修道院
[Wikipedia|▼Menu]
例えば、ケシの茎の皮をすりつぶして蜂蜜と混ぜると、傷口の絆創膏として使用できたし[5]、その他バラユリセージローズマリーなどの香草や植物は、頭痛腹痛などの内的合併症に使用した[7]アーモンド睡眠補助や排尿促進、月経誘発に効果があるとされていた。

実際、修道士らはこれらの薬草を自分のためだけでなく、地域社会の治癒のために使った。著書が残るルペルツベルク修道院の創設者であるベネディクト会ヒルデガルト・フォン・ビンゲンは修道院に住んでいた修道女であるが[6]、ヒルダガルトはその幅広い執筆活動以外に、ヘンリー二世や神聖ローマ帝国皇帝、ビザンチウムの皇后など、ヨーロッパ中の人々や地域社会の人々が彼女のもとに定期的に訪れていた。以降ヒルダガルトは、治療者としての仕事と医学的著作から、「最初の女性医師」とみなされた[6]。ビンゲンは1155年頃に著作『フィジカ』 (de:Physica) (「博物誌」)の中で記述している。野生のものを含め500以上の植物を紹介し、今日のハーブスパイラルは、パーマカルチャー・デザインの一例でもあるが、とりわけ彼女は植物学レベルで言及しているのである。
修道院の庭

修道院の庭(Monastic_garden)も、多くの人々によって、複数の目的のために利用されていた。園芸は各家庭の主な食料源であったが、修道院の場合も庭園はまずは修道士の生活の糧として特に重要であったし、さらに果樹園墓地遊園地も含まれ、また薬用や文化享受用の植物も提供された[8]。これは多くの植物が複数の用途を持っていたことによる。例えば、は傷を塞ぐのに使われた[5]1966年に再現されたモンサンミシェル修道院(英語版)の瞑想の庭、ツゲダマスクローズが特徴

庭園の構造については、野生動物から守るために時として生垣で囲まれていた。裕福な修道院では煉瓦で壁を作ることができたが、編み枝細工フェンスとして知られるワトルが使われていた。ワトルはすべての人民階層で使われる、最も一般的な柵であったためである。そして時には食料と保護を両立する潅木もフェンスとして使用された。庭園は通常、来客を想定した配置がなされ、簡単にアクセスできるように小道が作られていた。ところが庭園が修道院の壁を越えて拡張されることは珍しいことでもなく、たびたび庭園は修道院の外に拡張され、最終的にブドウ畑まで所有するようになっていったようである[7]

施設として灌漑水源を組み込むことも、庭を維持するために重要であった。ただし灌漑はより複雑なシステムとなるが、水の流れを制御するためには運河を使用していた。そうして小さな運河網を利用するが、水も重力を利用して広く分岐できるように、庭の最も高い場所に配置する必要があった。水路は花壇を造ったらその横に通路を設けて通すことができるため、レイズドベッドスタイルの庭では特に多く使われていた[7]

庭造りの作業に関しては、この時代の修道士は天文学を利用して、庭に植える時期や収穫の最適な時期の計算に役立てていた[9]。当時使用されていた道具も、今日の庭師が使用するものと似ており、例えば、熊手手押し車などが修道士によって使用され、今日でもガーデニング作業の要となっている。詳細は「:en:Monastic_garden」を参照

中世の修道院の庭(monastery gardens)、特にベネディクト会の庭園は、野菜や薬草、果物や花を修道院の住人に供給するだけではなく、園芸植物の栽培や手入れに関する知識を与える役割を果たした。アンセギスはシャルルマーニュ (Charlemagne) に代わって、812年に『de:Captulare de villis vel curtis imperii』を著しているが、73種類の有用植物、16種類の果樹、そしてとりわけ大麻の名前が挙げられている。9世紀初頭の建設理想プランと思われるサン・ガール修道院プラン (de:St. Galler Klosterplan) では、ハーブ、野菜、果物の庭が用意されている[10]ライヒェナウ島にあるライヒェナウ修道院の修道院長、ワラーフリード・ストラボ (de:Walahfrid Strabo) が840年頃に記述したとされる『de:Liber de cultura hortorum』でも444ラテンのヘクサメトロスで庭園の世話、とりわけ24の薬用植物について言及している[11]中世ヨーロッパの医学/修道院医学のための薬草中世料理のためのキッチンハーブのベッドに加え、人々は染料植物、化粧品のための植物、観賞用植物があり、魔法の植物 (ラブハーブ幻覚作用を持つ植物、毒草)も知っていた。
著名な修道院

世界的に有名な修道院としては、カトリック教会モンテ・カッシーノ(ベネディクト会)、正教会アトス山メテオラなどがあり、日本ではカトリック教会のトラピスト修道院が大分や北海道函館市や北海道北斗市三ツ石(渡島当別)にある。
脚注[脚注の使い方]^ ルーテル教会を除くプロテスタントでは、まず修道院を有さない。但し、米国等で活動する、プロテスタントの福音派の一派であって正教会の奉神礼等を取り入れたエヴァンジェリカル・オーソドックス教会は修道院を有しているなど、例外もある。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:51 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef