白血球はどの器官や組織とも結合しているのではなく、単一の細胞からなる器官であり、独立した単細胞生物のように行動する、自然免疫系の右腕である[3]。自然免疫系の白血球には、肥満細胞、好酸球、好塩基球、ナチュラルキラー細胞、食細胞(マクロファージ、好中球、樹状細胞)や感染誘引可能性病原体を識別する機能がある。これらの細胞は病原体を認識し排除するが、微生物を呑み込んで殺するか、より大きな病原体に対しては接触して攻撃する[28]。自然免疫は感染の最初の段階で働くが、多くの感染源は自然免疫を回避するための戦略を発達させてきた。自然免疫系細胞は更に特異的適応的な獲得免疫に於いては重要なメディエーターであり[5]、抗原提示として知られる過程を通すことでそれを活性化することが出来る。
貪食機能は細胞性自然免疫で重要な役割をもっており、病原体や粒状物を呑み込み食す食細胞と呼ばれる細胞によって行われる。食細胞は感染源や粒子を貪食、すなわち食うことによって排除する役割を担う。食細胞は普段は体内を巡回して病原体を探しているが、サイトカインによって特定の部位に誘導される[3]。病原体は一旦食細胞に呑み込まれるとファーゴソームと呼ばれる細胞内小胞によって捕らえられ、続いてリソソームと呼ばれる今一つ別の小胞と融合してファーゴリソソームを形成する。病原体は消化酵素によって、あるいは呼吸バーストに続くフリーラジカルのファーゴリソソームへの放出によって殺滅される[31][32]。貪食機能は栄養素獲得のために進化したが、食細胞ではこの役割が拡張されて病原体の貪食を含んだ防御機構として働く[33]。貪食機能は、食細胞が脊椎動物にも無脊椎動物にも存在することから、おそらく宿主防御の最も古い形を示したものであろう[34]。
好中球とマクロファージは侵入病原体を捜して体内全体を移動している食細胞である[35]。マクロファージ上や好中球上のレセプターにバクテリア分子が結合するとバクテリアの貪食や破壊が始まる。
好中球
通常血流中に存在し、食細胞の中で最も数が多い。通常全循環白血球の50%?60%を占める[36]。特に細菌感染の結果生じる炎症急性期には好中球は走化性というプロセスによって炎症部位に移動する。大抵の場合、感染の生じた現場に最初に到着する細胞である。
マクロファージ(大食細胞)
組織中に存在し、侵入した感染源を追って組織や細胞間スペースにも入れる。多才な細胞で、酵素、補体タンパク質、それにインターロイキン-1のような制御因子など広範囲にわたる化学物質を産生する[37]。マクロファージは死体・ゴミあさりの(スカベンジャー)細胞としても働き、体内の役に立たなくなった細胞、およびその他の崩壊沈着物の除去および適応免疫系を活性化する抗原提示細胞として働く[5]。
樹状細胞(DC; dendritic cell)
外界に接する組織の中に存在する食細胞である。したがってこの細胞は主に皮膚、鼻、肺、胃、腸に存在する[38]。この細胞の名称は神経細胞の樹状突起(dendrite)に似ていることから付けられた。神経細胞も樹状細胞も樹状突起を多数もっているが、神経機能には関与していない。樹状細胞は適応免疫系の鍵となるT細胞に抗原を提示するので、自然免疫と獲得免疫の橋渡しをしている[38]。
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)
腫瘍細胞やウイルス感染症腺細胞を非特異的に攻撃して破壊する[39](ちなみにこれは炎症反応には含まない)。
好塩基球と好酸球
好中球と関係があり、寄生虫に対する防御の際に化学メディエータを分泌する。