免疫系
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ヘルパーT細胞によって放出されるサイトカインのシグナルは、マクロファージの微生物殺滅作用と細胞傷害性T細胞や抗体を産生するB細胞の活動を強化する[3]。加えて、ヘルパーT細胞の活性化は、CD40リガンド(別名CD154(英語版))のようなT細胞表面に発現している分子の調整量の上昇を引き起こす。この分子は抗体産生B細胞を活性化するのに必要な代表的な付加的刺激シグナルとして働く[50]
γδT細胞

γδT細胞はCD4+およびCD8+(αβ)T細胞とは対照的に別のT細胞受容体(TCR)をもち、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、およびNK細胞と同じ性質を共有する。γδT細胞から応答を得る条件は完全には解明されていない。他のなじみのない変異型TCRをもったT細胞サブセット、例えばCD1d-拘束性ナチュラルキラーT細胞などと同様に、自然免疫と適応免疫の間を広くまたいでいる[51]。一方でγδT細胞は、この細胞はTCR遺伝子を再編成して受容体の多様性を生じること、そして記憶表現型も発達させることができることから、適応免疫の要素である。他方様々なサブセットは、制限されたTCRあるいはNK受容体が受容体のパターン認識に用いられることがあるため、自然免疫系の一部分をなす。例えばきわめて多数のヒトVγ9/Vδ2 T細胞は微生物によって産生される共通の分子に対して数時間以内に応答する。さらに高度に制限されたVδ1+T細胞は上皮細胞が受けるストレスに応答するようだ[52]
B細胞と抗体抗体は2本の重鎖と2本の軽鎖から構成される。ユニークな可変部(可変領域)は対応する抗原を認識することが出来る。また、マクロファージは定常部に対する受容体を持っている[44]

1個のB細胞は表面上の抗体が特定の外来抗原に結合すると病原体を認識することになる[53]。この抗原/抗体複合体はB細胞に取り込まれタンパク質分解プロセスによってペプチドにされる。B細胞は次にこれら抗原ペプチドを特異的なMHCクラスII分子上に提示する。MHCと抗原の複合体はその抗原と特異的に結合するヘルパーT細胞を引き寄せ、そのヘルパーT細胞がB細胞を活性化するリンフォカインを放出する[54]。B細胞が活性化されて増殖のための分裂を始めるとその子孫(形質細胞)はこの抗原を認識する特異的な抗体コピーを何百万分子も生産、分泌する。

これらの抗体は血管の血漿やリンパ管に入って循環する。抗体の実体は免疫グロブリンとよばれるタンパク質で、抗原を発現している細菌などの病原体に特異的に結合し、補体系の活性化あるいは食細胞による取り込みと破壊が起きるようマークを付ける。これをオプソニン化という。抗体は侵入病原体に対し、細菌の毒素に結合したりウイルスや細菌が細胞に感染する際に利用する受容体に妨害作用を及ぼして、直接中和[要曖昧さ回避]することもできる[55]
代替的適応免疫系

適応免疫の古典的な分子(例えば抗体T細胞受容体)は顎をもった脊椎動物のみに存在するにも拘わらず、ヤツメウナギメクラウナギのような原始的な無顎脊椎動物には独特なリンパ球由来の分子が発見されている。これらの動物には変異性リンパ球受容体(VLRs)と呼ばれる大きな一群の分子が備わり、顎をもった脊椎動物の抗原受容体のようにごくわずかな数(1つか2つ)の遺伝子のみから産生される。これらの分子は抗体と同じやり方で病原体抗原に抗体と同じ程度の特異性をもって結合すると信じられている[56]
免疫記憶記憶細胞は同じ抗原が体内に侵入したときには、一次応答よりも抗体を迅速かつ大量に長期間に産生する。この反応は二次応答と呼ばれる。詳細は「免疫記憶」を参照

B細胞T細胞が活性化されて複製を始めるとそれらの子孫細胞の中には長期間体内に残存する記憶細胞になるものがあるだろう。動物の生涯にわたってこれらの記憶細胞は各々の特異的な病原体に出合った記憶を保持し、病原体が再び感知されると強力な応答を発動できる。これは、個体の生涯にわたって病原体による感染に適応して起こり、免疫系が将来の接触に対して準備するものであるから、「適応」であると言える。免疫記憶は短期間の受動的な記憶の形か長期間にわたる能動的な記憶の形かのいずれかで成立しうる。
受動的な記憶

受動免疫 passive immunity は、抗体細胞傷害性T細胞(CTL)といった既存の作用物質を投与して起こす免疫反応。

新生児はあらかじめ微生物に接触することはなく特に感染を受けやすい。そこで母親からいくつかの階層からなる受動防御が提供される。妊娠中抗体の特別の型IgG胎盤を経由して直接母親から胎児に輸送される。したがってヒト新生児は誕生時すでに高レベルの母親と同じ抗原特異性の幅を持った抗体をもっている[57]母乳も抗体をもっており赤ん坊のに移動し、新生児が自分自身の抗体を合成できるまで、細菌感染を防御する[58]。これは受動免疫であって、胎児は実際記憶細胞あるいは抗体を作らずそれらを母親から借用するだけであるから、この受動免疫は普通短期間のもので、数日から数カ月しか続かない。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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