「佐」とは律令制下の五衛府の四等官として登場する[16] [17] [18]。四等官においては1番目である「督(かみ)」を文字通り補佐するのが2番目の「佐(すけ)」である[19] [20]。藤原道長、平清盛、源頼朝といった歴代の強力な権力者も若くして兵衛府の「佐」の地位を足がかりにしていったことから、特に武家において特別な意味があった。明治新政府が諸外国に倣って建軍した際、この伝統に沿って将官の下、2番目にあたる佐官に、この字を充てた[注釈 2]。
かつての欧米においては、将官に相当する階級が存在せず(あるいは余程の事が無いと任官されず)、佐官、その中で大佐が軍の最上位だった時代もある。そのため大佐という言葉には「集団の大黒柱」というニュアンスを含む。そのため「(1番目を)脇で支える、助ける」というニュアンスを持つ、漢字の「佐」とは、字義の違いが生じている。
中国人民解放軍や中華民国国軍では「校」、韓国軍では「領(ハングルでは?)」の字を充てるなど、漢字文化圏では名称に違いが生じている[注釈 3]。ちなみにこの場合の「校」とは、前漢以降の中国における高級武官の官職のひとつである校尉に由来する(日本においても、将校の呼称に名残がある)。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 五国対照兵語字書によると上長官は、フランス語: Officier superieur、ドイツ語: Stabs-Officier、英語: Field-officier、オランダ語: Hoofdofficier にあたる[3]。
^ 荒木肇は、律令制の官職名が有名無実となっていたことを踏まえて、名と実を一致させる。軍人は中央政府に直属させる。などの意味合いから衛門府・兵衛府から佐官の官名を採用したのではないかと推測している[21]。大佐、中佐、少佐は中国の古典語には存在せず清末以前の文献からも見つけられないため、日本語による造語である可能性が高いと推測される[22]。
^ 日本語の大佐は現代中国語の上校に相当する階級名であるが、現代中国語では日本軍将校を指すときのみ「〇〇大佐」などと称し、それ以外のほとんどの場合はどこの軍隊であるかには関係なく「〇〇上校」と称することが一般的である。1910年代から1920年代にかけては日本軍以外のものについても外国軍将校の階級の訳語として大佐などを多数用いることがあったが、1930年代以後は大佐の例を含めて中佐・少佐などの場合についても日本軍を指す場合にのみこのような用法を使用し、他の場合は現代中国語では中国独自の造語として中校、少校などと称されていたと見られる[23]。
出典^ 国立国会図書館 2007, p. 115.
^ 国立国会図書館 2007, p. 155.
^ 室岡峻徳、若藤宗則、矢島玄四郎 ほか 編『五国対照兵語字書』 〔本編〕、参謀本部、東京、1881年2月、683-684頁。NDLJP:842999/350。
^ 「陸海軍武官官等表改正・二条」国立公文書館、請求番号:太00424100、件名番号:004、太政類典・第二編・明治四年?明治十年・第二百二巻・兵制一・武官職制一(第1画像目から第2画像目まで)
^ JACAR:A04017112800(第10画像目)
^ 「海軍武官官等表改定」国立公文書館、請求番号:太00431100、件名番号:035、太政類典・第二編・明治四年?明治十年・第二百九巻・兵制八・武官職制八(第1画像目から第2画像目まで)
^ 「単行書・大政紀要・下編・第六十六巻」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A04017113000、単行書・大政紀要・下編・第六十六巻(国立公文書館)(第10画像目)
^ 「陸軍武官表・四条」国立公文書館、請求番号:太00424100、件名番号:015、太政類典・第二編・明治四年?明治十年・第二百二巻・兵制一・武官職制一(第1画像目から第2画像目まで)
^ JACAR:A04017112800(第12画像目から第13画像目まで)
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^ 「海軍武官々階ヲ定ム」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A15112249500、公文類聚・第十五編・明治二十四年・第九巻・官職五・官制五・官等俸給及給与三(海軍省?北海道庁府県)(国立公文書館)
^ 「海軍武官官階表ヲ改正ス」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A15113077200、公文類聚・第二十編・明治二十九年・第八巻・官職四・官制四(農商務省?衆議院事務局)(国立公文書館)
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^ 荒木肇「陸軍史の窓から(第1回)「階級呼称のルーツ」」(pdf)『偕行』第853号、偕行社、東京、2022年5月、2023年11月12日閲覧。
^ 仇子揚 2019, pp. 84?85, 102, 107?108, 附録17, 附録65, 附録94.