形式論理に基づく現代的な集合論は、(相等関係 = 以外に)一つの述語
(英語版)記号(二項述語 ∈)を含む一階述語論理で記述される[8]。そのような記述法の下で、文「x は M の元である」は x ∈ M {\displaystyle x\in M}
という式に翻訳される。
ハウスドルフは、このような記述自身は元からある概念を元にして定義を構成するような手法でないことを注意している(Hausdorff 1957, p. 11):≪ on pourra objecter qu'on a defini idem per idem voire obscurum per obscurius. Il faut considerer qu'il n'y a pas la une definition mais un procede d'exposition, une reference a un concept primitif familier a tous (...) ≫[9] 先に与えた定義に従って記述された式 x ∈ M {\displaystyle x\in M} において、文字 M が表すものは集合である。 素朴集合論においてよく知られた逆理が導かれるなどの理由により、元 x の属する対象 M は集合でなく類(クラス)と考えたほうが有効な場面がある。例えば圏論では圏に属する元(圏論の文脈ではこれを「対象」と呼ぶ)の全体は類と考える。 ZF(C)集合論においてよく用いられる類の定式化は、単項述語そのものを類と見做すことである。つまり、「x が類 M の元である」とは単に述語 P を用いた式 P(x) のことに他ならない。 最もよく用いられる ZFC 集合論では全ての元がそれ自身集合として実現されるが、別の集合論では必ずしもそうではない。集合の元であって、かつそれ自身は集合として実現されないような元を原子 (atom) あるいは urelement
集合と類
元素
そのような場合においては、必ずしも集合でないような対象に対しても、考えている数学的体系に属する対象であることを以って「元」と呼ぶ方が自然である。数、点、函数など(これらは集合として実現できる)と言った従来の数学的体系の殆どに加えて、星、分子、カエルなどもその体系における「元」ということになる[10]。 代数系の研究においては、その代数的構造に特徴的な性質を持つ代表的な元に特定の名前を付けるのが有用である。例えば、単位元、可逆元、吸収元など。
代数系の特定の元
関連項目
包含関係
注釈[脚注の使い方]^ これは「である」に相当するギリシャ語の動詞 ?στ? に現れる最初の文字 ε に由来するが[3]、 ϵ {\displaystyle \epsilon } や ε {\displaystyle \varepsilon } とは字形が異なる[4]。
^ 「含む」「含まれる」などの語は集合の包含関係などにも用いるため紛らわしい(赤摂也は部分集合として含む、含まれるという代わりに「包む」「包まれる」とすることを提唱した[5])。包含関係は帰属関係を用いて 「集合 A が集合 B に含まれる」 :⇔ 「A の任意の元が B の元として属す」 と定めることができる。
^ が、特定の集合からなる部分類の上に限れば推移的となり得る。よく知られる例としては順序数全体の成す類がある。
^ 少なくとも、 {1, 2} ≠ 1, {1, 2} ≠ 2, {1, 2} ≠ 3, {3} ≠ 1, {3} ≠ 2, {3} ≠ 3 などが証明できる。
出典^ 木貞治『数の概念』岩波書店、1949年8月20日。
^ Hans Freudenthal, ≪ Notation mathematique ≫, Dictionnaire des mathematiques ? fondements, probabilites, applications, Encyclopadia Universalis et Albin Michel, Paris 1998.
^ 山下正男『論理学史』岩波書店〈岩波全書〉、1983年、102頁。
^ Toth, Gabor (2021). Elements of Mathematics
^ 松坂和夫『集合・位相入門』岩波書店、1968年。ISBN 978-4000054249。
^ L. シュヴァルツ 著、齋藤正彦 訳『解析学 1(集合・位相)』東京図書、1970年、1頁。全国書誌番号:69022664。
^ (de) Georg Cantor, Beitrage zur Begrundung der transfiniten Mengenlehre, Leipzig, Teubner, 1894-1895, page 481 [ ⇒Lire en ligne sur Gallica (page consultee le 14 avril 2009)]