元老院_(ローマ)
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復元された議事堂。奥に議長の座る台が見える

元老院(げんろういん、ラテン語: Sen?tus、セナートゥス)は、古代ローマの統治機関。ラテン語で老人を表わす「senex」からきており、氏族の長が集まることから貴族の代表ともいえる[1]共和政ローマ時代には、事実上の最高意志決定機関であった[2]
王政時代『ロムルスとレムスジュリオ・ロマーノ、ヴェンツェスラウス・ホラー画(1652年メトロポリタン美術館.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}こうして力の面での心配がなくなると、次にロムルスは力に思慮を与えた。すなわち、一〇〇人の元老院議員を選出したのである。・・・彼らは敬意を込めて父たち(パトレース)と呼ばれ、彼らの子孫もパトリキイーと呼ばれることになった。—ティトゥス・リウィウス、『ローマ建国史』1.8.7(岩谷智訳)[3]

伝承によれば、王政ローマの初代ロムルス王が、諸制度を整えたとき、元老院を創設したとされ[4]、ロムルスが消えた後、次の王が決まるまでの1年間、議員の中から順番にインテルレクス(中間王)を立ててローマを支配し、次の王を民衆が選ぶことにしたが、その決定には元老院の承認が必要であることを決議したという[5]アルバ・ロンガを滅ぼした、3代目トゥッルス・ホスティリウス王が議事堂(クリア・ホスティリア)を建設し[6]、5代目タルクィニウス・プリスクス王が、自らの王位安定のため、100人の議員を追加したとされる[7]
共和政時代セプティミウス・セウェルスの凱旋門に刻まれたSPQR

王を追放し、共和政を開始した初代コンスル(執政官)ルキウス・ユニウス・ブルトゥスは、王に殺されて減少していた議員を、エクィテス(騎兵ケントゥリア)から補充して計300人にしたとされる[8]。共和政ローマの体制は、元老院、政務官民会の三つで構成されていたと言ってよく[9]、元老院には法的な決定権はなく、政務官の諮問機関という形を取ってはいたが、政務官は元老院を無視することは出来ず、また、民会に提案される法案は、元老院による承認を必要とし、国家の重要案件を審議する唯一の機関であったため、他の二つよりも上位にあったと言える[2]。共和政時代、ローマは自分たちの国家をレス・プブリカ(公共のもの)、もしくはSPQR(ローマの元老院と市民)を使って表わしており、国家の要素として市民と並べて元老院を使っていることから、彼らの構成員である貴族を市民から一段上のものと見做していたのだろう[10]

最初、民会での決議には、決議後に元老院による承認(auctoritas patrum)がなければ法的な実効性が認められなかったが、紀元前339年のプブリリウス法によって、プレプス民会決議が全市民を拘束するようになり、それと同時に民会による立法に、紀元前3世紀のいずれかに成立したマエニウス法によって選挙結果に、事前に既に承認が与えられているという形になった[11]。市民による決議だけでは法的に不完全で、元老院議員がそれの後見人として承認を与えて完全なものとする、という意味だと考えられている[12]

慣習から定員は300名で、最初はインペリウム(命令権)を付与されるコンスルとプラエトル(法務官)の経験者で構成されており、紀元前3世紀末からアエディリス・クルリス(上級按察官)の、紀元前2世紀末からはアエディリス・プレビス(平民按察官)とトリブヌス・プレビス(護民官)の経験者が加わり、ケンソル(監察官)によって選別(レクティオ・セナトゥス)されていた[13]

元老院は、共和政発足時からその中心的な存在ではあったが、紀元前5世紀から4世紀にかけての身分闘争の結果、パトリキ(伝統的貴族)による支配から、プレプス(平民)も取り込んだノビレス(新貴族)による寡頭政支配へと推移するに伴い、政務官経験者を元老院議員とする仕組みが出来上がっていったと考えられている[14]紀元前4世紀末に成立したと考えられているオウィニウス法では、「誰であれ最良の者(optimus quisque)」を元老院に登録すべしとされ、この最良の者というのが、政務官経験者であると見做されており、倫理的な意味でも最良の者が選ばれていた、とも受け取れる[15]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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