日本の室町時代における悪党が土地に縛られず法外者であったのに比べ、江戸幕府は宗教と住居の両面から大衆を支配している。決められた場所で決められた支配者に従い、貢納することで競争による脱落が生じずに生活が保障されるのが封建時代の特徴であり、農村経済の破綻までこのシステムが運用されていく。
ただし、17世紀初期に幕府が大坂や江戸の橋や河川、主要道路を整備して都市機能を持たせる政策を打ち出した時点ではまだトップダウンだけでは無理があり、多くの牢人に労務管理としての口入業を行わせている。彼らが独自に生み出した珍奇な衣装、言動といったものが都市文化の風俗として捉えられたのが侠客である。これと同時に武士階級であっても存在価値を問われている遊民たちも独自の「風俗」を生じている。すなわち無為無禄の状態に置かれた旗本の次男以下からなる旗本奴、旗本奴に反発する庶民による町奴と謂われる者が侠客であり、19世紀の浮浪(博徒も含まれる)とは大きく意味合いは異なる。 これについては宮崎学が愚連隊の元祖とさえ呼ばれた万年東一を評した説明が、最も理解しやすい。すなわち、闘争の場も「遊び」とする者たちである[6]。社会的制度や圧力を前にして、友愛や恋情ではなく蛮勇により自己保存の本能を乗り越える形であるが、子供じみた行動とされ、一般社会では全く正当化されない。ただし、この発現の過程については、ただ現象として「ある」としか説明はないため理解しづらい面が多い。万年自身は、後に作家となった安部譲二に「平気で損ができるのが任侠で、損ができないのは任侠ではない」と喝破している。
現象としての侠客
主な日本の侠客
幡随院長兵衛
新場小安
黒駒勝蔵
国定忠治
大前田英五郎
笹川繁蔵
新門辰五郎
飯岡助五郎
会津小鉄
清水次郎長
吉田磯吉
佐原喜三郎
相模屋政五郎
田代栄助
祐天仙之助
油屋勝次郎
堤仁三郎
関連書籍
猪野健治『ヤクザと日本人』 (現代書館、1993年、ISBN 4768466346:筑摩書房-ちくま文庫、1999年、ISBN 4480034846)
猪野健治『侠客の条件―吉田磯吉伝』 (双葉社-双葉新書、1977年:筑摩書房-ちくま文庫、2006年、ISBN 4480422765)
井波律子『中国侠客列伝』2011年 (講談社 ISBN 9784062168939)、2017年 (講談社学術文庫 ISBN 978-4062924139)
汪涌豪『中国遊侠史』青土社 2004年
注・出典^ 近年「きょうきゃく」と発音されることが多い。
^ 表外漢字字体表には印刷標準字体として「?客]も使用されている。
^ a b 侠客(読み)きょうかくコトバンク
^ 侠客『東京百事便』 (三三文房, 1890)
^ 『史記』 卷一百二十四 游?列傳 第六十四 冒頭。 中国語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります:史記/卷124
^ ホイジンガーのいうところの「ホモ・ルーデンス (homo ludens、遊興人) 」がその精神を発露する現象である。
関連項目
自己犠牲
ヤクザ
浮浪雲
ヨハン・ホイジンガ
博徒
外部リンク
⇒侠客の種類幸田露伴、1954年(青空文庫)
新古侠客英名伝村井静馬 編 (榎本直衛, 1883)
日本侠客銘々伝京山大教 口演 (日吉堂, 1912)
典拠管理データベース: 国立図書館
日本
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