効力が不完全な債権、債務と責任とが分離される特殊な債権の形態も存在する[5]。
自然債務給付保持力のみの債務。自然債務を参照。
責任なき債務給付保持力や訴求力はあるが執行力のない債権。例として強制執行はしないとの内容の特約を付した債権がこれにあたる(大判大15・2・24民集5巻235頁)。
債務なき責任債務はないが自らの財産が債務の引当てとなっている場合。例として物上保証人や抵当不動産の第三取得者がこの場合となる[6]。
債務の種類給付保持力訴求力執行力 債務者の責任財産を保全するため、民法は債権者代位権と詐害行為取消権を認めた。民法第3編第1章総則第2節
通常の債務有有有
責任なき債務有有無
自然債務有無無
債権者代位権と詐害行為取消権
債権者代位権債権者は自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を自ら行使することができる(423条
債権者あるいは債務者は複数である場合もあり、物権における共同所有関係(共有・総有・合有)類似の関係に分析される[7]。
共有的帰属・総有的帰属・合有的帰属
共有的帰属共同所有関係における共有としての形態をとるもので、一個の債権債務に準共有(264条
既述のように準共有について定める264条本文は「この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する」とし、本来であれば債権も「所有権以外の財産権」として準共有が成立するが、金銭の給付などに共有物分割規定(256条以下)を準用するのは煩雑であることなどから、民法は多数当事者の債権債務関係については民法第3編第1章総則第3節
の多数当事者の債権債務の規定(427条以下)を置いている(427条以下の規定は264条但書の「法令に特別の定めがあるとき」にあたり優先的に適用される)[7]。債権の移転原因には次のようなものがある[8]。
契約による移転
債権譲渡(営業譲渡および事業譲渡による場合を含む。)歴史的には、債権譲渡(債権者の変更)は債権の本質に反するという考え方も根強く存在していたものの、近代以降においては、債権譲渡自由の原則が強調されるようになった。日本においても、債権の自由譲渡を認めない慣例が存在したとされ、当初は債権譲渡自由の原則に対する抵抗が強かったものの(民法典論争)、特約により譲渡性を排除できる規定を設けるという形で妥協がなされ、現在に受け継がれている。現在の日本民法においては、民法第3編第1章総則第4節
なお、債権者を交替させるものとして、債権者の交替による更改があるがこの場合には債権の同一性が失われる[8]。