任意後見
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後見開始の審判

精神上の障害により判断能力を「欠く常況にある」者を対象とする(7条)。なお、未成年者の知的障害者が成年に達する場合には法定代理人(親権者あるいは未成年後見人)がいなくなってしまうことから、その時に備えて申請を行う必要がある場合もあるため後見開始の審判の対象には未成年者も含まれる点に注意を要する[3]

後見開始の審判の請求権者は本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人または検察官である(7条)。なお市町村長も65歳以上の者、知的障害者、精神障害者につきその福祉を図るため特に必要があると認めるときは後見開始の審判を請求することができることとされている(老人福祉法32条、知的障害者福祉法28条、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律51条の11の2)。

家庭裁判所の後見開始の審判により後見人を付すとの審判を受けた者を成年被後見人、本人に代わって法律行為を行う者として選任された者を成年後見人とよぶ(8条)。

家庭裁判所は後見開始の審判をするときは職権で成年後見人を選任する(843条1項)。成年後見人については複数の者が選任されることがある(843条3項・859条の2)。また、法人が成年後見人となることもある(843条4項)。後見開始の審判については請求権者の請求に基づいてなされるが、成年後見人の選任は家庭裁判所の職権による。



成年後見人の権能と成年被後見人の法律行為
成年後見人は成年被後見人について広範な代理権(859条1項)と取消権(120条1項)、財産管理権(859条)、療養看護義務(858条)をもつ。なお、成年後見人が成年被後見人に代わってその居住用の建物・敷地について、売却、賃貸、賃貸借解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない(859条の3)。

成年後見人の権限権限内容
代理権成年後見人は、成年被後見人の財産管理に関するすべての法律行為について代理権を有する(859条1項)[9]。身分法上の行為や治療行為などの事実行為に関する同意など、本人の意思のみによって決めるべき(一身専属的)事項についても代理権は行使できない(遺言につき962条、婚姻につき738条など)。なお、後見人が被後見人を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない(794条)。
取消権・追認権取消権 - 成年被後見人の法律行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き、取り消すことができる(9条)。成年後見人は法定代理人であり、成年被後見人の日常生活に関する行為を除き、取消権を有する(120条1項)[9]
追認権 - 取り消すことができる行為は、成年後見人が追認したときは、以後、取り消すことができない(122条)。
なお、成年後見人には保佐人や補助人とは異なり同意権は認められていないと解するのが通説である[9][10]。成年被後見人は精神上の障害により判断能力を欠く常況にある(7条)ため、成年後見人が予め同意をしていても同意の直後に成年被後見人が判断能力を失ってしまうおそれがあるためである[9][11]。したがって、成年後見人には同意権がないので成年被後見人の行為については成年後見人が同意した行為であっても取り消しうる[11]。成年後見人とは異なり、未成年後見人は未成年者の法定代理人として同意権が認められている(5条1項)。

保佐

保佐開始の審判

精神上の障害により判断能力が「著しく不十分な」者を対象とする(11条
本文)。

保佐開始の審判の請求権者は本人、配偶者、4親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。10条参照)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。10条参照)、補助人、補助監督人または検察官である(11条本文)。なお市町村長も65歳以上の者、知的障害者、精神障害者につきその福祉を図るため特に必要があると認めるときは保佐開始の審判を請求することができることとされている(老人福祉法32条、知的障害者福祉法28条、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律51条の11の2)。ただし、精神上の障害により判断能力を欠く常況にある者については7条により後見開始の審判を請求すべきであるから保佐開始の審判を請求することはできない(11条但書)。

家庭裁判所の保佐開始の審判により保佐人を付すとの審判を受けたものを被保佐人、保佐の事務を行う者として選任された者を保佐人とよぶ(12条)。

保佐人の権限権限内容
同意権・取消権・追認権同意権 - 被保佐人は民法13条第1項で特に重要として列挙された法律行為及び家庭裁判所の審判で保佐人の同意を得なければならないとされた法律行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない(13条1項本文・2項)。ただし日用品の購入その他日常生活に関する行為は同意を必要としない(13条1項ただし書)。
保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる(13条3項)。
取消権 - 保佐人は民法13条所定の行為(保佐人の同意を得なければならない行為であって、保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでしたもの)を、取り消すことができる(9条)[12]。保佐人は同意権者であり、保佐人の日常生活に関する行為を除き、取消権を有する(120条1項)[9]
追認権 - 取り消すことができる行為は、保佐人が追認したときは、以後、取り消すことができない(122条)。
代理権
(代理権付与の審判)保佐人には当然には代理権はないが申立ての範囲内で家庭裁判所の審判(代理権付与の審判)があれば代理権を付与される[12]。家庭裁判所は、保佐人等の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる(876条の4第1項)。ただし、本人以外の者の請求でこの審判をするには本人の同意がなければならない(876条の4第2項)[9]

保佐人に付与される同意権や取消権の対象となる行為は民法13条第1項所定の次の行為である[13]。保佐の場合はこれ以外に家庭裁判所の審判で同意権や取消権の対象となる行為の範囲を広げることができる(13条2項)[9]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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