免疫系
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サイトカインの種類には白血球間の情報伝達に関与するインターロイキン走化性を促してマクロファージなどを呼び寄せるケモカイン、宿主細胞のタンパク質合成を停止させるようなウイルスに対して、抗ウイルス活性をもったインターフェロンなどがある[24]。増殖因子や細胞毒性因子も分泌される場合がある。これらのサイトカインや他の化学物質は免疫細胞を感染部位に動員し、病原体を排除してから損傷を受けたあらゆる組織の修復を促す[25]
補体系詳細は「補体」を参照

補体系は、外来細胞の表面に攻撃を加える、或は他の細胞によって破壊されるよう指標を付けるための抗体能力を補助(補う)する生化学的カスケード(連鎖)である。補体とは、抗体の機能を補助、あるいは補完するたんぱく質である。20以上のタンパク質が関与し、抗体による病原体殺滅を補 強する能力をもつ、という意味で名づけられた。補体は自然免疫応答において主要な体液性要素をなす[26][27]。補体系をもつ種は数多く、哺乳類に限らず、植物魚類無脊椎動物の一部など、ある程度原始的な生物でも持ち合わせている[28]

ヒトではこの応答はこれら微生物に付着した抗体に補体が結合することにより、あるいは微生物の表面の炭水化物に補体タンパク質が結合することにより活性化される。この認識シグナルが、速やかな殺滅応答を発動する[29]。応答のスピードを決めるのは引き続いて起こる補体分子のタンパク質分解の活性化によって起こるシグナル増強の程度である。多くの補体タンパク質はタンパク質分解的切断によって活性化されるとプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)に成る。補体タンパク質が微生物に付着した後、補体自身のタンパク質分解酵素活性が発現し、続いて他の補体タンパク質分解酵素が活性化され、これが連続して起こる。これは触媒反応カスケードを引き起こし、最初のシグナルを正のフィードバックでコントロールしながら増強するものである[30]。補体がこうしてまとわりつくことによって細胞膜は破壊され病原体は殺される[26]。補体の活性化によりしばしば感染細胞の原形質破壊が起こり、それによる感染細胞の細胞溶解、病原体の死を引き起こす。補体機構の最終産物C5b6789は別名細胞膜障害性複合体とも言い、感染した細胞や感染源の細胞膜を破壊することで、サイトリシスや溶菌を起こす。これを免疫溶菌現象、あるいは免疫溶菌反応といい、細菌への防御においては好中球の貪食と並び重要な機構である。カスケードはペプチドを産生して免疫細胞を誘引し、血管の透過性を更新し、病原体の表面をオプソニン化(コート)して破壊できるようマークを付ける。補体系は病原体表面をオプソニン化(或はコーティング)することで、病原体が他の細胞に破壊されるよう札(タグ,tag)を付け、炎症細胞の回復を誘発し、中和された抗原抗体複合体の残骸を除去する。
細胞による防壁正常なヒトの循環血液の、走査型電子顕微鏡(SEM)画像。赤血球および突起物で覆われでこぼこした少数のリンパ球を含んだ白血球を認め、ほかに単球、好中球、そして多数の小さな板状の血小板を認める。

白血球はどの器官組織とも結合しているのではなく、単一の細胞からなる器官であり、独立した単細胞生物のように行動する、自然免疫系の右腕である[3]。自然免疫系の白血球には、肥満細胞、好酸球、好塩基球、ナチュラルキラー細胞、食細胞(マクロファージ、好中球、樹状細胞)や感染誘引可能性病原体を識別する機能がある。これらの細胞は病原体を認識し排除するが、微生物を呑み込んで殺するか、より大きな病原体に対しては接触して攻撃する[28]。自然免疫は感染の最初の段階で働くが、多くの感染源は自然免疫を回避するための戦略を発達させてきた。自然免疫系細胞は更に特異的適応的な獲得免疫に於いては重要なメディエーターであり[5]抗原提示として知られる過程を通すことでそれを活性化することが出来る。

貪食機能は細胞性自然免疫で重要な役割をもっており、病原体や粒状物を呑み込み食す食細胞と呼ばれる細胞によって行われる。食細胞は感染源や粒子を貪食、すなわち食うことによって排除する役割を担う。食細胞は普段は体内を巡回して病原体を探しているが、サイトカインによって特定の部位に誘導される[3]。病原体は一旦食細胞に呑み込まれるとファーゴソームと呼ばれる細胞内小胞によって捕らえられ、続いてリソソームと呼ばれる今一つ別の小胞と融合してファーゴリソソームを形成する。病原体は消化酵素によって、あるいは呼吸バーストに続くフリーラジカルのファーゴリソソームへの放出によって殺滅される[31][32]。貪食機能は栄養素獲得のために進化したが、食細胞ではこの役割が拡張されて病原体の貪食を含んだ防御機構として働く[33]。貪食機能は、食細胞が脊椎動物にも無脊椎動物にも存在することから、おそらく宿主防御の最も古い形を示したものであろう[34]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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