貪食機能は細胞性自然免疫で重要な役割をもっており、病原体や粒状物を呑み込み食す食細胞と呼ばれる細胞によって行われる。食細胞は感染源や粒子を貪食、すなわち食うことによって排除する役割を担う。食細胞は普段は体内を巡回して病原体を探しているが、サイトカインによって特定の部位に誘導される[3]。病原体は一旦食細胞に呑み込まれるとファーゴソームと呼ばれる細胞内小胞によって捕らえられ、続いてリソソームと呼ばれる今一つ別の小胞と融合してファーゴリソソームを形成する。病原体は消化酵素によって、あるいは呼吸バーストに続くフリーラジカルのファーゴリソソームへの放出によって殺滅される[31][32]。貪食機能は栄養素獲得のために進化したが、食細胞ではこの役割が拡張されて病原体の貪食を含んだ防御機構として働く[33]。貪食機能は、食細胞が脊椎動物にも無脊椎動物にも存在することから、おそらく宿主防御の最も古い形を示したものであろう[34]。
好中球とマクロファージは侵入病原体を捜して体内全体を移動している食細胞である[35]。マクロファージ上や好中球上のレセプターにバクテリア分子が結合するとバクテリアの貪食や破壊が始まる。
好中球
通常血流中に存在し、食細胞の中で最も数が多い。通常全循環白血球の50%?60%を占める[36]。特に細菌感染の結果生じる炎症急性期には好中球は走化性というプロセスによって炎症部位に移動する。大抵の場合、感染の生じた現場に最初に到着する細胞である。
マクロファージ(大食細胞)
組織中に存在し、侵入した感染源を追って組織や細胞間スペースにも入れる。多才な細胞で、酵素、補体タンパク質、それにインターロイキン-1のような制御因子など広範囲にわたる化学物質を産生する[37]。マクロファージは死体・ゴミあさりの(スカベンジャー)細胞としても働き、体内の役に立たなくなった細胞、およびその他の崩壊沈着物の除去および適応免疫系を活性化する抗原提示細胞として働く[5]。
樹状細胞(DC; dendritic cell)
外界に接する組織の中に存在する食細胞である。したがってこの細胞は主に皮膚、鼻、肺、胃、腸に存在する[38]。この細胞の名称は神経細胞の樹状突起(dendrite)に似ていることから付けられた。神経細胞も樹状細胞も樹状突起を多数もっているが、神経機能には関与していない。樹状細胞は適応免疫系の鍵となるT細胞に抗原を提示するので、自然免疫と獲得免疫の橋渡しをしている[38]。
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)
腫瘍細胞やウイルス感染症腺細胞を非特異的に攻撃して破壊する[39](ちなみにこれは炎症反応には含まない)。
好塩基球と好酸球
好中球と関係があり、寄生虫に対する防御の際に化学メディエータを分泌する。また、喘息などのアレルギーにも関与する[40]。
肥満細胞(マスト細胞)
結合組織や粘膜に存在し、感染防御や傷の回復、炎症応答を制御する[41]。この細胞は最も多くはアレルギーとアナフィラキシーに関与する[36]。
特異的・適応的な獲得免疫「獲得免疫系」も参照
獲得免疫系は初期の脊椎動物に進化し、より強力な免疫反応を起こし、個々の病原体が特定の型であることを示す抗原によって判別し記憶(免疫記憶)する機構である[42]。応答は抗原特異的であり、抗原提示と呼ばれるプロセスの間に特異的な非自己の抗原であるという認識が行われる必要がある。抗原特異性の認識によって、特定の病原体あるいは特定の病原体感染細胞に対して調整された応答の発動を可能とする。このような調整された応答を開始する能力は体内の記憶細胞によって保持される。もし病原体が1回以上生体に感染するなら、このような特定の記憶細胞が使われて即座に病原体は排除される。 獲得免疫に関与する細胞は特定の種類の白血球で、リンパ球と呼ばれている。その主要なタイプはB細胞とT細胞であり、骨髄の中の造血幹細胞に由来する[28]。B細胞は体液性免疫反応に関与し、T細胞は細胞性免疫応答に関与する。B細胞とT細胞は、特定の目標を認識する受容体分子をもっている。
リンパ球