保証
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保証人が知らないうちに主たる債務者が債務不履行となり遅延損害金が増大してから保証人が履行請求を受けるのは酷であるが、金融機関等の債権者には守秘義務があり、保証人から主たる債務の履行状況等の照会に回答してよいか問題があった[2]。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では委託を受けた保証人の請求による主たる債務の履行状況に関する情報提供義務を定めた(458条の2)[1][2]

主たる債務の履行状況に関する情報提供は、貸金等債務に係る保証に限らず全ての保証契約が対象となる[1]。ただし、債務の履行状況等が主たる債務者の信用情報にかかわるため、請求権者は受託保証人に限られる[2](主たる債務の履行状況に関する情報提供義務は保証人が個人・法人いずれかを問わない[1])。
主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報提供義務

主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならない(458条の3第1項)。

保証人の知らないうちに主たる債務者が期限の利益を喪失した場合、保証人が突然に残債務の一括返済や増大した遅延損害金の支払いを求められるのは酷である[2]。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務を定めた(458条の3)[1][2]。期間内の通知を怠った場合、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない(458条の3第2項)。

主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務は、個人保証のみを適用対象としており、保証人が法人である場合には適用されない(458条の3第3項)[1][2]
保証債務の消滅
消滅における付従性

弁済や相殺によって主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅する(消滅における付従性)。

ただし、主たる債務が債務不履行に陥って契約を解除された場合、主たる債務は損害賠償債務や原状回復義務による債務へと変化するが、保証債務はその債務をも担保する。

また、契約がいったんは有効に成立しながらも後に合意によって解除された場合、ここで生じる損害賠償や原状回復義務は合意解除の際の債権者と主たる債務者による新たな取り決めによって発生したものである。原則からいえば元の主たる債務は消滅しているのだから保証債務も消滅するのだが、この合意によって生じた債務についても保証の効果が及ぶとされる。ただし、保証人の関知しないところでなされた合意によって債務が生じるのだから、保証人に過大な責任を押し付けることも考えられる。そこで保証人を保護するため、保証債務が存続するのはその内容が従前よりも重いものではないときに限られるとされる。
求償権の問題

保証人が債権者に対して債務を弁済した場合(つまり肩代わりをした場合)、保証人は債務について最終的な責任を負うものではないから、主たる債務者に対して求償できる。しかし、保証人となった経緯に応じて求償できる範囲や方法が異なる。
委託を受けた保証人の求償権

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する(459条1項)。債務の消滅行為にあたっては後述の主たる債務者への事前通知と事後通知を要する。

2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で委託を受けた保証人が弁済期前に弁済等をした場合の求償権の規定が新設された(459条の2)。主たる債務の弁済期前の保証人の弁済等は、委託の趣旨に反すると考えられることから、委託を受けない保証の場合と同様の範囲にまで求償を制限する趣旨である[1]

債務が弁済期にあるときなど以下の場合には、委託を受けた保証人は、保証債務を履行する前でも、あらかじめ主たる債務者に求償することができる(460条、事前求償権)。
主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。

債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。

保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたとき。なお、2017年の改正前の460条3号は「債務の弁済期が不確定で、かつ、その長期をも確定することができない場合において、保証契約の後十年を経過したとき。」とされていたが、主たる債務の額すら確定できない場合であったため削除された[1]

委託を受けない保証人の求償権

主たる債務者の意思に反しない場合

主たる債務者からの委託を受けない保証人は、原則として、肩代わりで弁済した当時、主たる債務者が利益を受けた限度で求償できる(462条
1項・459の2第1項)。この場合の求償権の法的性質は、不当利得返還請求権(703条)ないし事務管理の費用償還請求権である。

利益が現存しないことの立証責任は求償を受ける主債務者の側にある[5]

債務の消滅行為をしたときは後述の主たる債務者への事後通知を要する。


主たる債務者の意思に反して保証人となった場合

この場合、保証人は、求償の時点で主たる債務者が利益を受けている限度で求償できる(462条2項)。


通知義務

事前通知

委託を受けた保証人は債務の消滅行為をするにあたり主たる債務者に事前通知を要する
[1][3]。事前通知がない場合、主たる債務者は、債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗することができる(463条1項)。

2017年の改正前の民法では委託の有無を区別せずに、保証人に事前通知義務が課せられていたが、委託を受けない保証人は事前通知の有無に関係なく求償の範囲が制限されることから、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で事前通知義務を委託を受けた保証人に限っている[1][3]


事後通知

委託を受けた保証人及び委託を受けないが主たる債務者の意思には反しない保証人の場合、債務の消滅行為をしたときは主たる債務者に事後通知を要する[3]。事後通知がなく、主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる(463条3項)[3]

委託を受けず主たる債務者の意思にも反する保証人の場合、求償権は主たる債務者が求償時に現に利益を受けている限度とされているため(462条2項)、保証債務が履行された後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合には利益はなく求償できない[3]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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