郵便においては、丁目を含まない町域名に対して郵便番号が割り当てられており、カスタマバーコードでは丁目をアラビア数字で抜き出すこと、丁目以下の区切りはハイフンとすることとなっている。上記例では東京都新宿区西新宿に対して160-0023が割り当てられているため、「新宿区西新宿二丁目8番1号」のカスタマバーコードは「16000232-8-1」(制御コードやチェックデジットを除く)となる。
町・字は全ての地域に必ず定められているものではなく、「○○市9999番地」といったように市町村名の後に町・字名がなく直接地番を付す区域もある。たとえば「八幡浜市立武道館」の住所は「愛媛県八幡浜市487番地」、「香川県立琴平高等学校」の住所は「香川県仲多度郡琴平町142番地2」である。 近代以降、日本では地番を用いた住所の表示が用いられてきた。それは地租改正において課税のために付けられた地番を住所の表示にも代用するというものである[16]。 後述の住居表示に関する法律による住居表示が実施されていない地域では、地番を用いて住所を表している。 以上の地番による住所の表示は、広い土地を分筆すれば支号(枝番号)が増え、合筆すれば欠番が生じるうえ、区画整理、町村合併、河川改修による河道変更、自治体の境界変更なども加わり、これらが繰り返されるうちに、住宅地によっては地番では目的地にたどりつくことが難しいという事例も生じるようになった[16]。極端な場合では、元は一筆だった土地が分譲されるなどした結果、岐阜市では約250軒の住宅が同じ住所を共有するなどの例もあった[17]。 このような地番の欠点に対し、1964年の東京オリンピックまでに外国人にもわかりやすいような合理的な住所表示の方法を導入すべきとの機運も加わり、1962年に住居表示に関する法律が施行された[16]。住居表示に関する法律による住居表示が実施された地域では、街区方式または道路方式による表示が用いられる[16]。 なお、地番を表す部分や住居表示を簡略化して表記する場合、「-」(ハイフン)を用いる慣習がある。例えば「7番地9」や「7番9号」は「7-9」と略されうる。 方書(かたがき)は、本来寄宿人が「○田×郎方」と家主の名前を示したものを指すが、現在では「○×マンション103号室」のように共同住宅の部屋番号も方書と呼ばれる。部屋番号を簡略に表記する場合、地番を表す部分や住居表示の後に「-」(ハイフン)で番号をつなげる慣習がある。 北海道の「条・丁目」がある地域の「条」と「丁目」は、一方が縦軸、他方が横軸を表す。両者の組み合わせで座標上の位置を示し、通常はともにアラビア数字で表記される。日本郵便の公式サイトでは「条」だけを漢数字にして「丁目」をアラビア数字にする表記が見受けられるため、これが正式な表記であると誤解されることがあるが、札幌市では「条」と「丁目」ともにアラビア数字で表記するのが正式である。札幌市では「条」と「丁目」を省略して記載するのが一般的であり、「南18条西16丁目2番1号」という住所は「南18西16-2-1」と略記される。 平安京以来の長い歴史を持つ京都市の旧市街地においては、「通り名」を用いた独特の住所表記法がある。例えば、「京都市中京区寺町通御池上る上本能寺前町488番地」というように、通り名の後ろに町名を表記するのが正式である。これらは京都市の住民基本台帳においても用いられている。また、「京都市中京区寺町通御池上る」などのように町名・地番を省略するのが慣習上の通例である。これは多数ある町名を覚えなくとも、通り名さえわかれば場所を特定できるという利便性によるものである。 また例えば京都市中京区油屋町など、異なる通りに同一町名が存在する場合は、通り名がなければ場所が特定できない。ただし郵便番号は別々に振り分けられているため、蛸薬師通の油屋町と柳馬場通の油屋町では番号が異なり、郵便物が配達されないということはない。ネットショッピングやカーナビゲーションなどはこの通り名に対応していないものもあり、京都市在住者には戸惑いの声もある[21]。 長崎県のうち律令制下の肥前国および壱岐国に属した地域では、地名の末尾に付する独特の単位が複数存在する。旧大村藩領および旧福江藩領では「○○郷(ごう)」、旧佐賀藩領および旧島原藩領では「○○名(みょう)」、旧平戸藩領のうち北松浦半島および平戸島など本土に近接する島嶼部では「○○免(めん)」、同じ平戸藩に属した壱岐国(壱岐島)では農村集落で「○○触(ふれ)」、漁村集落で「○○浦(うら)」を付する[22]。 これらの単位の中には、市町村合併などの過程で町名設置の際に区域ごと廃止されたり単位のみ削除される事が多いが、現在も市町村下の行政区画単位として一部の自治体で現存している。 