先カンブリア時代
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また、同時期の地層からメタン生成の証拠が出ており[3]メタン菌ユーリ古細菌の特定クレードに集中することから、この時期既に生物の分化が進んでいた可能性がある[4]

生命が発生したのは早ければ43億年前であるとする研究者もいる。このように先カンブリア時代を通して、原始的生命体が生きていた確実な証拠が見つかっている。

およそ27億年前頃までには、藍色細菌が現れた。藍色細菌が光合成を行う際に不必要なものとして廃棄された物質が酸素であり、これらの生物が光合成を行い続けるにつれて、わずかにではあるが酸素の濃度は少しずつあがっていった。酸素は後に、他の生命が生息していくための一つのエネルギー源にもなる物質として利用されることになる。系統解析からは、太古代の終わりには細菌古細菌の多くの門が出そろったと推定されている[4]

22億年前前後には大酸化イベント(w:en:Great Oxygenation Event)が進行した。酸素を必要としない嫌気呼吸する嫌気性細菌と好気性細菌が入れ替わったと推定され、地球生命史における「生物の最初の大絶滅と棲み分け」であったと考えられる[5]

19億年前になると、カナダ・スペリオル湖北岸のガンフリント層(主にチャートの地層)から多くの微化石が産出するようになる。それらは球状・繊維状の形態をした細菌類である[2]

真核生物の出現は不確かだが、21億前までには最初の真核生物が表れたと推定されている[6]。ただし、初期の真核生物の系統の多くは残っておらず、多様化が進んだのは11億年前とする説がある[7]

米国テキサス州インドでの古い不確かな報告以外では、複雑な多細胞生物と考えられる最古の証拠は約6億年前のものである。世界各地の約6億年前から約5億4200万年前にかけての地層から、現在のものとは全く違う無脊椎動物の痕跡が見つかっている。これらはエディアカラ生物群と呼ばれる。先カンブリア時代末期の5億4,400万年前には、異なった形態の生物が出現する。これは「有殻微小動物群」(Small shelly fauna) と呼ばれるが、詳しい事はほとんど分かっていない。この生物群は顕生代の始め、カンブリア紀のごく初期に消滅し、入れ替わるようにして多様な生物群が出現した。これはバージェス動物群と呼ばれるが、この生物群の爆発的な多様化をカンブリア爆発と呼ぶ。

1950年から1980年にかけてソ連や北米の古生物学者たちがトモティアン動物相をカンブリア系基底の堆積物の下から発見した。これらの生物は小さな骨格を持っており、小さな管や円錐の殻からできている。6億年前の動物相であり、エディアカラ動物相と系統的関係がない。しかし、カンブリア系の化石の生物の多くのものの直接の先祖であるらしい。[8]
プレートテクトニクス

先カンブリア時代のプレートテクトニクスの様子は曖昧にしか分かっていない。当初は海ばかりでほとんど陸は無かったと考えられている。プレートが他のプレートの下に沈み込む場所で造山運動が始まり、小さな日本列島のような弧状列島などができ、やがてそれらが拡大、合体して次第に大きな陸塊へと成長していった。約27億年前には、マントル対流が二層対流から一層対流へと変わったことでプレートが大きくなり、次第に大陸が形成されていった。

またこの頃、激しい火山活動により大陸が急成長した。約19億年前には、初めての超大陸であるヌーナ大陸が形成された。これは現在の北アメリカ大陸ほどの大きさだったとされる。この頃、2度目の大陸急成長が起きた。その後の大陸移動の様子は研究者によって大きく意見の食い違いがあり、存在した大陸の名前も確定していない。

超大陸ヌーナが分裂した後、10億年前に超大陸ロディニアが形成され、6億年前に分裂したという説や、10億年前に超大陸パノティアが形成され、それが一旦分裂した後、6億年前に超大陸ロディニアが形成されたという説、さらには15億年前頃にも超大陸が形成されたという説もある。7億年前から5億年前頃には、3度目の大陸急成長期があった。
氷期

