保険
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日本の海上保険法は、1731年のハンブルク保険・海損条例を嚆矢とするドイツ法を継受したものであるが、同条例には1681年ルイ14世が下した海事勅令が大きな影響を与えており、結局ドイツ・イタリア・フランスという旧フランク王国の海上保険法すべてが同条例を法源としている[2]

1859年安政6年)には、開港したばかりの横浜で、外国人を対象に外国保険会社によって火災保険や海上保険の引き受けが始められた。1867年慶応3年)には、福澤諭吉が『西洋旅案内』の附録の中で、「災難請合の事 イシュアランス」として「生涯請合」(生命保険)、「火災請合」(火災保険)、「海上請合」(海上保険)の仕組みを広く紹介した[8][注釈 3]。また、夏目漱石も保険制度の普及を著書にて薦めている。1879年明治12年)には東京海上保険会社(現:東京海上日動火災保険株式会社)が、1881年(明治14年)には明治生命保険会社(現:明治安田生命保険相互会社)が創立され、本格的に保険が行われるようになった。なお、この19世紀後半にチューリッヒ保険トラベラーズのような保険会社が生まれていった。

フランスは1816年にアクサを設立したが、社会保険の普及度は第一次世界大戦終結までドイツ帝国にひけをとった。

20世紀を通じて、アメリカの保険会社は投資信託の主要な購買層であった。

1957年プライス・アンダーソン法の制定がもとで、原発事故に備え保険制度が整えられた[10]

1970年代、フランスへ外銀が雪崩れこみ(詳細)、保険の銀行窓口販売がスタートした。

1981 - 1982年、ロス疑惑保険金殺人容疑)、1993年ハートフォード火災保険会社事件(英語版)を経て、外国法が特に求めている場合に新しく反トラスト法の域外適用が認められた。

2008年の世界金融危機に際し、連邦準備制度AIG株を79%も取得した[6]
分類

保険制度は、保険者・運営目的・保険事故等に着目して分類できる。保険商品としての分類はこれと別である。

国や地方自治体などの政府が運営する公営保険と民間会社が運営する私営保険(民営保険)

社会保障制度の一部をなす公保険と個人が任意に加入する私保険[注釈 4]

加入が義務づけられる強制保険と保険契約者が任意に加入する任意保険

相互扶助を目的とする相互保険と営利を目的とする営利保険

人の生死傷病などを保険事故とする人保険(じんほけん)と物の滅失・毀損を保険事故とする物保険(ぶつほけん)

航海に関する事故によって船や船荷につき生ずる損害を保険事故とする海上保険と陸上の各種保険である陸上保険

企業を主な保険契約者とする企業保険と個人を主な保険契約者とする家計保険

公営保険には、社会政策ないし社会福祉としての保険である社会保険と経済政策としての保険である産業保険がある。

日本の社会保険には以下のような制度がある。

公的医療保険被用者保険国民健康保険後期高齢者医療制度などのユニバーサルヘルスケア

公的年金保険国民年金厚生年金など)

公的介護保険

労働保険雇用保険労働者災害補償保険(労災保険)

船員保険

日本の産業保険は、農業保険・漁業保険・漁船保険・輸出保険その他がある。

私営保険は、民間の保険会社が販売・運営する保険で、主に生命保険損害保険を扱う。

生命保険とは人の生死に関して一定額の保険金を支払う保険

損害保険とは一定の偶然の事故によって生ずることのある損害を填補する保険

保険会社に付保規制を課し、違反となる保険商品を規制している国もある。日本政府は保険業法により、一部の例外を除き、日本に支店等を設けない外国保険業者は、日本に住所・居所を有する人若しくは日本に所在する財産又は日本国籍を有する船舶若しくは飛行機に係る保険契約を締結してはならないと定めている[11]

日本で保険を販売する保険会社は、保険業法により、生命保険業免許を受けた生命保険会社、損害保険業免許を受けた損害保険会社、外国保険業者のうち内閣総理大臣の免許を受けた外国保険会社に分けられている。また、日本の保険会社には、営利(株主に損益帰属)を目的とする株式会社の形態をとる保険会社と、相互扶助(契約者に損益帰属)を目的とする相互会社の形態をとる保険会社がある。相互会社は保険会社にのみ認められた会社形態であり、理論的には非営利法人(中間法人)と位置付けられる。現在、相互会社は生命保険会社にのみ存在し、損害保険相互会社は存在しない。

もっとも、1995年(平成7年)に公布され翌1996年(平成8年)に施行された新・保険業法により、多くの面で相互会社と株式会社を近接させ、相互会社と株式会社との双方的な組織変更をできるようにしたため(それまでは株式会社から相互会社への組織変更だけが可能だった)、両者の違いはあまり大きくない。また、この新・保険業法では、生命保険会社と損害保険会社の両者が、ともに扱うことのできる保険分野(いわゆる第三分野保険)を定めた。第三分野保険とは、生命保険分野・損害保険分野の両者にまたがる保険で、医療保険、介護保険、がん保険などがこれにあたる。

なお、私営保険であっても、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)地震保険など、社会政策的目的を持って定められた保険もある。また、かつては政府が運営していた簡易保険(簡易生命保険)は、公営保険の一つであった。しかし、2007年(平成19年)10月1日からは株式会社かんぽ生命保険が取り扱っているため、私営保険に分類される[注釈 5]

このほか、再保険という保険もある。再保険とは、保険者が保険契約(元受保険)によって引き受けた責任の一部又は全部を他の保険者に保険させることを目的とする保険である。再保険は、保険が持つリスク分散機能をさらに高める作用を持つ。再保険は保険を対象とした保険なので生命保険ではないが、例外的に生命保険の再保険は生命保険会社が取り扱うことができる。再保険は私営保険として営まれるほか、公営保険としての再保険もある(地震保険に関する法律3条)。
保険商品

保険商品は、保険約款に基づいて締結される保険契約である。保険約款は保険会社が定めた契約条項であり、契約の基本的な内容を定めた普通保険約款と、普通保険約款の規定を変更または補完している特別約款(特約)から成り、契約者は約款上の個々の条文について保険会社との間で変更の個別交渉を行うことはできない。保険約款は保険契約者・被保険者にとって不利となりうるため、次のように規制されている。

商法等の法律により保険約款の内容を規制(立法)

金融庁による保険約款の認可・届出制(行政)

解釈が分かれる場合は「作成者不利の原則」により契約者を保護、著しく不当な条項は裁判で無効(司法)

主な保険商品には以下のようなものがある。もっとも、イスラーム圏利子を利用する点やギャンブル性を根拠に保険をシャリーアに反すると考えるため、タカフルという共済や頼母子講に似た商品を販売している。
生命保険(生保:第一分野)
保険料が長期間滞留する事実上の投資信託
終身保険養老保険個人年金保険定期保険。生存保険は単体で存在せず、何かしらの死亡保障が付属される。
損害保険(損保:第二分野)


海上保険

船舶保険

運送保険

貨物保険



火災保険

住宅火災保険

住宅総合保険

地震保険[注釈 6]

普通火災保険

店舗総合保険

団地保険



自動車保険

自賠責保険(俗称:強制保険)

任意保険


自転車保険


賠償責任保険

個人賠償責任保険

企業賠償責任保険


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