催眠
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このときの腕の下がり具合で、催眠感受性を測る[24]

シュブレール振り子(Chevreul's Pendulum)とは、数十cm程度の紐におもりをつけた装置を指す[25]。もしくは、前述の振り子を指で持って「振り子が動く」と期待すると、意識的に振り子を動かそうとしなくても振り子が動く現象をいう[26]。大学生と大学院生、37名に行ったシュブレール振り子とSHSS-Cの点数の関連を調べた実験では、シュブレール振り子の振れ幅が大きくなるほどSHSS-Cの点数が大きくなる結果が得られた[26]
催眠療法
催眠の応用例詳細は「催眠療法」を参照

催眠は医療の分野において応用されている。中学生の乗り物酔いを治療するために催眠を用いた例[27]、内視鏡検査に対し強度の不安を抱いている女性の不安を催眠で取り除いた例[27]、過敏性腸症候群(IBS)の患者に催眠を用いた例[27]などが実例として挙げられる。いずれも成果を挙げている。

ただし催眠療法と言われる療法の中には、科学的根拠が薄いものがある。例えば催眠療法によって禁煙を行おうとした研究が複数存在するが、研究の結論は一致していない。また、肥満に催眠療法を適用した群と、認知行動療法を適用した群を比較して催眠療法の効果を調べた研究がある。一度は効果があるという結論の論文が発表されたものの、後にその論文に対する、批判を述べた論文が発表された。
催眠を行う際の資格、素人催眠術師

日本では臨床心理士という資格があるものの、その専門業務は臨床心理査定・臨床心理面接・臨床心理的地域援助・以上三つに対する調査研究、と多岐にわたり催眠に限った資格ではない[28]

民間では、日本催眠医学心理学会が認定している「認定催眠士」という資格がある。平成21年11月に『催眠技能士』から『認定催眠士』へと名称が変更された)[29]

また、大谷は著書『現代催眠原論』において「素人催眠術師」を次のように批判している。ここでいう素人催眠術師とは、催眠術師として活動しているのにもかかわらず何の資格も保持していない者を指す。筆者(大谷)は見立てや治療ゴールを無視した素人催眠術師による非倫理的な催眠行為を、「でも・しか催眠」と呼んでいましめているが、素人催眠術師の活動はこれの典型であり、まさに倫理を冒涜した行為以外の何ものでもない。 ? 高石昇、大谷彰、『現代催眠原論』(Kindle版、位置No. 6022/7373?6033/7373)

日本臨床催眠学会、日本催眠医学心理学会、国際催眠学会(The International Society of Hypnosis)では、催眠に関して「(専門家は)素人催眠術師の行動には一切関与しない」といった倫理要綱が存在する。[30]
自己催眠
自己催眠の手法

自己催眠とは、自分自身に催眠誘導を行い暗示を与えることをいう[31]

自己催眠は催眠誘導を全て自分自身で行うため、クライアント自身で催眠を行う場所や時間を選択できるというメリットがある[32]一方、スムーズなトランス体験をすることが難しく、トランスから睡眠に移行してしまうというデメリットもある[32]

自己催眠の習得は、他者の催眠誘導によるものと、独学で習得するものに分けられる[33]

前者の場合、後催眠暗示を用いる。他者催眠を行っているときに「ある特定の合図であなたは催眠状態になる」という暗示を与えておく。クライアントは、自分の好きなタイミングでその合図を行う。すると、後催眠暗示によってクライアントは速やかに催眠状態に移行する[33]

後者の場合、CDやDVDといった教材を用いて完全に独学で習得する方法や、治療者から基本的な手法を学び、ひとりで自己催眠を習得する方法が考えられる。前者の方法を行う場合、誤った情報が記載されている教材が数多く存在するため注意が必要である[34]
ダイエットや禁煙を対象としたCD、DVDの効果

CDやDVDなどの効果には、音声・映像を見たり聞いたりする者の催眠感受性が大きく影響する。したがって、CDやDVDがダイエット・禁煙に対し効果があるかどうか調査することは極めて難しい。[34]。だがこれまでの調査でダイエットの心理療法と、禁煙に対する催眠療法の長期推定効果が低いことが判明しており、CDやDVDによる効果は非常に低いと考えるのが妥当である[35]

なお、クライアントごとに作られた、オーダーメイドの音声資料などは自己催眠の補助資料として活用することが出来る。
催眠と犯罪行為の関連

催眠によって犯罪行為を誘発できることを示す、決定的な証拠は存在しない[36]

確かに催眠で犯罪を行わせたとする実験や実例はいくつか存在する。具体的には、フォレル(Forel)が行った実験と、19世紀末のドイツで起こったチンスキー事件(Czynski Case)などがある[37]

フォレルは、催眠感受性の高い年配の男性に対し催眠をかけ、とある弁護士を撃つよう命じてからリボルバー(実弾は入っていない)を渡した。すると男性は弁護士を撃った。さらにフォレルが「この男はまだ死んでいない。もう一発打ち込まないといけない」と言うと、男性はためらうことなくもう一度弁護士を撃った[37]

チンスキー事件とは、1894年、催眠術師であるチェスワフ・チンスキー(Czeslaw Czynski)が治療として男爵夫人に催眠術をかけ、男爵夫人が自身に好意を抱くようにさせたとして訴えられた事件である[37]。男爵夫人は、はじめ胃痛と頭痛の治療のためにチンスキーの元を訪れていたが、次第にチンスキーに好意を抱き始め、最終的に婚約した[37]

しかしいずれの事件、実験でも「本当に催眠が犯罪を誘発したのか」という点に関する批判が存在し、し烈な議論が行われている[37]。例えばジュール・リエジョワやベルンハイム(ナンシー学派の研究者)は、フォレルの実験のような実験が、催眠犯罪の可能性を証明したと主張しているのに対し、シャルコーは依頼された犯罪が実際の犯罪ではないとの意識が残っていると主張している[37]

一般に、仮に催眠が犯罪を誘発したとする事件が起こったとしても、催眠が犯罪を誘発したとは必ずしも言えない[36]


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