個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律
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このような話合いを促進するためには、労働者から苦情が申し立てられた際に対応するのみならず、あらかじめ、企業内において、労働者からの苦情を受け付けてこれを処理するための仕組みを整備しておくことが望ましいこと。具体的には、苦情処理の仕組みを明確化して労働者に周知する、不満・苦情を受け付ける担当者・窓口を設ける、紛争処理機関を設置するといった様々な方法が考えられるが、如何なる方法をとるかは、各企業の労使に委ねられるものであること(平成13年9月19日厚生労働省発地第129号/基発第832号/職発第568号/雇児発第610号/政発第218号)。

紛争調整委員会

都道府県労働局長は、個別労働関係紛争を未然に防止し、及び個別労働関係紛争の自主的な解決を促進するため、労働者、求職者又は事業主に対し、労働関係に関する事項並びに労働者の募集及び採用に関する事項についての情報の提供、相談その他の援助を行うものとする(第3条)。

個別労働関係に係る労働者等の不満・苦情の多くは、法令、判例の不知、誤解に基づくものも多く、適切な情報提供、相談を行うことにより、紛争に発展することを未然に防止し、また、労使が自主的に解決することを促進することが可能となるものであるため、都道府県労働局長は、労働者、求職者又は事業主に対し、労働関係に関する事項並びに労働者の募集及び採用に関する事項についての情報の提供、相談その他の援助を行うものとしたものであること。都道府県労働局長の情報の提供、相談その他の援助は、具体的には、都道府県労働局及びここに設けられる「総合労働相談コーナー」における相談等の実施により行われるものであること(平成13年9月19日厚生労働省発地第129号/基発第832号/職発第568号/雇児発第610号/政発第218号)。

第3条の「情報の提供、相談その他の援助」としては、労働者、求職者又は事業主からの照会内容に応じた関係法令、判例等の情報や資料の提供、紛争解決制度に関する情報や資料の提供、相談者に対する相談のほか、労働基準監督署、公共職業安定所、労政事務所、都道府県労働委員会等他の機関が扱うことが適当と認められる事案についての当該他の機関に対する取次ぎ等が考えられるものであること(平成13年9月19日厚生労働省発地第129号/基発第832号/職発第568号/雇児発第610号/政発第218号)。

都道府県労働局長は、個別労働関係紛争(労働関係調整法第6条に規定する労働争議に当たる紛争及び行政執行法人の労働関係に関する法律第26条1項に規定する紛争を除く。)に関し、当該個別労働関係紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該個別労働関係紛争の当事者に対し、必要な助言又は指導をすることができる(第4条1項)。都道府県労働局長は、この助言又は指導をするため必要があると認めるときは、広く産業社会の実情に通じ、かつ、労働問題に関し専門的知識を有する者の意見を聴くものとする(第4条2項)。事業主は、労働者が1項の援助を求めたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(第4条3項)。

個別労働関係紛争の中には、法令や判例の理解が十分でないために不適切な行為をしたことにより生じているものも多数あり、これらについては、問題点及び解決の方向を的確に示すことにより迅速に解決できるものであること等から、より簡易な個別労働紛争解決制度として、都道府県労働局長の助言・指導制度を設けるものであること。助言又は指導は、紛争当事者による紛争の自主的な解決を促進するため、紛争当事者に対して、問題点を指摘し、解決の方向性を示唆するものであること。したがって、紛争当事者に一定の措置の実施を強制するものではないこと(平成13年9月19日厚生労働省発地第129号/基発第832号/職発第568号/雇児発第610号/政発第218号)。

助言及び指導の対象となる紛争は、個別労働関係紛争であること。ただし、以下の紛争については本法及び各法令により、助言及び指導の対象となる紛争からそれぞれ除外されていること。

労働関係調整法第6条に規定する労働争議に当たる紛争

特定独立行政法人等の労働関係に関する法律第26条第1項に規定する紛争

男女雇用機会均等法第16条に規定する紛争

パートタイム労働法第20条に規定する紛争

育児・介護休業法第52条の3に規定する紛争


次の紛争については、その解決のために本法に基づく助言又は指導をすることが不適当又は不必要と判断されるものであるので、助言又は指導を行わないこと。

裁判において係争中である又は確定判決が出された紛争

裁判所の民事調停において手続が進行している又は調停が終了した紛争

裁判所において労働審判手続が進行している、労働審判手続により調停が成立した、又は労働審判が行われた紛争

労働委員会におけるあっせん等他の機関による個別労働紛争解決制度において手続が進行している又は合意が成立し解決した紛争

第5条に基づく紛争調整委員会のあっせんの手続が進行している又はあっせんが終了した紛争(申請が取り下げられた場合を除く。)

既に助言・指導に係る手続を終了した紛争(申出が取り下げられた場合を除く。)

