令和元年東日本台風
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例年は10月になると台風は偏西風の影響で日本の南で東に進路を変え遠ざかる場合が多い。一方、台風19号が発生した時期には平年より偏西風が北に偏り、太平洋高気圧も広く張り出していたため、台風はゆっくりとその縁をまわるように北上し、東日本に上陸する経路となった[16][23][24]

連続での猛烈な勢力の期間が長い台風順位台風国際名年猛烈な勢力であった期間
1昭和53年台風第26号Rita1978年96時間
2平成30年台風第22号Mangkhut2018年90時間
3平成16年台風第16号Chaba2004年78時間
4令和元年東日本台風
(令和元年台風第19号)Hagibis2019年72時間
昭和59年台風第22号Vanessa1984年
昭和56年台風第22号Elsie1981年
昭和54年台風第20号Tip1979年
8平成9年台風第24号Joan1997年66時間
9平成24年台風第17号Jelawat2012年60時間
平成3年台風第28号Yuri1991年
平成3年台風第23号Ruth1991年

名称

この台風は当初、台風番号の基準に基づき令和元年台風第19号と呼ばれていたが、2018年平成30年)に日本の気象庁が定めた「台風の名称を定める基準[25]」において浸水家屋数が条件に相当する見込みとなったため、1977年昭和52年)9月の沖永良部台風以来、42年1か月ぶりに命名される見通しとなり[26]2020年(令和2年)2月19日、気象庁はこの台風について「令和元年東日本台風」と命名した(同年発生した令和元年房総半島台風〈台風15号〉と同時に命名)[27]

気象庁命名台風気象庁命名名称国際名年
洞爺丸台風昭和29年台風第15号Marie1954年
狩野川台風昭和33年台風第22号Ida1958年
宮古島台風昭和34年台風第14号Sarah1959年
伊勢湾台風昭和34年台風第15号Vera
第2室戸台風昭和36年台風第18号Nancy1961年
第2宮古島台風昭和41年台風第18号Cora1966年
第3宮古島台風昭和43年台風第16号Della1968年
沖永良部台風昭和52年台風第9号Babe1977年
令和元年房総半島台風令和元年台風第15号Faxai2019年
令和元年東日本台風令和元年台風第19号Hagibis

狩野川台風との類似性狩野川台風の進路図

この台風が日本に接近しつつあった10月11日、気象庁は記者会見を開き、「台風19号は非常に強い勢力を保ったまま、12日に東海地方または関東地方に上陸する見込みで、静岡県伊豆地方を中心に甚大な被害をもたらし1,200人以上の死者・行方不明者を出した、1958年狩野川台風に匹敵する記録的な大雨となる恐れもある。」と発表し、警戒を呼びかけた[28][29][30][31][32][33][34][35][36][37]。会見した梶原靖司予報課長は、この狩野川台風を例示した理由について、「台風19号で予想される現象あるいは災害の程度が著しいということから例に挙げた」と説明し、「狩野川台風が取った進路や勢力あるいは北上の速度なども、台風19号と類似している点がある。あるいは台風の大きさなども含めて。」とし、「そういった類似性も高いため、説明に用いる判断をしたところです。」と語ったという[30]

この台風も、狩野川台風と類似した進路を辿って12日に伊豆半島に上陸したが、61年前に狩野川台風により甚大な被害を受けた静岡県伊豆の国市では、「狩野川台風級」との警告により住民の迅速な避難につながって、犠牲者もゼロとなった[38]。また、狩野川台風後に整備された狩野川放水路が開放されたことで放水路は効果を発揮し、狩野川は氾濫に至ることはなく、本流での河川堤防の決壊や氾濫被害が食い止められた[31]。まさに、過去の記憶や教訓、あるいはそれにより進められた対策などが、流域の被害軽減につながった成功事例と言える[39]。ただし本流の氾濫被害を食い止めた一方で、沼津市や函南町などでは、狩野川の水位が上昇して支流から排水しきれずにあふれる支流域で内水被害が発生し、流域自治体からは第2放水路の整備を求める意見も出るなど、治水対策に新たな課題が突きつけられた[31]。国土交通省沼津河川国道事務所のまとめによると、この台風の総降水量は伊豆市の湯ケ島雨量観測所で(狩野川台風を上回る)778mmを記録。長時間にわたり激しい雨が降り、清水町や長泉町の観測所では氾濫危険水位を一時越えた[31]。台風接近に伴う水位上昇を見込み、同事務所は12日午前5時40分から放水路を開放して、翌13日午前11時頃まで分流した結果、放水路が無い場合の想定に比べ、実際の水位は1.85m下回ったと推計する。放水路が無かった場合には、越水や決壊が発生し、沼津市や伊豆の国市などで1万6千戸の家屋、鉄道や道路が浸水すると同事務所は想定する。
気象状況風速・気圧・速度の推移

台風の接近と秋雨前線の停滞により、関東甲信地方静岡県新潟県東北地方では、各地で3時間、6時間、12時間、24時間の降水量が観測史上1位を更新するなど、記録的な大雨となった[40]。これらの地域では台風が上陸する前から活発な雨雲が断続的に生じ、広範囲で強い雨が降り続けた。特に神奈川県箱根町では、降り始めからの降水量が1,000ミリを超え、10月12日の日降水量も全国歴代1位となる922.5ミリを観測した[41]。また、10月12日の北日本と東日本のアメダスで観測された総降水量は73,075ミリ(1地点あたり119.2ミリ)で、比較可能な613 地点で1982年以降の1日の降水量として最多となった[16]

気象庁は12日15時30分に大雨特別警報静岡県神奈川県東京都埼玉県群馬県山梨県長野県の7都県に発表し[42]、19時50分に茨城県栃木県、新潟県、福島県宮城県[43]、13日0時40分に岩手県にも発表した[44]。半日で13都県での発表は、3日で11府県に発表された平成30年7月豪雨を超え、特別警報の運用を開始して以来最多の発表数となった。

10月12日午後に気象庁は会見で、台風19号の特徴について「台風の中心の北側に非常に発達した広い雨雲があり、記録的大雨となった」と説明した。台風の接近・上陸にともない、東や南東からの暖かく湿った風が関東の秩父丹沢や静岡の伊豆半島、東北南部などの山々にぶつかることで上昇気流が生じ、広い範囲で雨雲が次々と発生したという[45]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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