人権
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精神活動の自由としては、思想・良心の自由信教の自由学問の自由表現の自由、集会・結社の自由(集会の自由及び結社の自由)、居住・移転の自由、外国移住・国籍離脱の自由がある[37]

経済活動の自由としては、職業選択の自由財産権の保障がある[37]

私的生活の不可侵としては、住居等の不可侵や通信の秘密がある[37]

人身の自由及び刑事裁判手続上の保障としては、奴隷的拘束・苦役からの自由、適正手続の保障、不法な逮捕からの自由、不法な抑留や拘禁からの自由、拷問及び残虐刑の禁止、刑事裁判手続上の保障がある[37]

積極的権利


受益権として、裁判を受ける権利国家賠償請求権刑事補償請求権がある[37]

社会国家的基本権として、生存権、教育を受ける権利勤労権労働基本権がある[36]

能動的権利
能動的権利として、公務員選定罷免権(参政権)と請願権がある[38]

人権の分類は法学者によっても異なるほか、多面的な権利と考えられているものもある。

従来、請願権は請願の受理を求める権利であるとの理解から国務請求権(受益権)に分類されてきたが、現代の請願は民意を直接に議会や政府に伝えるという意味が重要視されており参政権的機能をも有するものと理解されている[39]。請願権を参政権に分類する学説もあるが、請願権は国家意思の決定に参与する権利ではないから典型的参政権とは異なる補充的参政権として捉えられることがある[40]

日本国憲法に定められる権利の場合、学説は一般には日本国憲法第25条(生存権)、日本国憲法第26条(教育権)、日本国憲法第27条(労働権)、日本国憲法第28条(労働基本権)に定められる権利を「社会権」として一括して分類している[41]。ただし生存権などについて「社会国家的国務請求権」として分類されることもある[42]

我妻栄は『新憲法と基本的人権』(1948年)などで、基本的人権を「自由権的基本権」と「生存権的基本権」に大別し、人権の内容について前者は「自由」という色調を持つのに対して後者は「生存」という色調をもつものであること、また保障の方法も前者は「国家権力の消極的な規整・制限」であるのに対して後者は「国家権力の積極的な関与・配慮」にあるとして特徴づけ通説的見解の基礎となった[43]

しかし、社会権と自由権は截然と二分される異質な権利なのかといった問題や社会権において国家の積極的な関与が当然の前提となるのかといった問題も指摘されている[43]。教育を受ける権利と教育の自由や労働基本権と団結の自由など自由権的側面の問題が認識されるようになり、時代の要請から強く主張される新しい人権(学習権、環境権等)も自由権と社会権の双方にまたがった特色を持っていることが背景にある[43]

現代では「積極的権利」や「福祉的権利」の比重が著しく増大し、国際人権規約でもまず社会権的なA規約があり、然る後に自由権的なB規約があるなど、具体的人間に即して人権の問題を考えようとする傾向がみられ、「自由権」と「社会権」あるいは「消極的権利」と「積極的権利」という区別はあまり意識されなくなっている[13]市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)には法の下の平等生存権なども保障されている)。社会権と自由権の区別そのものを放棄する学説もあるが、社会権と自由権の区別の有用性を認めた上で両者の区別は相対的であり相互関連性を有するとする学説が一般的となっている[44]
人権の権利性
プログラム規定

1919年のドイツのヴァイマル憲法は社会国家思想を強く打ち出したものであったが、憲法起草時までドイツでは憲法典は政治上の宣言にすぎないと考えられ、憲法典では社会体制や経済的基盤から遊離した政治理想が奔放に述べられた[42]。そのため、憲法典の実施に当たっては裁判所が直接有効な法としての効果を与えるために、「法たる規定」と「プログラム規定」に区分する以外になかった[45]

第二次世界大戦後の各国の憲法典では次のような3つの類型が出現することとなった[46]

法としての効果を有する規定のみを掲げているもの(ドイツ連邦共和国基本法[46]

裁判所が強制しうる規定と立法に対する指導原則を指示するにとどまる規定を区分して規定するもの(スペイン憲法[46]

直接に法的効果をもつ規定とそうでない規定が混在しているもの(イタリア共和国憲法[46]

日本国憲法では憲法第25条憲法第26条憲法第27条などについてプログラム規定と解する説(プログラム規定説)があるが、安易にプログラム規定と性格づけることは疑問とされている[47]。また、例えば日本の憲法25条におけるプログラム規定説は、自由権的側面については国に対してのみならず私人間においても裁判規範としての法的効力を認めており、請求権的側面についても憲法第25条が下位にある法律の解釈上の基準となることは認めている[48][49]。したがって、文字通りのプログラム規定ではないことから、このような用語を使用することは議論を混乱させ問題点を不明瞭にさせるもので適当でないという指摘がある[50]
具体的権利と抽象的権利

請求権的性格を有する基本的人権をめぐっては抽象的権利と具体的権利の区別の問題を生じる[38]

例えば、日本国憲法第25条の権利を、抽象的権利と解する説では、憲法第25条を具体化する法律が存在しているときにはその法律に基づく訴訟において憲法第25条違反を主張することができるとしつつ、立法または行政権の不作為の違憲性を憲法第25条を根拠に争うことまでは認められないとする[51]。一方、具体的権利と解する説では、憲法第25条を具体化する法律が存在しない場合でも、国の不作為に対しては違憲確認訴訟を提起できるとする[51][52][53]

ただ、立法不作為の確認訴訟にとどまるものに「具体的」、憲法第25条違反として裁判で争う可能性まで残されているものに「抽象的」といった名称を用いることには疑問の余地があるとする指摘もある[54]
制度的保障

制度的保障とは、一般には、議会が憲法の定める制度を創設し維持することを義務づけられ、その制度の本質的内容を侵害することが禁じられているものをいう[55]。制度的保障では直接の保障対象は制度それ自体であるから個人の基本的人権そのものではないが、制度的保障は基本的人権の保障を強化する意味を有する[55]

制度的保障として捉えられることがある制度には次のようなものがある。
大学の自治
大学の自治の法的性格については学問の自由を保障するための客観的な制度的保障とする制度的保障論が有力である[56]
私有財産制度
私有財産制度は財産権の保障との関連で制度的保障として捉えられることがある。ただし、日本国憲法第29条第1項(財産権の保障)については、客観的法秩序としての私有財産制の制度的保障のみを認める趣旨であるとする説[57]もあるが、多数説は私有財産制の制度的保障とともに個人が現に有する財産権をも個別的に保障していると解している[58]
政教分離原則
政教分離原則は信教の自由との関連で制度的保障として捉えられる[59]。ただし、政教分離原則を制度的保障として捉えることは微妙であるとする消極的な見解もある[55]。「制度的保障」を参照
人権の享有主体性
国民

国民が人権の享有主体であることは説明を必要としない[60]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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