一方、移転前後で経済的な実体が変わらないような一定の基準を満たす分割は、例外的に適格分割と呼ばれ、移転資産の簿価による引継ぎを行うことにより課税関係が生じない仕組みが採られている。
なお、適格分割型分割のうち、分割承継法人に資産負債を移転後、直ちに分割法人が解散するスキームは適格合併に似ており、これを特に合併類似適格分割型分割とよぶ。 最高裁は、ゴルフ場運営を承継会社に会社分割させた事案で、承継会社が存続会社のゴルフクラブの名称を引き続き使用している場合において、分割契約上存続会社のゴルフ会員権預託金返還債務を承継していないにもかかわらず、事業譲渡の商号を使用した譲受会社の責任を規定した会社法22条
会社分割と会社法22条1項類推適用
存続会社の事業をほぼ承継会社に承継させ、存続会社にほとんど財産が残らないのに存続会社に債務が引き続き残る場合には債権者保護手続の対象にならないことから、この場合に、存続会社の債権者に一定の救済の余地を与えうるものとして注目される。 会社分割制度を悪用し、架空会社を設立した上で分割し、詐欺集団や、出会い系サイトなどの犯罪組織を会社組織化した企業を設立させる例があり、電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑で逮捕者が出ている[7][8]。 米国には大陸法系諸国にあるような一般承継を行う会社分割の制度は存在しない[6]。会社を分割するときは移転先の会社に対して資産や負債を事業譲渡した上でスピンオフ、スプリットオフ、スプリットアップなどの手法がとられる[6]。
問題点
米国における会社分割
会社分割の事例
みずほ銀行・みずほコーポレート銀行
会社分割制度導入の背景には、財界の強い要望があった。これは、2002年以降、第一勧業銀行と富士銀行(普通銀行)・日本興業銀行(長期信用銀行)をみずほ銀行・みずほコーポレート銀行に再編するにあたり、その規模および社会的影響から、事業譲渡よりも会社分割を行うほうが望ましいと判断されたことによる。加えて、当時の法律上、普通銀行同士、あるいは長期信用銀行同士での合併・会社分割・事業譲渡は可能ではあったが、第一勧銀・富士と興銀の場合、合併は可能だが、会社分割や事業譲渡は不可能であったため、以下のスキームで再編がなされている。まず、2002年1月8日付で「みずほ統合準備銀行」という長期信用銀行を設立して免許を取得、興銀はコンシューマーバンキング業務を統合準備銀に吸収分割させ、コーポレートバンキング業務のみとなる。統合準備銀は、免許こそ長期信用銀行扱いだが、扱う業務はコンシューマーバンキングのみであるから、実体は普通銀行である。同年4月1日、第一勧銀がコーポレートバンキング業務を富士に、富士のコンシューマーバンキング業務は第一勧銀に事業交換する形で吸収分割。第一勧銀は統合準備銀を吸収合併して「みずほ銀行」、富士は興銀を吸収合併して「みずほコーポレート銀行」にそれぞれ商号変更、コンシューマーとコーポレートの機能別二眼レフ体制が始まった。2013年7月1日付で、みずほコーポレート銀行がみずほ銀行を吸収合併。新たに「みずほ銀行」となり、機能別二眼レフ体制は終わりを告げた。みずほコーポレート銀が存続会社となるため、旧富士銀の法人格を以降のみずほ銀行が継承する形となった。
モビット
実質的な経営権の移動に伴い、2013年末頃に公式発表、2014年2月実施。カードローン事業は譲受先である三菱東京UFJ銀行の同部門と統廃合を実施、新ブランド「バンクイック(BANQUICK)」として再出発。
安田信託銀行
1990年代後半、経営危機に陥った安田信託銀行は、1999年に収益性の高い法人部門や年金部門などを分割して、第一勧業富士信託銀行へ営業譲渡した。なお、その後の再編に伴って、2003年にみずほグループの信託分野はすべて統合され、みずほ信託銀行に名実共に一本化されている(法人格上は、安田信託銀行から改称したみずほアセット信託銀行が、旧みずほ信託銀行を吸収合併して改称)。
岩田屋三越
2010年実施。詳細はこちらを参照。
あさひ銀行
協和銀行と埼玉銀行が合併し協和埼玉銀行が誕生、さらに行名をあさひ銀行と変更したが、あさひは会社分割で旧埼玉を切り出して埼玉りそな銀行を設立、残ったあさひ(=実質的には協和)がりそな銀行と統合した。
新日鉄興和不動産
旧会社・興銀不動産が2003年に実施。旧会社は清算会社に移行され解散。その4年後に存続会社・旧新日鉄都市開発により旧日鉄鋼管の不動産事業分割移譲でも同様の手法で実施。
アルナ工機
阪急電鉄(旧社、現阪急阪神ホールディングス)を母体として設立した車両系メーカー。2002年に実施した会社分割では車両部門のアルナ車両(グループ残留)、輸送機器用品部門のアルナ輸送機部品
ペティオ
2016年に母体企業・ヤマヒサ(住宅設備用品メーカー)が旧ペットケア事業部を分社。尚、このことに伴い減資を実施。
コミックス・ウェーブ
2006年度末にMBOを伴う会社分割を実施。第二会社として新設された企業に、新海誠が参加したアニメ系コンテンツ制作会社である現コミックス・ウェーブ・フィルムや、アダルトゲームブランド『minori』がある。