萩原健一はスポーツライターの赤坂英一との対談(青春のバイブル「アニキ?」と「アキラ!」の時代『傷だらけの天使』を語ろう 週刊現代連載『熱闘スタジアム』第11回 2012.05.03)で「修と亨って本当は在日朝鮮人という設定なんです。市川(森一)さんとそう話し合っていた。修は中卒で、亨は中学も卒業してない。だけど、在日という設定は放送段階では通らなかった。今では韓流ドラマとK-POPが大流行して、広く親しまれているけれど、あの頃は在日の人への偏見があり、ドラマで触れることはタブーでした。だからこそ、やりたかったんだけど、日テレは『それは、ちょっと・・・・・・』と繰り返すばかり。この設定が通らなかったとき、一度は市川さんとの間でやめようと話しました。それじゃあ、あのドラマはできないと思うほど、あの設定にはこだわりがありましたから」と語り「市川さんは最後まで隠された設定をふまえて書いたんですか?」と赤坂が問うと「そうです。豊さんは知らなかったかもしれないけれど」と答えている。 矢作俊彦が萩原、市川両者に許可を得て著作された小説版。最終回から30年後ホームレスとなった修を描き、ドラマや俳優陣の経歴を知っていなければよくわからない小ネタ描写が散りばめられている。2008年6月発行。 最終回後、修は東東京市(ひがしとうきょうし)[23] でホームレス仲間と賭けゲートボールでその日の銭をもうけていた。ある日、仲間の1人が軽口で修を名乗ったことで謎の集団からリンチを受けて死亡した。修は事の真相を突き止めようと亨との別れ以降足を踏み入れなかった新宿へ出向く。
傷だらけの天使 魔都に天使のハンマーを
あらすじ
登場人物
木暮修(こぐれ おさむ)
夢の島を去った後、アジア大陸を放浪、日本に戻りある下町豆腐屋の婿養子として隠遁生活の末、ブルーシート生活。健太が子供の頃に描いた自分の絵が唯一の宝物で、亨を死に追いやったことで罪の意識に苛まれている。漢字が読めずそれが元で1つの事実に遠回りになっている。性格が30年前と変わっておらず、辰巳いわく「無知、無学を誇りと思っている時代遅れ」。
滝伸次(たき しんじ)
通称、シャークショ。ホームレスの更生を担当する「市民の幸福生きがい課」の公務員。修に復帰を呼びかける内に惚れこみ事件の捜査に付き合う。頭は働くが緑のミッフィーの財布を持ち歩きアニメヲタクと馬鹿にされる。ミスで自身のブログに顔を隠さず修を載せてしまったことが事件の遠因になる。解説によると草g剛をイメージして作られたキャラクターだという。
辰巳五郎(たつみ ごろう)
秘書。なんの因果か再び綾部の元で働いている。かつての面影が全く残らないほど顔を全面整形し、声とカツラ以外では見分けがつかない。修が心底嫌っており、彼が生かそうと言うと「殺せ!」と叫んでしまう。
綾部貴子(あやべ たかこ)
かつての修の上司。上述の事件のほとぼりが冷めると日本に戻りM&Aで次々と企業を買収し、六本木ヒルズにオフィスを構えるまでになった。齢80近くになったにもかかわらず時間に追われるスケジュールをこなす、取引先に対して気を使い腰が低くなる、高級品自慢をするようになり昔は辰巳いわく「暇つぶしで仕事をしている」というミステリアスで過剰なまでに高いプライドを持った女性から、ただのカリスマ経営者となってしまい修を失望させた。
乾亨(いぬい あきら)
修の回想や仮想世界の中でたびたび登場する。
健太(けんた)
修の息子。妻方の両親が亡くなり現在は綾部の庇護を受け立派な青年に育った。最終回で別れも告げず日本を去り自分よりいつまでも死んだ亨の事ばかり気にかけている父を深く恨んでいる。
綾部澪(あやべ れい)
DVを振るう父親が嫌いで家出中の綾部の娘。ブラックカードを持ち歩き、彼女が「オサムちゃん」と呼ぶと貴子そっくりでトラウマになるという。ある人の子供を妊娠している。
笠井典子(かさい のりこ)
修から「テンコ」と呼ばれている。エンジェルビル大家の孫娘。アニメーターを目指し専門学校に通っていたが中退し、プログラマーとして働き「ノエ」という名前でバーチャルネットアイドル活動もしている。子供の頃は親の真似で「オサム、アキラ! 家賃払え!」と言っていた。
藤山田(ふじやまだ)
嘗ての海津の部下で警部補。亨の殺人死体遺棄容疑で修を逮捕し、今までの綾部の犯罪を吐かせようとしているが、成果ばかり追いかける警察自体にも少々嫌気が刺している。なお、海津は辰巳の取調べ中に捜査線上に名前があがってしまい、事件を隠蔽するため警察が定年退職させた。
石さん、長さん、山さん
賭けゲートボールチーム『ソルジャーブルー』の仲間。絶対に勝てると踏んだチームに賭け試合を挑み未だ無敗。
ドーゾ
『ソルジャーブルー』メンバーで今回の事件の被害者。社会人時代は「デーブ中尾」という名前でバンドのボーカルを務めたが楽器が弾けず、自分が歌わなかった歌がヒットした一発屋だったため捨てられた。
藤堂(とうどう)
通称、成城の老人(成城さん)。ソルジャーブルーの一員で練習熱心だが実力は下手の横好きで、老人会からハブられていた所を修達に出会いゲートボールのルールを教える。彼らが社会的信用や貸し用具調達のために参加させているパトロン的存在。
温水(ぬくみず)
巡査。肌が紅く「赤ピーマン」、「赤ラッキョウ」と心の中で呼ばれており女言葉で話す。修らからパチンコの回転表をもらい稼いだことがある。