獲得免疫系は初期の脊椎動物に進化し、より強力な免疫反応を起こし、個々の病原体が特定の型であることを示す抗原によって判別し記憶(免疫記憶)する機構である[42]。応答は抗原特異的であり、抗原提示と呼ばれるプロセスの間に特異的な非自己の抗原であるという認識が行われる必要がある。抗原特異性の認識によって、特定の病原体あるいは特定の病原体感染細胞に対して調整された応答の発動を可能とする。このような調整された応答を開始する能力は体内の記憶細胞によって保持される。もし病原体が1回以上生体に感染するなら、このような特定の記憶細胞が使われて即座に病原体は排除される。 獲得免疫に関与する細胞は特定の種類の白血球で、リンパ球と呼ばれている。その主要なタイプはB細胞とT細胞であり、骨髄の中の造血幹細胞に由来する[28]。B細胞は体液性免疫反応に関与し、T細胞は細胞性免疫応答に関与する。B細胞とT細胞は、特定の目標を認識する受容体分子をもっている。T細胞が病原体のような「異物」のターゲットを認識するには、抗原(病原体)が小片まで分解されて自己の受容体である主要組織適合遺伝子複合体(MHC、Major Histocompatibility Complex)分子と組み合わさって提示されねばならない。T細胞には細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)とヘルパーT細胞の2種類の主要なサブタイプがある。細胞傷害性T細胞はMHCクラスI分子と結合した抗原のみを認識し、ヘルパーT細胞はMHCクラスII分子と結合した抗原のみを認識する。これらの2つの抗原提示の機構は、2タイプのT細胞の異なる役割を反映している。3番目のマイナーなサブタイプのT細胞としてγδT細胞があり、MHC受容体に結合しない、非加工の抗原を認識する[43]。 対照的に、B細胞の抗原に特有の受容体は、B細胞表面上の抗体分子であり、抗原加工なしに、病原体全体を認識する。B細胞上の抗体は、将来そのB細胞が産生する抗体のサンプルであるが多少の違いが存在する。B細胞の各々の増殖系は異なった抗体を発現し、B細胞の抗原受容体の完全な1セットは体が作ることができる全ての抗体を表すものである[28]。 細胞傷害性T細胞(CTL、キラーT細胞)はT細胞のサブグループで、ウイルス(および他の病原体)に感染した、損傷した、または機能不全の細胞を殺す[45]。B細胞と同じく、各タイプのT細胞は異なる抗原を認識する。細胞傷害性T細胞は、自身の持つT細胞受容体(TCR)が別の細胞のMHCクラスI受容体と複合体を作っている特定の抗原と結合するとき、活性化する。このMHC-抗原複合体の認識は、T細胞上のCD8と呼ばれる共受容体によって助けられる。それからこのT細胞は、このような抗原を保持したMHCクラスI受容体を発現させている細胞を捜して、体内をくまなく移動する。活性化したT細胞がこのような細胞に接触すると、パーフォリンのような細胞傷害物質を放出する。パーフォリンは標的の細胞の細胞膜に孔を開け、イオン、水と毒素を侵入させる。
リンパ球
細胞傷害性T細胞(CTL)キラーT細胞が外来性ないし異常な抗原を表面にもった細胞に直接攻撃を加えている。[44]