既述のように準共有について定める264条本文は「この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する」とし、本来であれば債権も「所有権以外の財産権」として準共有が成立するが、金銭の給付などに共有物分割規定(256条以下)を準用するのは煩雑であることなどから、民法は多数当事者の債権債務関係については民法第3編第1章総則第3節
の多数当事者の債権債務の規定(427条以下)を置いている(427条以下の規定は264条但書の「法令に特別の定めがあるとき」にあたり優先的に適用される)[7]。債権の移転原因には次のようなものがある[8]。
契約による移転
債権譲渡(営業譲渡および事業譲渡による場合を含む。)歴史的には、債権譲渡(債権者の変更)は債権の本質に反するという考え方も根強く存在していたものの、近代以降においては、債権譲渡自由の原則が強調されるようになった。日本においても、債権の自由譲渡を認めない慣例が存在したとされ、当初は債権譲渡自由の原則に対する抵抗が強かったものの(民法典論争)、特約により譲渡性を排除できる規定を設けるという形で妥協がなされ、現在に受け継がれている。現在の日本民法においては、民法第3編第1章総則第4節
なお、債権者を交替させるものとして、債権者の交替による更改があるがこの場合には債権の同一性が失われる[8]。 債権の消滅原因には次のようなものがある[9][10]。
債権の消滅
目的消滅による債権の消滅
目的到達による債権の消滅
弁済弁済(履行)によって債権は消滅する。第三者弁済、担保権実行、強制執行なども含め、全て目的到達として債権は消滅する。
代物弁済債務者が債権者の承諾を得てその負担する本来の給付に代えて他の給付をした場合(代物弁済)には弁済に準じ債権は消滅する(482条
供託債権者が弁済について受領拒絶・受領不能のときは、弁済者は債権者のために弁済の目的物を供託することができ、この場合には弁済に準じ債権は消滅する(494条前段)。なお、弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも供託しうる(494条後段)。
目的到達不能による債権の消滅債務者の責めに帰すべからざる事由による履行不能(危険負担を参照)がこれにあたる。なお、債務者の責めに帰すべき事由による履行不能の場合、債務不履行による損害賠償という形に変わって債権は存続することになり、債権は消滅しない[11]。
目的消滅以外の債権の消滅
相殺二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者はその対当額について相殺によってその債務を消滅させることができる(505条第1項本文)。ただし、債務の性質がこれを許さないときは相殺は認められない(505条第1項但書)。
更改当事者が債務の要素を変更する契約をしたときは旧債権は消滅する(513条第1項)。
免除債権者が債務者に対して債務を免除する意思表示をしたときは債権は消滅する(519条)。
混同債権及び債務が同一人に帰属した場合には債権は消滅する(520条本文)。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは消滅しない(520条但書)。
権利の一般的消滅原因による債権の消滅法律行為の取消し、消滅時効、終期の到来、解除条件の成就、契約の解除、合意解除(反対契約)など権利一般の消滅原因によっても債権は消滅する。
以上の消滅原因のうち弁済(代物弁済、供託)、相殺、更改、免除、混同については民法第3編第1章総則第5節で規定される。
なお、患者への投薬が債権債務の内容となっていた場合に、患者が偶然全快して投薬が必要でなくなったときなどのように、目的到達による債権の消滅とみるべきか目的到達不能による債権の消滅とみるべきか分類が難しい場合もある[10]。