小説に関しては、歴史小説の大家である司馬遼太郎の作品群に触れたことが自身と日本の関係を考える上で大きな影響があった[63]。また海外での翻訳の多い村上春樹の小説にも非常に刺激を受けた[63]。小説を読む前に映画『ブレードランナー』を見たフィリップ・K・ディックに関してはすべての作品を読んだわけではないが、好んで読む作家の一人であり、彼の影響で悪夢のイメージにとても興味を持つようになった[28][34]。『パプリカ』を監督する前から筒井康隆の作品のファンで、特に二十歳前後の頃に集中的に筒井作品を読んで大きな影響を受けたという[76]。それは、自分でもどこをどう影響されたのか分からないくらい、物を作るための根本的な部分での影響だったという[76]。筒井康隆作品の魅力は「常識からの逸脱」、つまり常識外のものを常識的に組み合わせる、あるいは常識内のものを非常識な仕方で組み合わせるような捩れにこそあるという。彼が筒井の諸作品に学んだことは、「常識という枠組みを疑え」ということ。多くの人が共有しているであろう常識内で世界観を構築したところで、結局は常識の範囲にとどまるものにしかならないからである[63]。 日本国内だけでなく、その功績は海外からも高い評価を受け、世界中に数多くのファンを持つ[19][77]。2010年に46歳の若さで他界した際、その衝撃は日本のみならず世界に広がり、ロサンゼルス・タイムズがサイトのトップで顔写真を添えて訃報を伝え、ニューヨーク・タイムズも長文の追悼記事を掲載した[38]。その評価の高さは、米タイム誌が発表した「2010年を代表する人」特集のFond Farewells部門(同年に亡くなった人を紹介する部門)で、J・D・サリンジャーなどと並んで選出されたことでもうかがえる[19][77]。国内外の歴代名作映画のランキングにたびたび作品が挙がるのもその1つ。2008年の米国ニューズウィーク誌日本版が選んだ歴代映画ベスト100には『パプリカ』が日本アニメから唯一選ばれた[78]。2014年の英国の名門映画雑誌「トータルフィルム」による歴代アニメーション映画ベスト75には『パーフェクト ブルー』『千年女優』『東京ゴッドファザーズ』と3作品もラインアップされた[78]。
評価