免疫系は、特異性、誘導性、および適応性を取り込んできわめて効果的な構造をもつに至っている。しかし宿主防御に失敗することがあり、これは3つの大まかなカテゴリーに分けられる。免疫不全、自己免疫、過敏症、である。 免疫不全は免疫系の1つないしそれ以上の要素が機能しない場合に起きる。免疫系が病原体に対して応答する能力は、若くても年を取っても減退する。免疫応答は50歳位から免疫老化のために衰え始める[62][63]。先進国では肥満、アルコール依存症、薬物使用は免疫機能を弱める共通の原因である[63]。しかし開発途上国では栄養不良が免疫不全の最も多く見られる原因である[63]。十分なタンパク質を取らないダイエットは細胞性免疫や補体活性、食細胞機能、IgA抗体濃度、サイトカイン産生を損なう。栄養素であるイオン、銅、亜鉛、セレン、ビタミンA、C、E、B6、葉酸(ビタミンB9)が1つでも欠乏したら免疫応答は減退する[63]。加えて若いときに胸腺を遺伝的突然変異の原因か手術による摘出で失うと、重症の免疫不全を起こし、感染性が非常に高くなる[64]。 免疫不全は遺伝でも後天的でも生じうる[3]。慢性肉芽腫症では、食細胞の病原体破壊力が弱いということがあるが、遺伝性または先天性の免疫不全の例であるAIDSやいくつかのがんの型は、後天的な免疫不全を起こす[65][66]。 ある種のウイルスに感染することによって免疫機能が破壊され、様々な感染症・合併症を引き起こす病気が後天性免疫不全症候群(AIDS、エイズ)である。またこのウイルスをヒト免疫不全ウイルス (HIV) と呼ぶ。先天的に免疫機能が破綻しており、様々な感染症などを引き起こす病気はまとめて原発性免疫不全症候群と呼ばれる。 免疫応答の亢進は特に自己免疫病のような免疫不全の一方の極端をなす。ここでは免疫系は、自己と非自己を的確に区別できないで、自己の身体部分を攻撃する。普通の状態では多くのT細胞を抗体は自己のペプチドと反応する[67]。特別な細胞(胸腺および骨髄に潜む)の機能の1つに若いリンパ球に体内で産生されている自己抗原を提示し、自己抗原と認識した細胞を排除して自己免疫を防いでいる[53]。 アレルギー(過敏症)は自己の組織に損傷を与える免疫応答である。クームス分類によると、5つの型に分けられる。 I型アレルギーは即時的な反応あるいはアナフィラキシー反応で、しばしばアレルギーに付随している。症状は穏やかな不快さから死に至るまで幅広い。I型アレルギーはマスト細胞や好塩基球が分泌するIgEが原因である[68]。 II型アレルギーは抗体が自己の細胞の抗原に結合してそれを破壊するようマークを付けることから起こる。これは抗体依存性感染増強(ADE:英: Antibody-dependent enhancement、細胞傷害性過敏)と呼ばれ、IgGやIgM抗体が原因である[68]。免疫複合体(抗原の凝集、補体タンパク質、およびIgGとIgM抗体)が様々な組織で沈着するとIII型アレルギーの反応が引き起こされる[68]。 IV型アレルギーは(細胞媒介性あるいは遅延型アレルギーとしても知られるが)生じるまでに普通は2?3日かかる。IV型の反応は多くの自己免疫病や感染症で見られるが、接触皮膚炎(ツタウルシ)にも見られる場合がある。これらの反応に関与しているのはT細胞、単球およびマクロファージである[68]。 V型アレルギーは機序はII型と同様であるが、刺激性の部分だけが異なる。バセドウ病が代表的な疾患である。 無脊椎動物はリンパ球を生み出していないし、抗体に基づいた体液性反応も生み出していないので多要素からなる適応免疫系は最初の脊椎動物に生じたと思われる[1]。
免疫不全
自己免疫「自己免疫疾患」も参照
過敏症「アレルギー」も参照
他の機構