人類の絶滅
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自己増殖能力を持つナノマシングレイ・グー)が生まれると、やがてこれが際限なく増殖して地球の生態系を崩壊させ得る(エコファジー)[23][24]

地球上でマイクロブラックホールを発生させたり、素粒子物理学研究上で偽の真空ストレンジレット理論で提唱されているような「たまたま世界が存在できているバランス」を科学者が誤って崩してしまったりすることで、世界の崩壊を引き起こす事故が発生する危険性が指摘されている。実際に欧州原子核研究機構大型ハドロン衝突型加速器が稼働して、素粒子を光速に近い速度で衝突させたときに、マイクロブラックホールが生成されることが危惧されている。なお、大気中ではこの実験を上回る高エネルギー衝突現象が日常的に発生している[23][25][26]

地球外起源の脅威

地球外生命侵攻:一般にはSF上のシナリオと見なされている。地球外知的生命体探査(SETI)では、このような脅威についても真剣に検討されたが、結局起こりそうにないという結論に至った[2]

人類を超える生物の登場

現在の人類はホモ・サピエンスのみ生存し、他に生存していた人類は全てホモ・サピエンスとの競争に敗れ絶滅したが、将来これと同様のことが起こり、ホモ・サピエンスから進化した新人類によってホモ・サピエンスが滅ぼされるというもの。あるいは人類が現代の感覚ではとても人類とは言えない生物に進化し、生存競争で人類を滅ぼすというシナリオ。

チャールズ・ダーウィン進化論を延長したものである。人類の進化は現在も続いている以上[27][28]、その中から将来的に新たな生物種が誕生する可能性は当然存在する。

そのため、短期的な絶滅シナリオを人類が全て回避した場合、このシナリオによって遠い将来の別種に進化し人類を淘汰した子孫たちが、「(祖先であった)人類は絶滅した」と判断する可能性がある。

ただし漸進的な変化そのものは種の絶滅にはあたらない。確かに1万年前の人類と現在の人類でも遺伝子に差異を生じているように[27]、現在の人類と遠い未来の人類は遺伝子に差異を生じている可能性が高い。しかし、1万年前の人類と現在の人類で同じホモ・サピエンスであるとみなされているように、それだけでは系統学的に別種となったとは見なされない。時間がたつにつれて人類の遺伝子も変化し続けるが、これが自然環境下で完全に2つのに分裂してしまうようなことは起こりがたい。

一方で、人類が遺伝子工学などにより人為的に「一般的な人間」とは異なる人間(ポストヒューマン)を作り出す可能性がある[29][30][31][32][33][34][35]。例えば人間と機器を融合した「人間」が生み出される場合が考えられているが、このような種の「進化」は地球の歴史上前例がない[36][37]。ポストヒューマンの登場によって、「古い」人類が滅ぼされる危険性も主張されている。
人類の退化

上記とは逆に、人間は進化の極致に達しており、今後は適者生存の原理が通用しなくなるという説がある[38]。これは特に19世紀に盛んに論じられ、今までに人類が誕生して進化してきたのとは逆に、今後は人類が退化していき滅亡に至るという可能性が提起された。
人類の滅亡リスクへの認知と対応

人類の絶滅に関する研究は、その重要性のわりに進んでいない。ニック・ボストロムは、2001年に「フンバエの絶滅リスクに関する学術研究の方が(人間と比べ)よほど多い。」と述べている[39]

Ken Olum、ジョシュア・ノブ、アレキサンダー・ビレンキンらは、絶滅リスクは健康リスクなどと違い個人でどうにもし難いものだが、それでもそれを考えるのには実用的価値があると主張している。例えば、もし「世界終末論(Doomsday argument)」が広く世界に受け入れられたならば、その終末リスクを低減しようという大きな動機となるはずであるという。彼らは「特定の天体一つ一つに関心を傾ける以上に、まだ発見されていない大部分の天体に目を向けるべきだ。近くの星のどれかが超新星になる危険性をわざわざ恐れることはないが、我々が思っている以上に超新星が周辺の生命に致命的影響を与えるものであることは憂慮しておくべきだ。」と述べている[40]
滅亡確率の推定

「人類の滅亡」という事件には前例がないため、それが起きる可能性を計算するには多分に主観的にならざるを得ない。ニック・ボストロムは、人類絶滅の確率を25パーセントより少ないと設定することは見当違いであり、人類が「初めての事態にして、我々の警告を効果的かつ正しく受け入れる」ことは「無理な相談」であるとしている。というのも、人類絶滅確率を提示したところで、我々が失敗から学ぶことはできないからだという[1][41]。より楽観的な推測としては、哲学者のジョン・レスリーが、500年後に人類が存続している可能性は70パーセントという予想を出している。これは彼自身が与している、議論の的となっている哲学的な世界終末論に拠っている。2006年にイギリスで発表されたスターン報告では、経済的な計算から、100年以内に人類が滅亡する確率を10パーセントとしている[41]

世界規模の核戦争などでは、すべての人類が殺される真の意味での絶滅は起こりづらいと考える学者もいる。 物理学者のウィラード・ウェルズは、本当に人類を絶滅させるシナリオというものは、大都市の地下鉄やチベットの高地南太平洋の隔絶された島々、さらには長期間の孤立を耐える計画と物資を有している南極のマクマード基地に至るまで、すべての地域に住む人間を対象としなければならない点を指摘している[42]。加えて、核戦争に備え政府要人が退避するための核シェルターもすでに地上に多く存在している[41]。人類の数を激減させる方法はいくつも存在するが、いずれにおいても最小存続可能個体数を上回る人類が生存する可能性が高い。それゆえ、人類滅亡の確率を計算するのはあまり意味がない[43]、とする説もある。
心理学

AI学者エリーザー・ユドコウスキーは、一般大衆が存続リスクについて知らされた場合には、規模不感受効果が悪い影響をもたらすと指摘している[1][44]

例えば「5億人の死」というような莫大な数と、「人類の絶滅」というような特異なシナリオは、それぞれ人の思考法を変えてしまうきっかけとなりうるように思える...子どもが悲惨な目に合うと夢にも思わないような人間は、存続リスクについて聞いたら「なるほど、確かに人類は生き残る価値がないようだ。」と言うのだ。

今までに行われてきた終末予言はいずれも外れた。その結果、今後新たな終末予言が提示されても嘘をつく子供のように信用されない可能性が高い。しかしニック・ボストロムは、今まで人類が滅亡しなかったからと言って今後もそのようなことは起こらないと主張するのは、多分に生存者バイアス人間原理によるものであり、信頼に足るものではないと述べている[45]

新近性効果が絶滅リスク分析に誤った影響を与える危険性を指摘している行動経済学者もいる。これはバブル経済を想像すると理解しやすい。証券市場では、「100年に一度の大嵐」とよばれるような事態がおよそ20年ごとに起きているが、これは投資家たちが一過性の好景気を「永遠に続く」ものだと思い込み、大暴落を予言する悲観主義者を、たとえその裏に確固とした証拠があったとしても否定してしまうためである。このような前例のない破滅を軽視してしまう危険性は、ベイズ確率の考えを用いることで低減することが出来る[3]
オムニサイド「絶滅への反逆」運動(2018年)のデモで掲げられた、「オムニサイド」プラカード


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