人間
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よって、アリストテレスが主張したことは、人間とは自己の自然本性の完成をめざして努力しつつ、ポリス的共同体(=《善く生きること》を目指す人同士の共同体)をつくることで完成に至る、他の動物には見られない自然本性を有する動物である、ということである[8]

(誤解が流布しているようだが)アリストテレスは、人間が単に社会を形成している、とか、社会生活を営む一個の社会的存在である、などと言ったのではない[8]

ζ?ον πολιτικ?νは日本語での訳語は定まっていないが、「ポリス的動物」、「政治的動物[注釈 1]」、「社会的動物[注釈 2]」などと訳されている。
キリスト教12世紀のモザイクイコン全能者ハリストス(キリスト)アギア・ソフィア大聖堂

キリスト教では、旧約聖書の創世記で示された「神の似姿」という考え方が継承された。キリスト教に基づく倫理観では、一番大切なのは(日本人の多くが考えているような「他人の眼」ではなく)創造主であるの眼、神の視点である[9]。さらに、4?5世紀の神学者アウグスティヌスによって原罪の思想が始められたともされ、これはその後西方教会においては重要な思想となった[注釈 3]。キリスト教では、イエス・キリストを媒介として、あらゆる人間の同等の価値と各個人の不可侵性が強調された。中世ヨーロッパにおいては、人間が宇宙の中心的存在であるという人間像が席巻した[11]

正教会では、神の像と肖として人間が創られたという教えが人間観において強調される。アウグスティヌスの影響は正教会には希薄であった。
中世?近世

1400年代?1500年代の頃になり、ガリレイケプラーニュートンらの活動によって新たな世界像が提示されるようになると、人間が宇宙の中心であるという図式が揺らぎはじめた。また、デカルトによって人間の身体までも、化学的、物理的組織だとする視点が広く流布されるようになった。ただし、デカルトは心身二元論を採用しつつ、人間と動物をはっきりと区別した[11]

1700年代になると、ラ・メトリーがデカルトの概念を継承し「人間機械論」を発表。1800年代にはダーウィン自然選択に基づく進化論を唱え、動物と人間との境界を取り払いはじめた[11]
近代

人間は(肉体はともかくとして)精神の働きという点であらゆる存在に対して秀でているという考え方から「万物の霊長(英語: The Lord of Creation)」とさかんに呼ばれた(霊長とは、すなわち精神的に優れている、の意味)[12]
現代第二次世界大戦時代、人間(科学者技術者政治家軍人ら)は、一瞬にして10万人以上の人々を殺戮するような原子爆弾大量破壊兵器核兵器の一種)を作り出してしまった(写真:「ファットマン」のキノコ雲)

現代の生物学ではネオダーウィニズムが主流で、それは「生物の進化」という考え方を基盤として成り立っているため、自然科学者や先進国の知識人などで、現代生物学を受け入れている人々は「人間は猿、ネズミのような姿をしていた祖先生物、さらに遡れば単細胞の微生物から進化してきた」といったように見なしている[注釈 4](生物学的な人間像はヒトが参照可)。

ただし、人類全体ではダーウィン風に考えている人が必ずしも多数派というわけではなく、例えばアメリカ合衆国などでは伝統的なキリスト教の世界観および人間観を保ち続けている人の方がむしろ多数派であることなどが知られている(詳細は「アメリカ合衆国の現代キリスト教」を参照)。

現在、人間の学名は「ホモ・サピエンス」(知恵のあるヒトの意)で、やはり言語文化などの(生物学的存在以上に多くの)側面を備えているとされている[注釈 5]。この学名と同時に作られた名に「ホモ・エレクトゥス(直立するヒト)」「ホモ・ハビリス(器用なヒト)」(以上は生物学用語)というのがあり、後に社会面から捉えられた「ホモ・○○○(?するヒト)」といった造語の元となった。遊びに目を留めたホイジンガの「ホモ・ルーデンス」といった表現はその典型である[13]

技術との融合により圧倒的な進化を遂げた人間の姿として、ポストヒューマンというアイデアも出てきている。
教育と人間

論語』の陽貨篇第十七には右のように書かれている。「子曰く、性、相近きなり。習い、相遠きなり」 (意味:師は言われた。人間は、生まれつきの性質は同じようなものであるが、習い(=教育しつけ)によって、大きく異なってゆくものだ。)

ジャン=ジャック・ルソーは「植物は耕作によりつくられ、人間は教育によってつくられる」と述べた。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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