催眠
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個人の催眠感受性は訓練や、個人が置かれた状況によって大きく変化することが知られている[15]
催眠感受性の測定

催眠感受性の測定には、標準化された尺度を用いる方法と、単一の暗示を用いる方法がある。前者の方法は、後者の方法に比べ正確に催眠感受性を測定することができる。しかし、測定に長い時間がかかってしまうため、時間に制約がある場合には後者の方法が使われる[16]

標準化された尺度の例を示す。スタンフォード催眠感受性尺度には、A型・B型・C型という三つのバージョンが存在するが、このうち最も有名なのはC型(SHSS:C)である。SHSS:Cの測定時間は、およそ一時間である[17]

スタンフォード催眠感受性尺度(SHSS:A,SHSS:B,SHSS:C)

スタンフォード催眠臨床尺度(成人用)(SHCS:Adult)

スタンフォード催眠臨床尺度(小児用)(SHCS:Child)

スタンフォード催眠感受性尺度C型(SHSS:C)【現代催眠原論第七章図2より引用】[18]項目催眠暗示反応通過基準
1. 手の下降10秒以内に6インチ[注釈 3]以上下がる
2. 手が離れる10秒以内に6インチ[注釈 3]以上離れる
3. 蚊の羽音・刺され感しかめっ面、追い払い動作、または暗示効果を認める
4. 味覚の幻覚甘み、後に酸味に変化ともに体験またはどちらかを強く体験する動作
5. 腕の硬直右10秒以内に2インチ[注釈 4]以下しか曲がらない
6. 夢眠りと夢(2分間)、後に健忘夜間夢に相当する体験
7. 年齢退行現在の名前、年齢、日付を記入/小学5年生に退行して、名前、年齢、日付を記入/2年生に退行し、名前、年齢を記入/後に現在への年齢進行 現在と退行した事象のうちのひとつと筆跡に明らかに違いがある
8. 手の不動右、重くて上がらず10秒以内に1インチ[注釈 5]以内の効果
9. 嗅覚麻痺アンモニア臭アンモニア臭を感じない
10. 幻聴このオフィスで壁にあるスピーカーを通じて年齢や出生地を尋ねている幻聴・幻覚があったサインを示す
11. 陰性幻覚赤、白、青の三個の小さな箱を見せ、箱が2つあると暗示される幻覚の確認
12. 後催眠性健忘項目11番までの項目の再生3つまたはそれ以下の再生


スタンフォード催眠臨床尺度(成人用)は、スタンフォード催眠感受性尺度のテスト項目を臨床用に直したものである[19]

スタンフォード催眠臨床尺度(小児用)は、スタンフォード催眠臨床尺度(成人用)を小児向けに改訂したもので、目を開けたままでテストが実施できるよう工夫されている。(六歳以下の子供には閉眼は困難と考えられるため)[20]

単一の暗示の例を示す。

腕降下テスト[21]

シュブレール振り子[注釈 6](Chevreul's Pendulum)テスト[22]

両手の接近不能テスト[23]

腕降下テストは、クライアントに「腕が下がる」という意の暗示を与え、実際にどの程度腕が下がるか測定することによって、催眠感受性を測る方法である[24]

腕降下テストの例を挙げる。まずクライアントを椅子に座らせ、両方の腕を前に差し出させる。そして目を閉じさせ、クライアントに「自分の腕に水が入ったバケツがくくりつけられている」というイメージを浮かべさせる。このときの腕の下がり具合で、催眠感受性を測る[24]

シュブレール振り子(Chevreul's Pendulum)とは、数十cm程度の紐におもりをつけた装置を指す[25]。もしくは、前述の振り子を指で持って「振り子が動く」と期待すると、意識的に振り子を動かそうとしなくても振り子が動く現象をいう[26]。大学生と大学院生、37名に行ったシュブレール振り子とSHSS-Cの点数の関連を調べた実験では、シュブレール振り子の振れ幅が大きくなるほどSHSS-Cの点数が大きくなる結果が得られた[26]
催眠療法
催眠の応用例詳細は「催眠療法」を参照

催眠は医療の分野において応用されている。中学生の乗り物酔いを治療するために催眠を用いた例[27]、内視鏡検査に対し強度の不安を抱いている女性の不安を催眠で取り除いた例[27]、過敏性腸症候群(IBS)の患者に催眠を用いた例[27]などが実例として挙げられる。いずれも成果を挙げている。

ただし催眠療法と言われる療法の中には、科学的根拠が薄いものがある。例えば催眠療法によって禁煙を行おうとした研究が複数存在するが、研究の結論は一致していない。また、肥満に催眠療法を適用した群と、認知行動療法を適用した群を比較して催眠療法の効果を調べた研究がある。一度は効果があるという結論の論文が発表されたものの、後にその論文に対する、批判を述べた論文が発表された。
催眠を行う際の資格、素人催眠術師

日本では臨床心理士という資格があるものの、その専門業務は臨床心理査定・臨床心理面接・臨床心理的地域援助・以上三つに対する調査研究、と多岐にわたり催眠に限った資格ではない[28]

民間では、日本催眠医学心理学会が認定している「認定催眠士」という資格がある。平成21年11月に『催眠技能士』から『認定催眠士』へと名称が変更された)[29]

また、大谷は著書『現代催眠原論』において「素人催眠術師」を次のように批判している。ここでいう素人催眠術師とは、催眠術師として活動しているのにもかかわらず何の資格も保持していない者を指す。筆者(大谷)は見立てや治療ゴールを無視した素人催眠術師による非倫理的な催眠行為を、「でも・しか催眠」と呼んでいましめているが、素人催眠術師の活動はこれの典型であり、まさに倫理を冒涜した行為以外の何ものでもない。 ? 高石昇、大谷彰、『現代催眠原論』(Kindle版、位置No. 6022/7373?6033/7373)

日本臨床催眠学会、日本催眠医学心理学会、国際催眠学会(The International Society of Hypnosis)では、催眠に関して「(専門家は)素人催眠術師の行動には一切関与しない」といった倫理要綱が存在する。[30]
自己催眠
自己催眠の手法

自己催眠とは、自分自身に催眠誘導を行い暗示を与えることをいう[31]

自己催眠は催眠誘導を全て自分自身で行うため、クライアント自身で催眠を行う場所や時間を選択できるというメリットがある[32]一方、スムーズなトランス体験をすることが難しく、トランスから睡眠に移行してしまうというデメリットもある[32]


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