下で行われる業務 (d)については、各国で決定することになっている。日本の場合は、労働基準法第62条、63条において子どもに対する就業制限、および年少者労働基準規則第7条、第8条、第9条で詳細な規定が設けられている。例えば、建築現場での高所での作業、重たいものを取り扱う仕事、ガソリンや火薬など危険物を取り扱う仕事、お酒を提供する場所でお客さんと会話などをする仕事などである。 子どもの権利条約は、子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約である。18歳未満を子どもと定義し、おとなと同様にひとりの人間として人権を認めるとともに、成長の過程で特別な保護や配慮が必要な子どもに関する権利も定められている。 子どもの権利は、生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利の4つに大きく分けられ、経済的搾取から守られる権利や教育を受ける権利が含まれている。 1 締約国は、児童が経済的な搾取から保護され及び危険となり若しくは児童の教育の妨げとなり又は児童の健康若しくは身体的、精神的、道徳的若しくは社会的な発達に有害となるおそれのある労働への従事から保護される権利を認める。 子どもの権利条約に新たな内容の追加や補強をするためにつくられた選択議定書で、条約と同じ効力を持つ。武力紛争が子どもに及ぼす有害かつ広範な影響を考え、18歳未満の子どもが敵対行為へ直接参加することや強制的に徴収することが禁止されている。
最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約 (ILO第182号条約)(1999年)
子どもの権利条約(1989年)
第32条 経済的搾取からの保護
武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書(2000年)
児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書(2002年)
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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