この時代には、何度かの氷期があった痕跡が認められる。現在分かっている最古の氷期は、約24億年前から約22億年前の頃のヒューロニアン氷期である。また、8億年前から6億年前にかけては2度の氷期が訪れ、スターティアン (Sturtian) 氷期、ヴァランガー (Varangian) 氷期と言われている。最近では、これらの氷期において、地球が赤道まで氷河に覆われるスノーボールアース(全球凍結)と呼ばれる状態になった可能性が指摘されている。
大気

初期の大気は地球が形成された約46億年ごろからすでにあったとされているが、その他の初期の大気についてはほとんど分かっていない。地球上での酸素の存在が確認されたのは約35億年前であるが、いずれにしろ当時における酸素成分は非常に少なかった。

初期の大気は、水蒸気がおよそ300気圧、二酸化炭素や一酸化炭素が50気圧から100気圧、窒素が1気圧ほどだったと考えられている。しばらくすると水蒸気が凝縮して海が形成され、二酸化炭素が主成分となった。初期の太陽は光度が現在の70%ほどしか無かったが、大量の二酸化炭素の温室効果のため、現在よりもかなり気温は高かった。地表の気温が60を超えていたと考えられる痕跡も残っている。二酸化炭素は海に吸収されたり、炭酸カルシウムとなって沈殿したりして徐々に減少していった。

27億年前にはシアノバクテリアによる光合成が始まり、酸素が大量に作り出されるようになる。生じた酸素は主に海水中のイオンなどと化学反応を起こし、大量の酸化鉄を沈殿させた。現在使われている鉄鉱石マンガンなどの大部分は、この時沈殿した酸化物が隆起して地上に現れたものを掘り出して生産されている。古い岩石には、この時に鉄と酸素が結合して沈殿した証拠である縞状鉄鉱層が大量に含まれている。海水中のイオンをほとんど沈殿させると、酸素は大気中へと放出され、蓄積していった。こうして、現在のように、酸素が大気の主成分の1つとなっていった。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 化石に乏しいことから陰生代と呼ぶ(池谷仙之・北里洋著『地球生物学 ー地球と生命の進化ー』)東京大学出版会 2004年 82ページ)

出典^ Yoko Ohtomo, Takeshi Kakegawa, Akizumi Ishida, Toshiro Nagase, Minik T. Rosing (2013). "Evidence for biogenic graphite in early Archaean Isua metasedimentary rocks". Nature Geoscience. 7, 25?28.
^ a b 池谷仙之・北里洋著『地球生物学 ー地球と生命の進化ー』)東京大学出版会 2004年 83ページ
^ Ueno Y, Yamada K, Yoshida N, Maruyama S & Isozaki Y (2006). “Evidence from fluid inclusions for microbial methanogenesis in the early Archaean era”. Nature 440 (7083): 516?519.
^ a b Battistuzzi FU, Hedges SB (2009). "A major clade of prokaryotes with ancient adaptations to life on land". Mol. Biol. Evol. 26 (2): 335?43.
^ 池谷仙之・北里洋著『地球生物学 ー地球と生命の進化ー』東京大学出版会 2004年 84ページ
^ El Albani, Abderrazak; Bengtson, Stefan; Canfield, Donald E.; Bekker, Andrey; Macchiarelli, Reberto; Mazurier, Arnaud; Hammarlund, Emma U.; Boulvais, Philippe et al. (2010). "Large colonial organisms with coordinated growth in oxygenated environments 2.1 Gyr ago". Nature 466 (7302): 100?104.
^ Berney, C., Pawlowski, J., A molecular time-scale for eukaryote evolution recalibrated with the continuous microfossil record. Proc. R. Soc. B 273, 1867-1872 (2006).
^ ピーター・ダグラス・ウォード著、瀬戸口烈司・原田憲一・大野照文訳『生きた化石と大量絶滅 ーメトセラの軌跡ー』青土社 2005年 72ページ

参考文献

池谷仙之・北里洋著『地球生物学 ー地球と生命の進化ー』)東京大学出版会 2004年
ISBN 4-13-062711-2

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