細菌性の感染症に対してはしばしば抗生物質が用いられるが、大部分の抗生物質は病原体となる細菌と正常な細菌の両方に非特異的に作用するし、カビには効かないので、抗生物質の経口投与によって、真菌を異常に増殖させ、膣カンジダ症のような真菌症を引き起こす場合がある[16]。
自然免疫「自然免疫系」も参照
病原体が上皮での防壁を突破し、微生物や毒性物質が生体内にうまく侵入できると、続いて生体内の自然免疫系(先天性免疫系)と対峙する。これは体液的・化学的・細胞的な防壁による宿主の保護機構である。白血球やリンパ球などの細胞や機構が動員されて宿主を守り、その際に通常は炎症反応が起きる。この自然免疫応答は普通生体が微生物を構造パターン認識受容体で感知するときに発動する。この構造パターンは広い範囲の微生物グループの間で保存されている[17]。あるいは細胞は障害を受けると警戒シグナルを出す。それらの全てではないが多くは病原体を認識する同じ受容体によって感知される[18]。自然免疫系による防御は非特異的であり、病原体に対して包括的な応答を行う[3]。つまり様々な病原体に対して別個に応答するのではなく常に汎用的な方法で対処するがゆえに、効力を発動するまでの時間が短く、いわば常に臨戦態勢にある。反面、獲得免疫系のような免疫記憶が無く、長期にわたって防御する仕組みではない。
自然免疫系は大部分の生物にとって宿主防御の主要な系であり[4]、植物・菌類・昆虫・多細胞生物(哺乳類などの高等脊椎動物を除く)においては主要な防御システムである。原始的な生命も持っており、進化的に古い防御方法であると考えられている。また、Toll様受容体、Nodタンパク質、RIG-I(病原微生物に対するセンサー)などの研究が20世紀末から進展し、自然免疫が高等動物にも存在するのみならず、獲得免疫が成立する前提として重要なメカニズムである(たとえばマクロファージや樹状細胞が病原体の存在により直接活性化される)ことが明らかとなった。
体液性すなわち化学的防壁
炎症[20]、疼痛、熱感[21]、腫脹の4つで、組織に流入する血液の増加によって起こされる。
炎症は傷害や感染を受けた細胞が分泌するエイコサノイドとサイトカインと呼ばれる特定の化学伝達物質群などの化学的因子によって起こり、感染に対する免疫機構の正常な反応である。エイコサノイドにはプロスタグランジンが含まれ、この物質は炎症に関係した場合、発熱と血管拡張を起こす。また同じくエイコサノイドに含まれるロイコトリエンはある種の白血球(リンパ球)に作用する[22][23]。サイトカインの種類には白血球間の情報伝達に関与するインターロイキン、走化性を促してマクロファージなどを呼び寄せるケモカイン、宿主細胞のタンパク質合成を停止させるようなウイルスに対して、抗ウイルス活性をもったインターフェロンなどがある[24]。増殖因子や細胞毒性因子も分泌される場合がある。これらのサイトカインや他の化学物質は免疫細胞を感染部位に動員し、病原体を排除してから損傷を受けたあらゆる組織の修復を促す[25]。
補体系詳細は「補体」を参照
補体系は、外来細胞の表面に攻撃を加える、或は他の細胞によって破壊されるよう指標を付けるための抗体能力を補助(補う)する生化学的カスケード(連鎖)である。補体とは、抗体の機能を補助、あるいは補完するたんぱく質である。