修学旅行
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1990年代以降、日本国内だけではなく、ハワイアメリカ西海岸、英国韓国台湾などの日本国外への修学旅行も増えている[24]。特に私立では、国外への修学旅行を学校の宣伝材料としている場合も多い。公立でも地理的に朝鮮半島に近い九州山口県の学校では、韓国に行く学校も多い。

神社仏閣などは、特定の宗教に対する特別扱いではないかという意見もあることから、そういった場所を選択する学校は減少傾向にある。しかし、歴史を学ぶ目的や観光で訪れることが本当に特定宗教の特別扱いになるのかという点では反対意見もある。

中学校以上では、小グループによる官庁出版社新聞社テレビ局などへの見学も行われるようになっており、それらを職場として理解する進路学習を目的とする場合が多い。また一部の高校では進学先理解のために大学や研究施設を見学先とする例もある。これらは主に大都市圏外の学校が大都市圏を見学先とする場合に多いが、逆に大都市圏の学校においては、農業などの大都市圏外の産業・社会・文化に理解を深めるために、遠隔地(たとえば東京周辺の学校において、東北地方北部などへ)の農業体験を行う例も存在する。

国際的な博覧会の開催年に修学旅行が実施される場合、その観覧がメインとなることも多い(1970年の大阪万博、1985年のつくば科学万博、2005年の愛・地球博など)。その場合、サブの見学地として会場周辺地域の観光地・産業施設などが充てられることも多い。

東北地方太平洋沖地震東日本大震災)のような大規模災害が発生した後に、その被害・復興状況などを学習・体験するため被災地へ赴く学校もある(福岡県立修猷館高等学校)。

日本修学旅行会調べ:修学旅行先は、2019年度は1位沖縄、2位大阪、3位京都、4位東京、5位奈良、6位千葉、7位北海道、8位兵庫・長崎、10位福岡、2020年度は1位長崎、2位沖縄、3位広島、4位大阪、5位北海道・兵庫、7位福岡、8位京都、9位熊本、10位鹿児島であった[23]
国外への渡航

修学旅行先として日本国外が選択されるケースも増えてきている。目的としては国際感覚を養うなどが挙げられるが、費用は国内よりも高く、安全面での配慮が求められる。

2011年度には全国で737校(国公立304校・私立433校)が実施した。国立高校または公立高校では8.0%、私立高校では32.8%の実施率であった[25]。私立高校の多い首都圏や、地理的に韓国や中国に近い西日本で実施率が高い傾向がある。

2011年度の渡航先割合は東南アジア29.7%、韓国21.2%、北アメリカ17.6%、中国11.8%、台湾8.5%、オセアニア7.7%、ヨーロッパ3.6%。近隣のアジア地域が多いものの、首都圏など大都市圏の私立高校では欧米諸国など遠方に行くケースもある。
引率する教職員

引率する教職員は、遠足など他の学校行事での旅行と異なり、学級担任・学年主任・副担任などの当該学年担当の教職員のみならず、校長(時にその代理としての教頭)や、養護教諭が加わることが多い。なお、引率に伴い校長・養護教諭等が不在となる場合は、職務代理者がその校務を代行する。
実施基準

公立学校における修学旅行の実施にあたっては、小中学校(都道府県立の中学校を除く)については各市町村または特別区教育委員会が、高等学校、中等教育学校、特別支援学校及び都道府県立の中学校については各都道府県または政令指定都市の教育委員会がそれぞれ通達により基準を定めている[26][27]。特に保護者の負担軽減のために旅費の総額に制限を設けたり、旅行期間の上限を設けたりする例が多い。また旅行先を一定の地域に限ったり、総行程(移動距離)に上限を設けたりする例もある。その結果、国立学校または公立学校における修学旅行の旅程は、小学校(義務教育学校を含む)では原則1泊2日、高等学校(中等教育学校を含む)でも5泊6日程度が上限となっている。また日本国外への渡航は原則として高等学校(中等教育学校を含む)に限られており、小中学校で日本国外への修学旅行を実施する例は非常に稀である。

一方で私立学校の場合は上記のような制約を受けないため、小中学校から日本国外へ渡航する例も珍しくない。また旅程も公立学校より長くなる傾向があり、2008年の調査によれば、国立高等学校または公立高等学校で5日間以上の旅程を組んだ学校が23.8%にとどまるのに対し、私立高等学校では53.9%と倍以上の割合となった[28]
意義の再検討
実施の意義を問う声

高度経済成長以前、日本の一般家庭の所得水準が低く、高速交通網も未発達で家族旅行自体が稀であった時期は[注釈 10]、修学旅行によって見聞を広めることがその基本的な目的とされていた。しかし、所得の上昇、交通インフラの整備などにより、自家用車で頻繁に家族旅行をしたり、海外も含め遠方へ旅行に行く機会も増えてきた頃から[注釈 11]、修学旅行の存在意義を問う声も聞かれるようになった。加えて目前に差し迫った進学や就職へのマイナス面を心配する声や、学校や教育委員会と旅行代理店の癒着への批判から、修学旅行を廃止、あるいは廃止を模索する学校が増えてきた。

しかし、「短い学生時代に友人たちと一緒に昼夜を過ごす共同生活の体験をとおし、対人関係の望ましい態度や習慣を身につける」・「実物の資料に触れるなど、平素と異なる生活環境(現地の自然や文化など)に親しむ中から見聞を深める」「集団生活や公衆道徳の在り方について望ましい体験を積む」体験を通し、「多感な世代の人間形成に大切な役割を担う[29]」などの見地から、学校関係者・生徒・保護者のいずれも今のところ修学旅行に肯定的な見方をする者の方が多く、修学旅行そのものの見直しに踏み切った学校は数少ない。ただし、修学旅行という呼称を止めて「宿泊研修」など呼称を変更した学校もある。

なお、低所得世帯生活保護世帯ひとり親家庭をはじめとする子どもの貧困が増えたことで、修学旅行積立金の費用捻出が困難となった家庭が珍しくなくなるという観点から、その意義を問う意見もある[誰?]。

2020年以降はCOVID-19禍の感染防止という観点から、学校側の判断で修学旅行を中止、または日数を短縮するケースが多く見られたが、中止になった修学旅行をそのまま廃止、あるいは廃止を模索する中学校も存在する。
修学旅行を廃止した例

修学旅行を廃止した例として、公立では宮城県仙台第二高等学校茨城県立土浦第一高等学校・富山県立高校の大半の学校・島根県立高校の31校、私立では函館ラ・サール高等学校私立武蔵高等学校早稲田大学高等学院などが挙げられる。


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