地域によっては、公的な住所表記と通称の住所表記が併存する場合もある。例えば大分県の一部地域(大分市、別府市[24]、臼杵市[25]、日田市[26]など)では、不動産登記や住民基本台帳に用いられる公称の住所とは別に、慣習的な町名と「組」「区」などの単位からなる「通称住所」が指定され、郵便物や運転免許証など常用の住所表記に利用されている。例えば「大分市大字荏隈××番地」に対応する通称住所は「大分市明磧×組の×」などとなる[注 11][27]。大分市では、希望により住民票には通称住所を併記することも可能である[28]。長野県長野市の中心市街地では、正式な住所である小字のかわりに「××町」などの通称町名が用いられており、大字と住民登録の名称、行政連絡区の名称、通称名が複雑に入り組んでいる[29]。 日本では住所をコード化する体系が複数併存している。
地番による表記と住居表示
住居表示が行われていない地域の住所は、地番と支号を用いて「3番地5」あるいは「3番地の5」などと表記される(「支号」は不動産登記法上の名称で、「枝番」とも俗称される)。地番と支号の間の「の」の有無は市区町村ごとに異なるが、全国的な傾向として「の」を挿入する市区町村は減りつつある。ただし、不動産登記における地番は「の」を入れず必ず「3番5」となるため、住所が役所で「3番地の5」と登録されて、地番が法務局で「3番5」と登録されていることが起こりうる。
国有林・河川敷・浜辺など公有地にある住所は、そもそも土地登記が行われておらず地番が付されていないため、「無番地」などといった表記となることがある。これらの住所は「番外地」とも呼ばれる。また、その地点から最も近い地番を用いて「100番地先」などといった表記をすることもある。番外地は国鉄時代の駅の住所に多くみられたほか、道路下に存在する地下鉄駅の住所や、道路工事の場所を表すなどの場合は地先を用いることが多い。住居表示実施地域などでは通常呼称している近隣の住所とは表記が乖離してわかりにくいため、地番が付されている道路であっても、隣接地の地先として表すことが一般的である。
街区方式
市町村内の町又は字の名称並びに当該町又は字の区域を道路、鉄道若しくは軌道の線路その他の恒久的な施設又は河川、水路等によつて区画した場合におけるその区画された地域(街区)につけられる符号(街区符号)及び当該街区内にある建物その他の工作物につけられる住居表示のための番号(住居番号)を用いて表示する方法(住居表示に関する法律第2条第1号)
街区方式は道路・鉄道・河川に囲まれた区画に街区番号を振り、さらに住居番号を付けていくという方式で、日本の住居表示実施地区のほとんどはこの方式を採用している[18][19](東京都千代田区の中央合同庁舎第1号館の住所は「東京都千代田区霞が関1丁目2番1号」のように表示される)。
道路方式
市町村内の道路の名称及び当該道路に接し、又は当該道路に通ずる通路を有する建物その他の工作物につけられる住居番号を用いて表示する方法(住居表示に関する法律第2条第2号)
道路方式は欧米式と同じく通りの両側に奇数と偶数に分けて住居番号を振っていく方式だが、日本では山形県東根市の一部などで採用例があるのみである[18][19](山形県東根市の若木開拓歴史資料館の住所は「山形県東根市若木通り1丁目60号5」のように表示される)。
通り名による道案内は、地域に不慣れな人でも場所の説明や確認が容易で道案内に優れているという特徴がある[19]。そこで国土交通省では「通り名による道案内」(通りに名称を付けた上で通りを起点に右側に奇数、左側に偶数で10 m単位の位置番号を付す方法)を住所とともに併記する施策を実施している[20]。
方書
その他の表記
北海道
京都市
長崎県
住所表記における区分としては「大字」の下位区分であり「小字」の上位区分、つまり大字と小字の中間区分にあたるが、いわゆる明治の大合併の際に長崎県下(対馬を除く)では多くの自治体が合併を行わず単独で町村制を施行したため[注 9]、大字が存在しない自治体が多数を占めた。また合併を実施した自治体についても、後に殆どの自治体で大字の表示を廃止している[注 10][23]。このため「郷・名・免・触・浦」が上位区分、「小字」が下位区分となる表記が一般的である。
通称住所
日本の住所コード
全国町・字(まちあざ)ファイル(JISコード系)
Size:77 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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