労働組合と事業主との間で問題として取り上げられており、両者の間で自主的な解決を図るべく話合いが進められている紛争

個々の労働者に係る事項のみならず、これを超えて、事業所全体にわたる制度の創設、賃金額の増加等を求めるいわゆる利益紛争

紛争の原因となった行為の発生から長期間経過しており、的確な助言・指導を行うことが困難である紛争

申出人の主張が著しく根拠を欠いていると認められる紛争


法令等に基づき各機関が行政指導等を実施することとされている事項に係る紛争について、当該機関が行政指導等を行うこととしている場合には、その間は助言・指導に係る手続は停止するものとすること。行政指導等の結果、紛争原因となった事項が改善され、これにより紛争が解決した場合には、助言・指導は行わないこと。なお、行政指導等によっても紛争が全面的には解決しない場合であって、さらに助言・指導を行うことにより紛争の解決が図れる可能性があるときには、当該紛争を助言・指導に係る手続に移行することとするものであること。助言・指導は、私人間の紛争の解決の促進を図るために、紛争当事者双方から事情を聴取し、問題点を整理した上で解決の方向性を示唆するものであり、行政処分には該当しないため、これを行わないこととした場合でも、不作為に係る不服申立等の対象にならないものであること(平成13年9月19日厚生労働省発地第129号/基発第832号/職発第568号/雇児発第610号/政発第218号)。

第4条2項は、事件の重要性や複雑さ等にかんがみ、慎重かつ的確な助言・指導を行うために必要があるときは、判例や実務等に詳しい専門家からの意見を求めることができるものとしたこと。「広く産業社会の実情に通じ、かつ、労働問題に関し専門的知識を有する者」とは、弁護士等の法曹関係者、法律学者等の学識経験者、社会保険労務士、企業の人事労務管理に携わった者等であって、産業社会の実情に通じ、労働関係法令や賃金制度等の労働問題について専門的知識を有する者であること(平成13年9月19日厚生労働省発地第129号/基発第832号/職発第568号/雇児発第610号/政発第218号)。

都道府県労働局長は、第4条に規定する個別労働関係紛争(労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争を除く。)について、当該個別労働関係紛争の当事者の双方又は一方からあっせんの申請があった場合において当該個別労働関係紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会にあっせんを行わせるものとする(第5条)。紛争調整委員会はこのあっせんを行う機関として都道府県労働局に置かれ(第6条)、委員会は、3人以上政令で定める人数以内の、学識経験を有する者のうちから、厚生労働大臣が任命した委員をもって組織する(第7条1項、2項)。委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする(第8条)。

委員会は学識経験を有する者のうちから厚生労働大臣が任命する委員3人以上36人以内をもって組織するものとし、具体的には、各委員会ごとに次の人数とすること(施行規則第2条)。

東京都 36人

大阪府 21人

愛知県 15人

北海道埼玉県千葉県神奈川県 各12人

茨城県静岡県長野県京都府兵庫県奈良県福岡県 各9人

その他 各6人


「学識経験を有する者」とは、産業社会の実情に通じ、法令や判例、企業の人事労務管理について専門的知識を有するものであること。具体的には、弁護士等の法曹関係者、学者、社会保険労務士、人事労務管理の実務に携わった経験を有する者であること。委員会に会長を置き、委員の互選により選任することとし、会長に事故があるときは、委員のうちからあらかじめ互選された者がその職務を代理するものであること(第7条3?5項、平成13年9月19日厚生労働省発地第129号/基発第832号/職発第568号/雇児発第610号/政発第218号)。

委員会の会議は、会長が招集する。委員会は、会長又は第7条5項の規定により会長を代理する者のほか、委員の過半数が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない(第11条)。

次の各号のいずれかに該当する者は、委員となることができない(欠格条項、第9条)。委員が各号のいずれかに該当するに至ったときは、当然失職する(平成13年9月19日厚生労働省発地第129号/基発第832号/職発第568号/雇児発第610号/政発第218号)。
破産者で復権を得ないもの

禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

厚生労働大臣は、委員が次の各号のいずれかに該当するときは、その委員を解任することができる(第10条)。
心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。

職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認められるとき。


委員は、一般職非常勤国家公務員であること。したがって、委員については、第9条及び第10条に加えて、これらと矛盾しない範囲内において、国家公務員法の欠格条項、分限懲戒等に係る規定が重複して適用されるものであること(平成13年9月19日厚生労働省発地第129号/基発第832号/職発第568号/雇児発第610号/政発第218号)。

適用除外・特例

この法律は、国家公務員及び地方公務員については、適用しない。ただし、行政執行法人の労働関係に関する法律第2条第2号の職員(行政執行法人に勤務する一般職)、地方公営企業法第15条第1項の企業職員(事業管理者の権限に属する事務の執行を補助する職員)、地方独立行政法人法第47条の職員(特定地方独立行政法人の職員)及び地方公務員法第57条に規定する単純な労務に雇用される一般職に属する地方公務員であって地方公営企業等の労働関係に関する法律第3条第4号の職員以外のものの勤務条件に関する事項についての紛争については、この限りでない(第22条)。

国家公務員及び地方公務員については、勤務条件、任用、懲戒、分限等が法律、人事院規則条例等で定められているとともに、勤務条件に関する措置要求制度や懲戒・分限等の不利益処分に対する不服申立制度などが整備されており、これらによって紛争の未然防止及び解決が十分図られるところであることから、本法を適用する必要がないため、原則的に本法を適用除外としたものであること。


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