先カンブリア時代(せんカンブリアじだい、Precambrian (age))とは、地球が誕生した約46億年前以降、肉眼で見える大きさで硬い殻を持った生物の化石が初めて産出する5億4,100万年前以前の期間(約40億年)を指す地質時代であり、冥王代、太古代、原生代の三つに分け、これらの時代区分は生物の進化史を元にしている。
かつて古生代最初のカンブリア紀に先立つ期間は一括して先カンブリア紀 (Precambrian period)と呼ばれていた。その後研究が進み累代および代が設定されたため、現在では使われなくなった。
先カンブリア代 (Precambrian eon(s)) とも呼ばれる。また、古生代、中生代、新生代を表す顕生代に対して、隠生代 [注釈 1](Cryptozoic eon(s)) と呼ぶ。
先カンブリア時代に関しては詳しいことがあまり分かっておらず、現在知られていることもほとんどはここ数十年で解明されてきたことである。
名称地球時計
年代測定の手段が化石の比較による相対年代しかなかった時代には、明瞭な化石が出る最古の時代であるカンブリア紀以前は、年代測定の手段がなく、地質時代を区分することが出来なかった。そのため、先カンブリア時代として一括して扱われた。
隠生代という名称は、大型生物などの化石がほとんど見つからないことから、先カンブリア時代終了から現在までの、化石が大量に見つかる時代である顕生代と対照して名付けられた。
時代区分詳細は「地質時代」を参照
先カンブリア時代は、累代・代・紀・世といった通常の階層的な地質時代区分とは少々性質が異なる。
国際層序委員会 (ICS) などによる標準的な時代区分では、先カンブリア時代は冥王代・太古代・原生代の3つの累代からなる。地球史を構成する4つの累代のうち3つが先カンブリア時代に属することになる。なお4つ目の累代は、古生代・中生代・新生代の全てが含まれる顕生代である。
先カンブリア時代は、他の地質時代のような、地球史をいくつかに分けた1つというよりは、地球史の大部分であるといえる。
先カンブリア時代は冥王代、太古代、原生代の地球誕生からカンブリア紀の始まる5.41億年前までの期間である。 地球は約46億年前に、太陽の周囲を廻る軌道にあった天体、すなわちミニ惑星が合体して形成されたとされる。小さな塵などが合体して火星ほどの大きさになり、それがさらに10個ほど衝突して現在の地球となった。このうち最後の衝突はジャイアント・インパクトと呼ばれ、月ができる原因になったとされる。原始地球の表面は岩石が溶けたマグマの海
冥王代
太古代
原生代
顕生代
古生代
中生代
新生代
先カンブリア時代の地球
40億年前から38億年前の期間に、それまで減少傾向だった隕石の衝突が再び急激に増加したことが月のクレーターの調査から明らかになり、隕石重爆撃期と呼ばれるようになってきたが、なぜ太陽系ができてから6億年も経った時期に隕石の衝突が増えたのか、原因はまだ分かっていない。
生命全生物の系統樹の例。赤は古細菌、緑は真核生物、青及び紫は細菌。
生命がいつ誕生したかについては諸説あるが、グリーンランドのイスア地方で、38億年前の岩石に生命由来のものと思われる炭素の層が見つかっている[1]。35億年前の細菌類の化石が、南アフリカのオルフェルワクト層のチャートから発見されている[2]。
西オーストラリアビルバラ地域では保存状態が良好な34億6,000万年前以前の原核生物の化石(ワラウーナチャートとエイベックスチャートという岩石から出たもの)が発見されている。また、同時期の地層からメタン生成の証拠が出ており[3]、メタン菌はユーリ古細菌の特定クレードに集中することから、この時期既に生物の分化が進んでいた可能性がある[4]。
生命が発生したのは早ければ43億年前であるとする研究者もいる。このように先カンブリア時代を通して、原始的生命体が生きていた確実な証拠が見つかっている。
およそ27億年前頃までには、藍色細菌が現れた。藍色細菌が光合成を行う際に不必要なものとして廃棄された物質が酸素であり、これらの生物が光合成を行い続けるにつれて、わずかにではあるが酸素の濃度は少しずつあがっていった。酸素は後に、他の生命が生息していくための一つのエネルギー源にもなる物質として利用されることになる。系統解析からは、太古代の終わりには細菌と古細菌の多くの門が出そろったと推定されている[4]。
22億年前前後には大酸化イベント(w:en:Great Oxygenation Event)が進行した。酸素を必要としない嫌気呼吸する嫌気性細菌と好気性細菌が入れ替わったと推定され、地球生命史における「生物の最初の大絶滅と棲み分け」であったと考えられる[5]。